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13、リアル俺TUEEEEも夢じゃない、はずが、なぜこうなった?



 スキル【オールクリーン】の検証はひとまず終了。

 毒の効果が数時間後とかに現れたら嫌なのて、万能薬はポケットに忍ばせておきましょう。

 続きまして【物理・魔法攻撃無効(パーフェクトガード)】の検証です。


 もうね。

 なんですかねこれ。

 こんなのゲームにはありませんでしたよ?


 ホントに物理攻撃も魔法攻撃も無効ならば、私、無敵じゃないてすか。

 俺TUEEEEってやつですよね。そーですね。

 まぁ、異世界にお引っ越しした主人公にはありがちな設定ですよ。ん?ローザはヒロイン(暫定)だったな。


 昨今のヒロインは強くないとやっていけません。

 白馬に乗った王子さまを待っているだけのヒロインなど古いのです。

 自ら白馬を駆り、敵陣の真ん中に突っ込んで行く。

 そんなヒロインが求められる世界です、はい。


 もっとも戦いとは無縁のところにあるような聖女さまの人気は、出番も少ない割りに高かったけどね。

 しかし、ローザ姉さんの人気には遠く及ばないのだ。


「でも【パーフェクトガード】ってどーやって検証するの?」


 例えば、自分のほっぺたをつねってみると、痛みはあるのだ。

 試しにナイフを取り出して、自分の掌を軽く切ってみると……うん、フツーに怪我をしましたが?


「【回復薬】」


 アイテムボックスから小瓶を取り出して、傷につけると、なんということでしょう。

 切り傷はなくなって、痕すら残りませんでした。

 大変便利です。


 うむ。

 HPを回復させていたアイテムが、傷に対して有効なんだな。


「例えば、これを飲めば骨折なんかにも効くのかな?あー………………やっぱ飛び降りるしかないのか」


 くいっと頭を上にあげて、空高く(そび)える木のてっぺんを……見えない。

 どんだけ高いんだこの木は。


 この木なんの木、気になる木。

 名前も知らない木ですけど。

 背が高いことはー、わーかりまぁすぅー。


 よくわからない歌を歌ってしまった。

 ゲームのBGMにこんなのあったかな?

 ダメだ、思い出せない。

 ついにゲームの記憶も曖昧になりはじめたか……紙に書き出して正解だったな。

 まぁ、それはともかくとしてだ。


「最悪、今度こそローザは死んじゃいますね」


 だが、それでもやるんですね。

 はい、勿論です。

 ちなみにこれは【猿真似(イミテーション)】の検証でもあります。


 【パーフェクトガード】の一行説明は、魔法&物理攻撃を無効にする。とあった。

 余談ですがこのスキルはゲームにはありません。


 私が考えているようにこいつが【攻撃】に対してのみ有効なスキルであった場合、敵相手の戦闘だとローザは最強だけど、悪意なき事故には無防備ってことにならないか?


 例えば誰かがうっかり2階から落とした鉢植えに、頭を強打されて事故死するとか。

 例えば高いとこから足を滑らして転落死するとか。

 うん、あり得る。


 では、どーすれば事故死を免れるか。

 答えは【イミテーション】にある。

 このスキルの説明は、あらゆる生物の動きを模倣→習得→昇華させる。とあった。

 

