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「タツキよ、相談事があるのじゃ」
「ん…何だ?深刻な顔して…」
朝食を済ませたタイミングでシンシアが切り出してきた
「ここには人形館があったじゃろ?あれは侵入者対策として工房を囲むように建ててあってな、今はそれが無い」
「……あー、つまり不届き者がこの家に直接来る事ができるから、防衛をどうするかと言うか事だな」
「うむ、儂の感覚ではそう遠くなく来るであろうな。しかしあやつらは何を目的に来ているのやら…ここには拾得物も無いしのう」
「お前のゴーレムを捕獲して連れ帰る、なんて事は無いのか?」
「捕獲どころか傷ひとつつけられぬ奴が大半じゃぞ。昔、ゴールド級の冒険者達がやって来た事があってな。さすがにあの連中は手強くて何十体もやられてしもうたがな」
「その割りに悔しそうじゃないな」
「あれだけやられればむしろ爽快じゃ。それに話のわかる者達じゃったからな、どのゴーレムにどういった弱点がある、などといろいろ意見が聞けて随分とゴーレム研究が捗ったわ」
「なるほどな、しかし数十体のゴーレムの被害がすごいな」
「儂のゴーレムはある程度損傷したら撤退するように指示してあるのじゃ。核が無事なら修復はそこまで手間では無いからな。あの時も核まで壊されたものはおらんかった」
「へー、そんな仕様だったのか」
「知っての通り、儂のゴーレム作りは時間がかかるのでな。使い捨てなぞもってのほかじゃ」
「……あれ程の威力がある自爆機能付きを10体も作った人がよく言いますね」
「うぐぅ」
テーブルを片付けていたマリアの言葉がシンシアの急所を突く
「ただ、確かに防衛を整える必要はあります。私はこの体ですからほとんど戦えませんし、カルポも戦闘向きではありません。マスターの得意な魔法は全て防御系なので戦力としては微妙ですし」
「儂の能力を微妙と評すでないわ…」
マリアのツッコミがよほど刺さった様で、シンシアの反論が弱々しい
「俺のスリングで撃退することはできるだろうが、いつ来るか分からない敵を一日中警戒するのは正直勘弁だな」
「かつては一月何も無い事もあれば、5日連続で襲撃があった事もありました。昼夜関係ないのはタツキ様やマスターには負担が大きいですね」
「当面はあのゴーレムの体をマリアが操作して防衛するしかないじゃろうな。マリアは寝る必要も無いのじゃから」
「仮とは言え自分の体を手に入れてやっと離れられたのです。あの者の体を扱うなど本当は嫌なんですが、今は他に方法も無いですしね…」
ちなみに精神崩壊したゴーレムの核は、シンシアが自我を消して元のゴーレムの体に戻してある
自律行動はできないが、マリアやシンシアが遠隔操作可能なので戦力としては十分らしい
「しかし何が目的でここに襲撃をかけるのかな?ドロップ品もないなら来る度に赤字だし。死なないまでも危険性が高い事は認知されていたしな」
「儂も無力化した者に何度か聞いてみたがよくわからんのじゃ。金目当てとも力試しとも言うておったし」
「こうなったらメティスへ行って調べてみるか。いろいろ買い出しもしたいし」
「そうじゃな、行ってみるか」
「では留守は任せて下さい。気をつけて下さいね」
「はー、楽しかったのう!遠乗りは格別じゃな!」
「もう少し速度を落としてくれよ…、生きた心地がしない」
「そう言いながら儂の体を、ま、弄っておったのはなんじゃ?ん?」
「ああ、お前の肋骨はいい感じだからつい、な」
「お主が触っておったのはアバラではないわ!全然柔らかさが違うじゃろ!」
いつものやり取りを済ませてカルポから降りた
茂みの近くでカルポに隠蔽魔法をかけ、メティスへ向かう
前回の事を踏まえ、目立たないようにシンシアはゴスロリではなくできるだけ質素な服を着せている
「さて、どこへ向かうかのう?」
「まずは冒険者ギルドだな。受付や冒険者に話を聞きたい」
「いきなり本丸から攻めるのじゃな!」
「別にギルドが黒幕と決まったワケじゃないが…」
「いーや、あの受付嬢が黒幕じゃ、儂にはわかる!金貨100枚持ってこいなどと無体な事を言う奴じゃぞ!」
「仕方ないだろ。お前の破壊不可能な暴走ゴーレムを拘束しろ、なんて多分ゴールド級冒険者でも簡単にはできないぞ。本当にそれくらい必要かも知れない」
「むぅ、元はと言えば儂があまりに天才的なのがいけないのじゃな」
「お前それマリアの前で言ったらどうなるか知らないぞ。試しに伝えてやろうか?」
「やめて、最近のマリア怒ると本当に怖いの」
のじゃ口調を忘れてガチでびびっていた
ギルドへ行き、まずは冒険者に話を聞く
シンシアには少し離れてもらい、人の良さそうな冒険者を何人か見繕い声を掛ける
「どうじゃった?」
「今聞いた人はみんな、人形館は力試しのダンジョンだと思っていたみたいだぞ」
「儂の家であってダンジョンではないのじゃがな」
「行くたびに内部構造が代わるって言ってたけど…」
「侵入者が地の利を得たら防衛しにくいじゃろ?定期的に建築ゴーレムに改修させておったのじゃ」
「その辺りがダンジョンと誤解させる原因かもよ?」
「なんと、防衛作戦が裏目に出たか」
それからシンシアと連れ立ってギルドの受付へ向かう
「こんにちは、ご用件をお伺いします」
「あの…」
人形館がダンジョンの様な扱いを受けている理由を聞くと、
「冒険者の間で人形館での戦闘内容の結果がダンジョンへ行く時の指標となっている様です。5分間ゴーレムの攻撃を躱し続けられたらCランク、更に一撃でも当てれたらBランク、撃退できたらAランクで、そのランク以下のダンジョンならある程度探索可能という事になっているみたいです。50年ほど前からある話で、信頼性は高いそうですよ」
…と言われる
もちろんシンシアはブチ切れた
「ふざけるでないわー!誰が儂の家をランク付けの場に決めたんじゃ!責任者はどこじゃー!」
「ひいぃ!」
シンシアの剣幕に受付のお姉さんが慄く
するとカウンター奥から顔や腕が傷痕だらけの屈強な男が現れた
「どうしました?なんの騒ぎですか?」
口調は穏やかだが、眼光は鋭く威圧感がすごい
「おお!お主はここの責任者かのう!」
怒り心頭のシンシアは男の威圧感など物ともせずに吠え続ける
「はい、私は副代表を務めている者です。今日はギルドマスターが不在な為、私が責任者となります」
「ならば話は早い!即刻…」
「シンシア待て、ここでは落ち着いて話ができない。副代表、どこか部屋で話せないでしょうか?」
「こちらとしてもその方が望ましいですな。ご案内しましょう」




