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「こうして四天王第二の刺客の卑劣な罠にかかった勇者は、絶対絶命の危機に陥ってしまった!どうなる勇者?助けは間に合うのか?城で待つ姫の祈りは天に届くのか?続きはまたの後日じゃ!」
「「「「「わーーー!」」」」」
拍手喝采を受けてシンシアがお決まりの一礼をする
すっかり乗り気になったシンシアの熱のこもった人形劇は大人気を博していた
「じゃあおねーちゃんあとでねー」
「待ってるから!」
「早くきてねー!」
みすぼらしい格好の獣人の子供たちがシンシアに手を振りながら走って行く
「うむ、すぐに行くから待っておれ」
そう言ってシンシアも手を振って見送る
俺はと言えば、劇の間に屋台を回って今日の分の寄付を回収し、皮袋の中に隠れたフィーのインベントリに収納していた
この世界には様々なアイテムを圧縮して収納できる魔法の鞄が存在する
かなり高価なので俺は持っていないが、それを隠れ蓑にさせてもらっていた
例の獣人の子供たちは孤児院の子だった
2回目の人形劇の時に孤児院の院長が子供たちと現れ、前回食事を供した事を感謝された
サラと名乗る獣人は孤児院の院長にしてはあまりにも若い娘だったために、タツキ達は随分と驚いた
聞けば孤児院は彼女が一人で運営しており、大変な資金難なのだと言う
彼女の困窮具合を見て、シンシアが支援したいと言いだした
そこで広場の屋台を出す人と交渉し、昼飯を寄付してくれる屋台の側で人形劇を開く事にした
その結果、屋台はかなりの売り上げとなったらしい
その後屋台の人達で話し合い、開催場所は持ち回りにして全ての屋台から少しずつ食事を寄付して貰う事になったのだ
集め終わった食事を持って孤児院へ向かう
「今日はまたいつも以上に盛り上がったな」
「熱い展開じゃったからな、ハラハラドキドキの連続で見どころがたくさんあるのじゃ」
「しかもいいところで区切ったみたいだし。あんな風にされたら次回を見逃す訳に行かないだろう。シンシアもなかなかやるじゃないか」
「人気が出れば寄付も増えるであろう。たらふく食べさせてやりたいからな」
「…そうだな」
意外な事にサラはシルバー級冒険者でもあり、それなり稼ぎを全て孤児院の運営資金に充てていた
だが孤児院の家賃が高くてかなり逼迫していたようだ
酷い時は一日一食、しかもクズ野菜のスープのみと言う時もあるらしく子供たちはいつも飢えていたそうだ
それでも子供たちは楽しそうにしている
ひとえにサラの人柄が皆を明るくさせるのだろう
「どの屋台も前より売り上げが良いらしい。今日は前より多く貰ったから明日の分くらいはあるんじゃないかな」
「それは良い!日持ちしないのが難点じゃが、贅沢は言えんしのう…」
冷蔵庫など無いので食料の傷みは早い
下手に取って置くと食中毒の恐れもあるので早めに食べ切るしかなかった
「おねーちゃんが来たよー!」
「待ってましたー!」
「お腹すいたー!」
「今日は何かな?何かな?」
孤児院へ着くと子供たちが駆け寄ってくる
「慌てるでない、たくさんあるから落ち着くのじゃ。ほれ、幼い者からじゃぞ」
孤児院の食堂で子供たちに食事を配り、全員に行き渡るとサラが立ち上がる
「今日もシンシア様がたくさんのお食事を持ってきたくださいました。感謝して頂きましょう」
「「「「おねーちゃんありがとー!」」」」
「うむ、慌てずによく噛んで食べるのじゃぞ」
「おいしー!」
「これ初めて食べる!」
「このスープもっとちょうだい!」
シンシアは子供たちの賑やかな様子を見て嬉しそうにしていた
シンシアが人形劇に力を入れている時に、俺は一角兎の麻痺耐性薬の試作品を作っていた
麻痺の解毒剤は簡単に作れるが、耐性薬はなかなかに難しい
錬金術大全にもレシピが載って無いのは、おそらく要求レベルに達していないからだろう
何故そう思うかと言うと、他の毒の耐性薬のレシピが載っていたからだ
そのレシピを参考にしていろいろと試していたが、やっと完成させた
(あとは値段をどうするか、材料は魔の森で揃うからどうとでもなるが…)
あまり安過ぎても品質を疑われるし、高過ぎれば見向きもされないかもしれない
(戦闘前に飲む必要があるから、躊躇なく使えるように安目な設定がいいかな…うーん)
新商品なので相場がわからないのが悩みの種だった
結局その道のプロに聞く事にした
まずは魔法薬店の老店主
麻痺解毒剤の倍の値段が妥当との事だ
そして冒険者ギルドの副代表
やはり解毒剤よりかなり高くても良いと言っていた
戦いの最中に麻痺毒を受けてからポーションを飲む余裕など無い、との事だ
冒険者に試して欲しいので、ギルドには一角兎の麻痺毒と解毒剤もセットでサンプルを置かせて貰う事にした
まず麻痺毒を飲んで体が痺れる事を確認し、解毒剤で回復する
次に耐性薬を飲んでから麻痺薬を飲むと体が痺れないので、効果を確認できるという訳だ
さっそく副代表が試していたが、その効果に目を見張っていた
「久しぶりにあの麻痺を味わいましたよ。しかし本当に耐性がつくとは…これはいい、ブロンズ級にはお守り代わりになりますよ」
といい反応だったのでサンプルセットを多目に渡しておいた
魔法薬店の老店主にはお礼代わりに耐性薬のある程度の情報を渡しておいた
レシピをそのまま渡しても構わないのだが、おそらくその方が喜ぶと思ったからだ
案の定
「これだけの情報があれば十分じゃ、儂もレシピを見つけてみせるぞ!しばらくはろくに眠れんわい!」
と、鼻息を荒くしていた
そして錬金術工房の一部を改装し、ポーションを販売できる様にした
小窓を開けて中から薬を渡す、いわゆるドライブスルー方式で、商品も6種類だけ
回復用ポーションの瓶が大中小の3つと一般的な毒に効く解毒剤、一角兎の麻痺解毒剤と耐性薬だ
値段はどれも高目にしてある
ここは街の外だし、俺のいない時や深夜から早朝はマリアが手伝ってくれるので24時間営業が可能となる
そのあたりを加味して強気で設定してみた
すでに街道に『人形館閉鎖』の看板は立てられていたので、そこに『ポーション販売中、麻痺耐性薬も有ります』と書き加える
「あとは待つだけだな」
「なんじゃ、珍しく不安そうじゃな」
シンシアが見透かした様に言ってくる
「初めての事だらけだからな、不安にもなるよ」
街の外での販売、メティスでは馴染みのないドライブスルー方式、価値の不明な新商品、と新しい事尽くしだ
「なに、案ずる事は無い。儂はお主を信じておる。お主を信じる儂を信じよ」
「…そうだな、ありがとう」
珍しくシンシアに元気付けられてしまう俺だった




