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「工房の図面を引こう」


「ふむ、設計図は大事じゃな」


「実は工房の設計なんてまるでわからないんだ、予定はかなり先だと思っていたから調べてもいない。シンシアの工房も参考にしたいんだけど、どんな感じだった?」


「儂の工房はゴーレム専門のじゃからな。錬金術の工房と共通するものがあるのかはわからんが…マリアは知っているかのう?」


「私も建築専門では無いので全ては解りかねますが、多少なら心得があります」


「じゃあマリアには俺の工房の図面を手伝って欲しい。シンシアは以前の工房を再現するか?新しくするのか?」


「そうじゃなあ。心機一転して新しい図面にしようかのう」


「じゃあ場所を決めないとな。シンシア、俺はどこにどれくらいの土地を分けてもらえるんだ?」


「それはもう好きな場所に好きなだけの広さでよいぞ」


「……いやダメだろ」


「良い良い、この土地はもうお主が自由にして良いのじゃ。パ、パートナーじゃからな」


シンシアは顔を真っ赤にしながら言う


「えーと……マリア、どうしようか?」


「そうですね、私の知っている錬金術工房はこう言った作りのものが多かったです」


マリアが木の棒で地面に簡単な間取りを書く


「ほうほう、なるほど…ってシンシア、なんで俺の工房にお前の工房がくっついているんだよ」


いつの間にかシンシアが間取りを横付けして書いていた


「仕方なかろう、パ、パートナーなんじゃし」


「お前それ言い慣れないなら無理すんな」


「そうですよマスター。安全面から工房は離した方が良いです。居住区を一つにしますので大丈夫ですよ」


「なるほど!さすがマリアじゃ!」


「なるほどじゃないわ。なんで一つ屋根の下になる事が決定してるんだよ」


「しかしタツキ様、錬金術師として作業する場合は家事をどうなさるのですか?聞けば炊事は得意では無い様ですし、この辺りに食事をする店などありません。お屋敷が一つならばマスターとタツキ様のお世話を私が一括ですることが可能ですよ?さすがに違う家の面倒まではみきれませんが」


(うおぅ、すごい搦手がきたぞ。しかし家事を全て引き受けてくれるのはかなり魅力的な提案だ…)


だが生まれてこの方一人暮らしをした事が無い俺は、それにかなり憧れている 


良いよね!一人暮らし!


「マリアは料理すごい上手じゃぞ!洗濯や掃除も完璧じゃ!」


(薄味で物足りないと言ってた癖に煽りやがる、くそぅ心が揺れてしまう!)


「あと耳掃除も最高に気持ち良いのじゃ」


「よろしくお願いします」


更なる憧れの前に俺は呆気なく陥落した



それから5日ほどが経ち、俺とシンシアの工房兼住居が完成した 


フィーのインベントリにある瓦礫の中から使える建材を取り出し、マリアが加工し組み立ててシンシアが魔法で強化、俺の作った接着剤や塗料で仕上げてある


いろいろと工夫し、錬金道具に似たような物を瓦礫の中から組み合わせて作ったりもした


細かい所はその都度直していく事にして、とりあえず住む事はできるようになった



そして更に2日後、マリアの仮の体を仕上げる時が来た


1年だけ運用する予定なのでかなり雑な作りらしいが、その分早く製作できたらしい


「そのポーションはそんなに効くのか?お主は信用しておるが、にわかには信じ難いのう」


「一日に一つしか作れない特別製だぞ。効果は抜群だ。飲んでから5秒後に魔力を流す様にすればかなりの量の魔力を使えるはずだ」


シンシアがゴーレム作製にいつも使うペンダントにはまだ魔力がほとんど溜まっていない


だから今回は俺が作った特別な魔力回復ポーションを用意した


ポーション作製時に俺の全魔力を流して作ったので、魔力回復効果が跳ね上がっている


魔力を流す時に10倍速を活用していて、俺はこのやり方を『魔力濃縮』と呼んでいた


ちなみに5秒後に魔力を流すのにも理由がある


その人の最大量を超えた分の魔力は空気中に放出してしまい無駄になるが、回復が始まるタイミングで魔力を使用すると余剰分がなく全ての魔力を使い切れる


「うむ、タツキを信じて上手くいかない事はなかった。儂も覚悟を決めるぞ!」


(信頼は嬉しいが、盲目的なのはなんか怖いなぁ)



床に描いてある魔法陣の中にマリアの体が横たわっている


核も繋げてあるので後はシンシアが魔力を注ぎこみ起動させるだけだ  


この時の魔力の量や質で性能に大きな差が出るらしい


下手をすると会話すらできないほどに性能が落ちるとの事だ


「ゆくぞ!」


ゴクン、と小瓶の中身を飲み干したシンシアが魔法陣の前に立つ


呪文を唱えるとシンシアと魔法陣が淡く輝き始めた


「くうぅ」


手をかざしたシンシアが力を振り絞るように唸る


しばらくして光が収まるとシンシアはその場に座り込んだ


「どうなった?」


シンシアの側に寄り体を支えてやる


「うむ、この状況の中では格別に良い出来になったと思うぞ。あのポーションはすごいのう」


シンシアは額に玉のような汗をかきながら、それでも達成感のある爽やかな笑顔で答えた



それから少ししてマリアが動き出した


「…マスター、おめでとうございます。成功したようですね」


「どうじゃ?気になる所はないかのう?」


「2日で作ったとは思えない出来映えです。まさかここまでの性能になるとは、ただただ驚くばかりですね」


「ふむ、上出来じゃな。儂とタツキにかかればこのくらいなんて事はないわ」


「なんでこうすぐに調子に乗れるのかね?」


「マスターからそれを除外するとほとんど何も残りません。致し方無いかと」


「………なんじゃ、お主らはずいぶんと息の合った掛け合いが出来るのう」


(ん、お前のマスターがご機嫌ななめだぞ?)


そう思ってマリアを見るとこちらに軽く頷いた


「私とタツキ様の息が合うのもマスターの事を話す時だけです。つまりマスターがあってこそですよ」


「ふむ、そうじゃな。儂がいてこそじゃな!」


(………チョロすぎる) 


無表情に見えるマリアだが、中身は随分と良い性格をしているようだ

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