 そして、イミテーションの説明文の下には。

 【ローザ・フォン・フェルメール(習得)】と表示されていた。


 ぶっちゃけ意味はわからないので仮説を立てた。


 仮説・私は『ゲームの18歳のローザがしていた動き』と、同じ動きが出来るのではないだろうか。


 8歳の少女が、18歳の戦闘能力(しかも最高峰レベル)を有することが出来れば、向かうところ敵なし。

 不意打ち闇討ち、返り討ち。

 一般人に変装した暗殺者の正体を、出会って数秒で暴き瞬殺したローザ姉さんの格好良さに、テレビの前で悶絶した過去ありです。

 そんな姉さんのスペックがまるっと私のモノになるとか、リアル俺TUEEEE確定じゃないですか、ひゃっほぃ。



 そんな訳で【イミテーション】が使えるか検証です。

 【イミテーション】があれば、たとえ【パーフェクトガード】が使えなくても最強だからね。


 私は黄色い毛並みの親友を服の胸のあたりに押し込んで、ドレスをたくしあげ、うんしょっーという掛け声と共に更に高いところまでのぼる。


 すいすいと猿のように木をのぼっていく。

 途中でまばらに咲いていた白い花が、髪やドレスにくっついてきたが、特に問題はないだろう。

 前世の私の運動神経が良かったのかはわからないが、ローザ姉さんの身体能力はずば抜けて高い。

 やはり、これは【イミテーション】の働きだろうか。

 いや。早計は失敗のもとだ。

 

 ゲームだとローザ姉さん始め、キャラクターたちは『いやいや。そんなところから飛び降りて、怪我ひとつなく無事でいられるわけがない!』と思われるような、大変素晴らしい動きをしておりました。

 どんなに高い場所から飛んでも、回転しながら降りたら大丈夫!って猫か!

 まぁ。カッコいいので物理的法則が無視されていても、私は全く気にしませんでしたよ、ええ。

 自分の身長×3くらいはジャンプしてましたが、カッコいいので許された。


 だが、現実ではそーはいかない。

 カッコいいから建物の屋上から飛び降りでみたよ!ふつーに死んだよ!ではお話にならないのです。そのための検証です。

 ゲームで姉さんがしていた回転着地がカッコ良くて、私も出来たらいいなぁとか、少しも思ってないですよ。ただひたすら死亡エンドを回避するためなのだ!


 ローザ姉さんの華麗な動きを頭の中で反芻しているうちに、頂上到着です。体が軽くて良かった。


 下を見ると……おぉう。どこのアトラクションだこれ、と言わんばかりの高さですね、ガクブルガクブル。

 やはり、この木は他の木と比べると頭ひとつ突き抜けている。


 それにしても、フェルメール家の敷地が広すぎてちょっと引くわ。

 お。かろうじて壁の向こうが見えるよー。

 おおお!グロシュラリア国の王都カーバンクル!

 『境スタ』のスタート地点!

 ゲームのストーリーは屋敷の前でメイドさんに見送られるところから始まるのよね。

 キースとローザがまずは一緒に旅立つ仲間のテイトを迎えにいって、それから街中をちょっと散策して師匠と合流していざ旅立たん!


 うおおお。なんだかテンションあがるわー!

 ニューゲームを選択する度に、今度こそはローザを幸せにすると私は誓ったのですよ!

 そうだ!ガクブルしている場合などではない!

 飛び降りろ!飛び降りるんですローザ!

 足からいけば、例え【イミテーション】が失敗しても、骨が折れるか、骨が肉を突き破る程度で済むハズだ!

 回復薬も上級回復薬もボックスの中にはどっさりあるのだ!

 うぉぉぉ!やるぞー!

 

「おおおおお!やってやる!やってやるぞぉぉぉ!!」


 天国のお父様、お母様。ローザをお守りください。

 もっとも、前世……ってことでいーやメンドイ……の記憶もローザの記憶も欠片ほどもないので、実の両親の顔は微塵も思い浮かびはしなかったですけどね?

 まぁ、気分の問題です。

 

 そして私は、ぴしりっと片手を挙げた。


「いちばーん!ろーざ・ふぉん・ふぇるめーる!いっきまーす!」


 後続はないが高々と宣言をする。

 無駄にテンションが高いのは、勢いで行かなきゃ足がガクブルして動けないからです。

 大丈夫!足から行けば大丈夫!

 骨折か骨が肉を突き破る程度!

 うぉぉぉ!女はどーきょーおぉぉおー!!


