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翌朝、シンシアは泣き腫らした顔で起きてきた
「おはよう、良く眠れたか?」
「うむ、テントで寝るのは初めてじゃったが中々悪くないもんじゃな」
実際はずっと泣いていたのでほとんど寝てないはずなのだが、気づかない振りをする
「朝飯できてるぞ、と言っても昨日のと同じ串焼きだが」
「おお、あれはうまいから、朝からでもたくさん食べれるのじゃ。儂は気に入ったぞ」
「そんな大したもんじゃないけどな」
食事を済ませるとシンシアか居住まいを正した
「タツキよ、この度は誠に世話になった。しかしこの通りの有様で今すぐには報酬を払う事ができぬ。申し訳ない」
そう言うと深々と頭を下げる
「報酬の金貨10枚は必ず払う。しかし、しばらく待って貰いたいのじゃ。どうであろうか?」
シンシアは申し訳なさそうにこちらを見ている
「それなんだがな…報酬は金貨じゃないのにしてもらえないか?」
「ふむ?………!ダ、ダメじゃぞ!儂の体は金貨10枚などではやらんぞ!」
「そんなお子様体型に欲情するかよ。そうじゃない」
「その言い分も癪に触るがまあいい…。ではなんじゃ?」
「俺は錬金術師だからな、自分の工房が欲しい。もしこの土地を少し分けてくれるならシンシアの工房を作る手伝いもするぞ」
「………それでよいのか?」
シンシアは目を丸くしている
「冒険者になりたかったのも大金を稼いで工房を作るって言う目的があるからだしな。その内販売する店舗も作りたいから、それなりの土地が必要だし」
単に冒険したいと言うのも目的の半分を占めているが、わざわざ言う事も無いだろう
(ゆくゆくは自分の工房を作るつもりではあったし)
「儂としてはありがたい申し出じゃ。実はどうやって工房を再建するか途方にくれておっての」
「なら商談成立だな、これからよろしく頼むよ」
握手を求めて手を差し出すと、シンシアは少し驚いたがおずおずとしながらも手を握ってきた
「う、うむ、よろしく頼むぞ」
「さて、こういう時は手持ちのものを確認する事から始めると打開策が見つかりやすい。物なり技術なりをな」
「ふむ、確かにそうじゃな。お主若いのにしっかりしておるのう」
「それなりにいろいろあってな。行き詰まるのには慣れてる」
「行き詰まりに慣れる生き方とは…お主も苦労したんじゃな…」
シンシアに同情されるのはなんだか腹立たしいが、スルーしておく
「シンシアの言っていた建築用のゴーレムとかは工房が無いとやっぱり作れないのか?」
「無理じゃな。あれこそ高い技術と自我が必要でな、そのためには様々な術式や触媒が欠かせぬ。それにな……」
シンシアは首から下げたペンダントを見せながら続けた
「仮に工房が無事でもしばらくは作れんのじゃ。高性能なゴーレムの作製時には大量の魔力が必要なんじゃが……儂は魔族の中でも魔力がかなり少ない方でな。一年かけてこのペンダントに魔力を注ぎ続け、それで作るのじゃ。昨日使ったばかりでな、まだ当分はロクなゴーレムが作れん」
(なるほど、一年に一体と言うのはそう言う理由か…)
「となると使えるのはあの馬型ゴーレムのみか。…暴走ゴーレムの体にマリアの核を入れて動かしたりとかは出来ないのか?」
「なるほど、不可能では無いな。戦闘型ではないマリアには不満がありそうだが、贅沢は言っておれんし。しかし関節が固まって動けないじゃろう?」
「剥離剤もセットで作ってある。でないと万が一に指とかが付いた時に大変だからな。関節の奥まで入り込んでいるから全て取り除くのは大変だが、出来ない事じゃないはずだ」
「ふむ、それならあのゴーレムをマリアの体として再利用する案は採用じゃな。瓦礫の撤去から建築まで、あのゴーレムならばかなり役立つじゃろう」
「マリアがシンシアに反旗を翻したらまた暴走するかもな。今度は大丈夫か?」
「……………マリアは儂に忠義を尽くしておる、大丈夫じゃ」
「こっち見て言えや」
「…………念のためカバーに穴を開けて魔力を通しやすくしようかのう」
「お前、日頃からマリアに小言言われてらしいしな。そうした方がいいと思うぞ」
「儂はマリアを信じとるがな、お主が安心するじゃろうと配慮したんじゃ」
目を逸らして言うので説得力は皆無だった
(俺の手の内を晒すのは初めてだな)
とは言え昨夜の内に腹は括ってある
「今度は俺の番だ。フィー、姿を見せていいぞ」
そう言うとシンシアは急に現れたフィーに驚いた
「なんじゃこの可愛い奴は?触っても良いのか?」
「いいけど優しくな。こいつはフィー、俺の使い魔だ」
「うむうむ、可愛いのう。フィーと言う名前も似合っておるのう。すべすべして触り心地も良い」
シンシアはフィーをいたく気に入ったようだ
「こいつは可愛いだけじゃない、サポート能力に特化したすごい使い魔なんだ。マリアを瓦礫の下から見つけたのもフィーだ」
「おお、そうじゃったか。フィーよ、ありがとうな。おかげでマリアは核に傷をつける事無く回収できたのじゃ」
フィーもシンシアは嫌いではないらしく、嬉しい時の反応を示している
「フィーは索敵、マッピング、アイテム探知、鑑定ができる。あとさっきみたいに認識阻害で見えなくなるし、俺と視覚や聴覚をリンクできる」
「………なんと言うか補助スキルの大盤振る舞いじゃな。高性能にも程があるぞ」
シンシアがさすがに少し引いている
とはいえフィーを撫でる手を止める事は無いようだ
「更に弾道計算と行動予測もできる。どちらもスリングで十二分に活躍しているスキルだ」
「………なるほど、お主が特殊と言うのはこの事か。確かにそれだけのスキルを持つ使い魔は聞いた事が無いのう」
「実はまだある。大容量インベントリと言ってな、かなりの量の物をフィーの中に収納しておける。まだ限界まで物を入れた事が無いが、この辺りの瓦礫は全部収納できると思うぞ」
「……………今なんと?」
「この瓦礫を全部フィーの中に収納できる」
「………有り得ん。儂の常識では有り得んのじゃが、お主が嘘をつくとも思えん。しかし、さすがに理解の範疇を越えすぎじゃ」
「まぁ自分でもやり過ぎたかとは思う。でも俺の考える最高のサポート特化使い魔を作れる環境があったんだよ」
「うむ、分かる、分かるぞ。儂も考え得る最高のゴーレムを作ってしまった身じゃ」
意味もなく熱い視線を交わしてしまう
「ただ、ハイスペックにする代償に攻撃不可の呪いがかけてある。フィーは戦闘行動が一切とれない」
「ふむ、本来なら恐ろしい呪いじゃが、フィーに関してはサポート用使い魔じゃし特にデメリットとならん、考えたのう」
シンシアは両手でフィーを持ち上げ、繁々と見つめていた




