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「前もって決めてはいたが、本当にあれだけで良かったのかのう?他にも要望を出せばすんなり通りそうな様子じゃったが…」
ギルドマスター達を見送り、工房へ戻るとシンシアが疑問を呈する
「ここは恩を売った方がいいかなと思ってね。それにこちらへのメリットはかなりある提案だし」
「看板を更新するの事に何の益があるのじゃ?」
「ああ、前にも言ったけどその内ここでポーション売るだろ?そしたら看板にポーション販売中って書けるし、しかも看板はギルドが管轄している事も明記するから…」
「結果的にギルド公認のポーションとなる、か…。お主はいろいろ考えるのう、感心するわ」
「街の外で売る分には免許も要らないんだけど、やるからには儲けたいから使えるモノは使わないとね。ポーションの品質に自信はあるけど、しばらくはギルドの名前でもないと売れないだろうから」
「そうなると店舗も早う建てねばな」
「在庫はそれなりにあるからいつでも売れるけど、販売にはまだ早いよ。値段設定をしっかり考えたいし、需要の高い薬も調べたい」
「需要の高い薬とは?」
「この周辺や近くにあるダンジョンのモンスターの状態異常に特化した解毒剤や耐性薬だ。例えば、どんな石化も治せる薬を作っても、石化させてくるモンスターがいない場所なら売れないだろ?」
「ふむ、その逆もまた然りと言う事じゃな」
「そう、と言う訳でこの周辺のモンスターについて知りたいんだけど、シンシアとマリアの知ってる範囲で教えて欲しい」
「すまんが、儂はあまり詳しく無いのう…」
「私もほとんど知らないので、お力になれませんね。食用に獲っていたのも鹿や猪と言った毒を持たないタイプなので」
「そうか、なら街でモンスターについて調べてから実際にいくつか狩りをするかな」
こうして当面の方針が決まったのだった
「風が気持ちいー!これは気分爽快だな!」
シンシアが命令を上書きして操縦出来るようにしてくれたので、メティスへ向かうのに俺がカルポを操り街道を走らせていた
「そうじゃな…」
後ろにしがみ付いているシンシアは、妙におとなしい
いつもの仕返しをすると息巻いていたが、いざ乗ってみると急に静かになったのだ
(まあくすぐられたりしたら危ないから良いんだけどね)
下手に煽ってイタズラされたら転びかねないので、これ幸いと操縦に集中する
さすがにシンシアほど速くは走らせないのだが、それでも徒歩に比べたら何倍も早く街へ着いた
今は街の入り口付近にカルポを繋いでも良いとギルドが便宜を図ってくれたので、ありがたく利用させてもらう
「どうした、酔ったか?なら帰りはシンシアが前の方がいいかな?」
「…大丈夫じゃ酔ってはおらん、帰りもお主が前で良い」
カルポから降りたシンシアは少し顔が赤い
「それで、まずどこ行くのじゃ?」
「まずは魔法薬店かな、何軒か回って商品の種類や値段、売れ筋あたりを調べたい」
「ふむ」
「その後は冒険者ギルドで聞き込みかな。俺達は部外者だが、このくらいは大目に見てくれるだろう」
「なるほど、ここ最近は恩を売っておるしな」
「そういうこと」
そう言いながら大通りを歩いていく
「いろいろとありがとうございました」
「いいんじゃよ、儂の方こそ新しい知識を仕入れる事ができた。久しぶりに血が滾るわい」
ここはメティスに初めて来た時にいろいろ教えてくれた老店主の店だ
他の魔法薬店ではロクに話も聞けなかったが、ここでは丁寧にいろいろ教えてくれた
お返しにと独自に発見した錬金術の話をすると、独学なのが逆に新鮮だったらしく大変喜ばれた
かなりの時間をかけてしまったので、途中で飽きたシンシアは店の前の広場にいた子供らに混ざって遊んでいた
初めは追いかけっこをしていた様だが、ひとしきり走って疲れた後は、シンシアが手乗りゴーレムをいくつか作り、即席の人形劇を披露していた
なかなかの見応えらしく、いつの間にか大人の立ち見客もいる
「こうして勇者は四天王の1人を見事打ち倒し、街の平和が守られたのであった。めでたしめでたし」
物語に一区切りがつくと、大人も子供も拍手喝采の大騒ぎだ
「む?うおぉ…」
人形を操るのに夢中で人集りに気づいて無かったシンシアは面食らっていたが、俺と目が合うと気を取り直したようで、スカートの端を軽くつまみ恭しく一礼をする
(なんだっけ、カテーシーだったか?ゴスロリを着たシンシアがやると様になるな)
再び拍手が沸き起こり、しばらくして人集りも散っていった
「おねーちゃんすごーい!」
「ねぇねぇこの人形どうやって動かすの?」
「勇者はこの後どうなるの?」
「してんのーかっこよかった!」
「えーアイツ悪いヤツじゃん」
「わたしもこのお人形欲しい!」
興奮した子供たちに揉みくちゃにされたシンシアが困った様でみんなを宥める
「待つのじゃ、落ち着くのじゃ。そんなにまとめては話が聞けぬ。きちんと答えるから順番じゃ。守らぬものには話す事はないぞ」
(案外子供の扱いが上手いな…)
しばらく子供たちの話に丁寧に答えていたが、昼飯時という事で子供たちは家に帰ったり、親が迎えにきたりと半数くらいに減った
「お主らは昼飯に戻らんのか?」
シンシアが残っている子供に尋ねると
「僕らはお昼食べないよ。お金無いから」
「朝と夜だけなんだ」
「それもちょっとだけなの」
「なんと、それはひもじいじゃろうな。えーと…」
シンシアがこちらを見たので頷くと、嬉しそうに笑う
「よし!お主らは儂の人形劇で初めての客じゃ。特別に昼飯をご馳走しよう!」
「「「「「わーー!」」」」」
広場に子供たちの歓声が響いた
丁度近くにサンドイッチの屋台があった
店の人に半分に切ってもらい、一人前を2人で分ける様にして全員に配る
よほど空腹だったのか、みんな無心で食べていた
(…今気づいたけど、ほとんど獣人の子だな)
ここにいるのは5歳から10歳の子供たちが15人ほどだが、ほぼ全員に獣耳がある
俺の見た感じでメティスの人口比率は人・獣人・エルフとドワーフが6:3:1くらいだ
単純に普通の人は獣人の倍いる計算なので、ここにいる貧しい子供が獣人だけなのは不自然だった




