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工房を作るために分担して作業を進める
シンシアはマリアの核を調整・説得して暴走ゴーレムの体に対応できるようにする
俺はゴーレムの固めた関節を動かせるように剥離剤で接着剤を分解・除去する
その間にフィーには瓦礫の収納をしてもらう
馬型ゴーレムはテントの見張りだ
この辺りには魔物除けの結界が張られているのでそうそうモンスターは現れないが、野生動物は普通に結界を通る
それでテントにイタズラをされては今夜の寝床が無くなる
フィーに収納しても良いのだが、休憩の度に出したり仕舞ったりは面倒だった
ちなみにこの馬型ゴーレムの名前はカルポと言う
ゴーレムの真名は命令の上書きの際に大きなアドバンテージになるので、そうそう他人には教えないのだそうだ
ただシンシアは俺の秘密を打ち明けた事へのお返しにと教えてくれた
(人前では呼ばない様に気をつけよう。でもアイツ確かマリアの名前を俺の前で呼んでたよな…あの時は気が動転していたし、仕方ないか)
しばらく除去作業していると、フィーがやってきた
瓦礫の収納が終わったらしい
インベントリのリストをみると恐ろしい量の項目がある
(このリストを全部見るだけで1日が終わりそうだな…)
「空き容量はどうだろうな、半分は超えたか?」
フィーは頭を左右に振る
どうやらあの瓦礫全てでも容量の半分以下らしい
(限界がどこにあるのか…まぁかなり入るかなら何も不都合はないんだけどさ)
フィーには周辺のマッピングとレシピに使える薬草などの採取を頼み、俺は再び除去作業に戻った
夜になったので作業をやめて晩飯を作る
フィーが収納した事により、瓦礫の中の使えるものがいくつか取り出せるようになったが、リストが膨大過ぎて目当ての物を探すのがかなり大変だった
とりあえず目についた食料や調味料と調理器具を取り出したが、技術の無い俺が限られた物で作る料理は美味くなるワケも無く…
「なんか微妙なもんばかりですまんな。」
「そうか?儂は結構好きな味じゃぞ?濃い目なのがまた良い」
「マリアの作る料理は薄味なのか?」
「よくわかったな。味は良いんじゃがな…たまにはこう言うパンチの効いた味も欲しくなるもんじゃ」
多分シンシアの体を気遣っての事だと思うが、今は放って置くことにした
「それにな…マリア達はゴーレムじゃから食事を取る事は無い。儂はいつも一人で食べておったからな。誰かと話しながら食事をするのはずいぶんと久しい。何というか、嬉しいのう」
「…そうか。おかわりあるぞ、食うか?」
「うむ、頂こうかのう」
俺達の工房作りの初日はこうして過ぎていった
それから2日経ち、マリアの核がゴーレムに取り付けられる事になった
実は昨日の内に可能な状態にはなったのだが、マリアの説得だけが難航していた
「あやつも本当に強情でなぁ、まるで駄々っ子のようじゃったぞ。とても人様には見せれぬわ」
工房ができたら最初にマリアの体を作ることを条件に承諾したらしいが、そのほかにも細々と条件をつけられているらしい
聞いたところ夜更かしをしないとか、そう言う類のものばかりだった
(マリアはここぞとばかりに生活態度を直させるつもりだな。駄々っ子のくだりも演技なのかもな…)
完全に手のひらで踊らされている創造主を後目に、マリアの核が入ったゴーレムが動きだした
マリアの要望で発声器官も取り付けてある
「マリア、新しい体はどうじゃ?」
「…はいマスター、各関節が少し動かし辛いですが、概ね問題ありません」
3メートルを超す巨体に似つかわしくない、落ち着いた女性の声が聞こえる
胴体部には大きな穴が空いており、中の核が見えるようになっていた
自分の手で穴を確認してマリアが呟く
「……核が見える構造になっているのですね、残念です…」
「……なんで残念なのじゃ」
「いえ、たまには全てを忘れて暴れてみたいかなと」
「なんて事を言うのじゃ!あやつが暴走したせいでこんな事になったと言うのに!」
「ええ、全くです。ですから核の埋没はおやめくださいと散々申したのです」
「……そうじゃったかのう?」
「70番シリーズも一体作った時点で危険過ぎるのでおやめくださいと申したはずです。防衛の為のゴーレムが大爆発して館を破壊するなど、本末転倒にも程があります」
「………そうじゃったのう」
「こうなるとわかっていたのにマスターを止められなかった事が本当に悔やまれます」
「いやあの…すまん」
しおらしく項垂れるシンシアを見て、マリアが腰に手を当てたポーズで続ける
「…はぁ、本当はひと暴れしたかったのですが、マスターが思ったより反省しているようなので止めておきます」
「うむ、さすがに儂も思うところがあってな」
「当たり前です。ここで反省が足りないならひと暴れした後に家出しようかと思ってました」
「それはやめて欲しいのじゃ。マリアがいなくなると工房が作れないのじゃ」
「わかっております。次は無いですからね、全くもう」
(あの巨体でお姉さん的な叱り方とは、なかなかシュールなものを見たな)
そう思っているとマリアがこちらを向いて頭を下げる
「この度はご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんでした。タツキ様のお力添え無くしてはあの者の暴走は止められなかったでしょう」
「いや構わないよ、こちらも報酬として敷地を少し貰えたしな」
「その事も含めて感謝申し上げます。タツキ様には重ね重ねご迷惑をお掛けしますが、何卒ご容赦ください」
「まあそのあたりでいいよ。しばらく世話になるからよろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
(マリアはかなり賢いな…おそらく俺がシンシアを放って置けなくて今に至る事を見透かしている)
あれだけ賢いなら、この状況になってしまった事に忸怩たる思いでいるのだろう
(とは言え忠義に厚いのは事実のようだし、なんとかなりそうだな)
こうしてマリアをメンバーに加え、本格的に工房作りに乗り出す事になった