「せいやー!投!身!」


 愛しのローザ姉さんを守るために、木のてっぺんから飛び降りようと足に力をいれ。


「おい!!」


「っ!?」


 突然上がった誰かの声に、体が硬直して止まったが、上半身はすでに空中へと傾いていた。

 靴底が、木の枝から滑り落ちる一秒にも満たない感覚を、やけに鮮明に感じとる。

 後は成す統べなく、地面に向かって落ちていく。


「にょわぁぁぁ!!」


 頭からいった。

 やべぇ。これ死ぬ。ガチで逝く。

 回復薬!ってぇ!取り出す暇なんかあるかー!なんで先に準備しとかないのバカなの私!

 つーか誰だよ声かけたの!私のローザ姉さんが死んだらどう責任を取ってくれるのよぉ!


「ローザ!」


 木のてっぺんから、地面に落ちるまで。

 それは僅か数秒の世界だ。

 瞬きの間に終わるその世界で、キースの表情が絶望に染まるのを見た。

 死なないでと、ローザの胸に剣を穿ちながら、泣いていた時と同じ顔。



 ああ。違うの。

 そうじゃないの。

 そんな顔をさせたかったんじゃない。

 私はただ、一緒に生きたかった。

 ううん。たとえ、一緒にはいられなくても、生きていて欲しかった。

 キースとローザが笑って生きている未来(あした)が欲しかった。

 望んだのは、ただそれだけだった。



(っの!くそぉっ!女は度胸!)


 私はローザ・フォン・フェルメールだ!

 眉目秀麗!容姿端麗!

 文武両道にして一騎当千!どころか万でも億でもかかって来いやぁぁぁのスーパーお姉さまですよぉぉ!


 私の義弟(キース)を悲しませるヤツは、たとえ私自信であっても許さない。


【重力操作】


 カチン、となにかが噛み合うような感覚の後、不意にその方法を思い出した。

 例えば一本の剣のみを手にし、敵陣の真ん中に突っ込む時も、仲間と共に建物の屋根から飛び降りるときも、息をするのと同じくらいの自然さで、私はそれを操っていた。


 ドレスの裾をひらりと(ひるがえ)し、獣のようにしなやかに身体を捻った。

 重力操作をつかって、地上に引き寄せられる力を軽減させる。

 こっそり、服を広げて空気抵抗で減速もしてみた。


 着地と同時に前転し、受け身もバッチリ。

 ドレスが汚れた?メイドさんごめんなさい。


 ぴしっと両手を高くあげて、ぴたりと直立し制止する。

 胸元の親友も、なんだが得意気な顔に見えませんか?気のせいですか。そーですか。

 なんだか、体操の床の決めポーズのようになったわね。

 ところで、体操の床ってなんのことですかねー?

 ああ、やはり記憶の弊害ががががが。

 

「……なんだこの女、変態か?」


 ビシッ!!

 たとえるならば、そんな擬音が相応しいだろうか。


 おいお前、いま何て言った?

 私の、愛しい、完璧で、完全で、絶対の存在であり、誰よりも慈悲深く、この世の何者より価値ある、至高の、唯一の、愛しい愛しい愛しいローザ御姉様が、へ、へへへんたっ。

 キシャァァァー!!

 想像することすらおぞましい!!

 モブがぁぁ!モブごときがぁぁぁぁ!!

 この世界のヒロインに対して言うに事欠いてへんた○だとぉぉお!!

 当然死ぬ覚悟は出来ていやがるんだろうなぁぁぁ!!


 突然聞こえた暴言に、目尻を吊り上げながら振り返る。

 今気づいたが、私が飛び降りる時に聞こえたのも同じ声だった。


 声の主は、ローザより視線ひとつ分高い、銀色の髪の少年だった。どこかで見たことあるような容姿だが、今はそれどころじゃない。

 私の姉さんを侮辱したモブに、自分の墓を掘らせなきゃいけないのだから。


「なによアンタ。初対面のレディに対して随分失礼じゃないの?それともなに?私のいっぺんたりとも文句のつけようがない完璧な着地アンド決めポーズに対して、なにか言いたいことでもあるわけ?」

 

 腰に手をあて、あごをしゃくり、悪役令嬢かくやという態度で目の前に立つ男を威圧した。念のために言っておくが、ローザはヒロイン(以下省略)

 すると銀色の髪の男は、至極面倒くさそうに血の色をした目を細めた。

 そして、飛び出す暴言の数々。


「は?……木の上で散々意味不明な叫び声をあげた挙げ句、何を血迷ったのかそこから飛び降りたうえ、怪我ひとつなく着地した後に決めポーズうんぬんについてアレコレいってるお前の頭の中と体のつくりが変だって言ってるけど、それがなにか?」


 カッチーン。

 こ、この男。モブの癖にふてぶてしいその態度、万死に値するわ!

