↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/41

17

メティスの薄暗い裏道にあるひなびた酒場


そこはある冒険者集団の根城だった


ボロボロの扉を勢いよく開けて小柄な男が駆け込んでくる


「大変だ!人形館が閉鎖したらしいぞ!」


「はあ?お前何言ってんだ?」


「昼間から酔ってんのか?あーそれは俺らか」


男達はそう言って喧しく笑う


「静かにしやがれ!おい、その話は本当か?」


「へい親分、ギルドにデカデカと張り紙がしてありまして。あと聞いた話では何でも人形館の主が直々に閉鎖を告げにきたと」


「どういう事だ?閉鎖してどうするってんだ?」


「人形館を取り壊して、跡地に工房を建てるそうです。しかも工房に手出しをした場合は返り討ちで死んでも不問にするとギルドがお墨付きを出したそうで」


「ギルドが後ろ盾になってやがるのか、厄介だな…」


親分と呼ばれた男は髭を触りながら考えを巡らすと、近くの背の高い男に声をかける


「今すぐ動ける者は何人だ?」


「まだ街の外へいる者もいますし、7〜8人程かと。夕方になればあと10人は戻ると思いますが…」


「さすがに全員は無理か…、だが8割方集まれば十分だろう。よし、今夜人形館に攻め込むぞ」


「ギルドが後ろについたって話ですが、大丈夫ですかね?」


「だから今夜だ。まだ話が知れ渡る前なら、シラを切れる」


「なるほど。しかし人形館の奥まで行けますかね?そこまでの夜の街道も危険ですし」


「閉鎖したって事はあの忌々しいゴーレム共に何かあったに違いねぇ。危険は承知だが、ここが勝負所だ。おい野郎ども!酒は一旦ヤメだ!」


方々から不満の声が上がる


「やかましい!これから一仕事だ!首尾よくいった時はこんな安い酒じゃねえ、大通りの高い店を貸切だぞ!」


「「「「うおおおーー!」」」」


「出発は日没前だ、戻って来る奴らの装備も用意しろ!」


「「「「へい!」」」」


「今日こそ手に入れてやる…お宝をな!」


親分は口を歪め低く笑い、手下達が慌ただしく準備を進める様子を眺めていた




『人形館の奥には宝が眠っている』


誰が言い出したかはわからないが、冒険者の間では広く知られていた噂である


しかし、館を守るゴーレムは恐ろしく強く、内部も迷宮のようだと言われている


ランク査定のために訪れる者は一度戦闘を済ませばすぐに帰るので、最奥まで向かう者はいなかった


そしてその昔、噂の真偽を確かめるべく当時の名だたるゴールド級冒険者達がパーティを組み、人形館に挑んだ事がある


激しい戦闘の末に最奥へたどり着いた彼らは、帰ってきてから


『宝は何も無かった、子供の遊び場に大人が行くべきでは無い』


と報告した


これにより宝の噂は完全に与太話となる


遊び場云々の下りは、彼らにとって人形館のゴーレムなど遊びにもならないとの事だろうと思われた


しかし噂は噂、信じるも信じないも人次第である


例の親分も宝の存在を信じて疑わない方だった




「あいつら夜の街道を歩いて来たのか…自殺したいのかね?」


「ギルドが後ろにおるとわかってて、ここを襲撃しようと企む者達じゃからな。自殺願望がないなら稀に見る阿呆じゃ」


茂みに隠れたフィーと視覚リンクして、こちらに向かう集団を観察する


集団は街道を外れ、魔の森を通ってこちらに向かっていた


暴走ゴーレムが木々を薙ぎ倒したおかげでかなり見通しが良くなっていて、移動には苦労してないようだ




人形館閉鎖を知らせても一度くらいは襲撃する者が現れるだろうと、街道から工房までの中間地点にフィーを配置していた


深夜寝ていたところをフィーから知らせがあったので、マリアを呼びシンシアも起こしている


「しかしなぁ、こんな直ぐに来るなんてな。楽で良いけどさ」


「お主の予想通りじゃな。それで何人くらいおるのかのう?」


「うーん、20人かな。お、一人見覚えのあるのが居るぞ、例の親分じゃないかな?」


「ほう、それは盛大に歓迎せねばな。客は丁寧にもてなす主義じゃ」


「俺もお礼をしてないしな、礼節は大事にしないとね」


「…私は本来あの者達を排除すべき立場なのですが、何故か気の毒に思えて仕方ありません」


どう見ても悪い事しか考えて無い2人を前に、唯一人間では無いマリアだけが彼らに憐みを感じていた




人形館が閉鎖したと聞いて一早くやって来た彼らが見たのは、その跡地に建っていた一軒家だった


あの巨大な洋館が跡形もなく消えた事に全員が動揺していたが、


「落ち着け、例の主があそこに居るのは変わりない。そしてあの忌々しいゴーレムもいない。予定は少し変わったが、かえって楽になった」


と言う親分の話で鎮まる


そのまま指示に従って静かに家に近づいた


手下4人と親分が外へ残り、他を突入させる


勢いよく扉を蹴破り、立て続けに15人ほどが押し入った


「…どういう事だ?」


外から見る限り灯はついておらず、家の中からは物音1つしない


あれだけの人数が入って行ったのに、何事も無かったようにあたりは静寂が包んでいる


戦闘が起きている様子もなく、しばらくしても誰も帰ってこない


「お、親分、変ですぜ」


「ちっ、何が起きてやがる?」


しびれを切らして残りの手下と共に親分も中へ入って行く


「ひいぃ!」


入り口を通った者が短く叫んだ


「どうした、なにが…」


親分が近づくと家の中の床に手下達が倒れているのが見える


全員がピクリとも動かない


「お、俺は死にたくない!」


「俺だって!」


「ひぃーー!」


「待ってくれ、俺も!」


残ってた手下が叫びながら逃げ出していく


「ま、待ちやがれ!クソッ」


ここに一人残っても最早どうしようもないと判断して、逃げ出した手下を追いかける


来た道を戻るように走っている手下達は、木の影から急に現れた巨大なゴーレムに行く手を阻まれていた


「ギャアーーーー!」


「も、もうだめだ…」


「助けてくれーー!」


「く、くるな!くるなーー!」


手下達は恐慌状態に陥っている


巨大なゴーレムは、恐怖に足が竦み動けない手下を捕まえて高く掲げていた


(クソッ、あいつらはもう助からねえ)


遠回りで街道へ行く様にして魔の森に入ろうとすると、後ろから声をかけられる


「なんじゃ?もう帰るのか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。