  

「あらあら!凡人には先程の素晴らしい技の数々が御理解出来ないようで大変憐れですこと!っーかあんたさっきは変じゃなくて、へんた……ゲフンゲフン……って言ったな!強くて可憐で完全完璧なローザに向かって一番ふさわしくない言葉を吐いたなぁぁ!」


「……ぅわ、自分で可憐とか言ってるよ、コイツ」


「(ぎゃぁぁしまった!怒りのあまりつい!)ち、ちち、違うもん!キースがっ、キースが可愛いって言ってくれたんだもん!キースもキースパパもキースママもローザが可愛くて美人だって言ってくれたもん!」


「そりゃあ、世辞だろ。大体、訳ありの新しい家族に、醜いだなんて普通の精神の他人(ひと)は言わねぇだろうよ。たとえ真実がどうであれ」


「どーゆう意味!どーゆー意味なわけ!喧嘩売ってんのあんた!」


「それは俺の台詞だっての。あーあ、何が深窓のお姫様だよ。ただの煩ぇ子猿じゃねぇか。期待して損した」


「子猿っー!だれが子猿かぁぁ!少々顔がいーからって調子に乗るなよこのモブが!言っとくけどアンタ程度の容姿なんて、キースの足元にも及ばないんだからね!」


「貶されてんのか誉められてんのか分からねぇんだけど。取りあえず、お前バカだろ?」


「むっきぃぁぁ!!何なのコイツ何なのコイツ!キースぅ、この男ムカつく!」


「キース。お前の姉さんが、お前の話に聞いていた人物像と真逆過ぎて引くんだけど、どーゆうことだ?」



 超絶失礼男とアレコレ言い合った挙げ句、二人してキースを振り返り。

 ぴしりっと固まりました。

 いやー、擬音がまたバッチリですよ。


 おどろおどろしい。


 どういう意味かは思い出せないんだけど、そんな言葉が思い浮かびました。

 前世の言葉かなぁ。あはは。


「……ローザ」


「はっ!はいっっっ!!」


 手の指先までぴしりっと伸ばし、体にぴったり引っ付けて姿勢を正す。

 ひょ、表情がない。

 いつもにこにこ可愛い義弟(おとうと)の顔に、全く表情がありませんっ。

 な、なんか背負ってるっ。キースの背後になにかがいるよぉ。

 多分それは、激しい感情の具現化ってやつですね。


「なんで中庭にいるの、ローザ」


「え?は、はい?」


「かくれんぼの隠れ場所は家の中だけっていったよね?」


「で、でもここは中庭だから、家のし、敷地内かなぁ……って」


「言ったよね」


 はい、言いました、と返す以外、私に何を言えと?

 素直にはい、と頷いたさ。

 だが、キースの攻撃ターンはまだまだ終わらなかった。


「ねぇ、僕はね、ちっとも訳がわからないんだ。どうしてローザが中庭にいたのかも、初日にも落ちたのにまったく懲りもせず木の上にいたことも、あまつ、てっぺんから飛び降りたことも、全く意味が分からないんだ」


 きー……す。えっと、おこって、ますよね。

 ちらりっと上目遣いでキースを見上げると、視線の先に立つ義弟(おとうと)は、目に全く光を宿さないまま、うっとりするぐらい優しく笑ったのだ。


「説明してくれるよね、ローザ?」


 全身全霊全力で……私は土下座した。




いつもお読みいただき感謝です。

しおり、感想等、創作の励みになっております。

まったり進行ですが、今後ともよろしくお願いいたします。


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