フランソワ、画策する
皆さん御機嫌よう奥山です。今日もフランソワ様の監視業務に勤しんでいるのですが、そろそろ来る休憩時間の過ごし方で少し悩んでいます。
食事に行く程お腹も減っていませんし、本も家に忘れてきてしまいました。どうしましょう。
ピロン。
おや?携帯に魔王城からメールが来ました。何でしょう。
[大浴場のサウナのメンテナンスが終了しました。13:00からご利用いただけます。]
「おぉ!サウナ!それがあった。よし休憩時間はここに行こう。」
実は僕結構なお風呂好きでして、サウナは特に好きなんですよ。楽しみだなー。
シャンッ!
「うわぁ、フランソワ様。どうしたんです?」
「ジィ〜。」
「な、何ですか無言で見つめてきて。怖いですよ。」
「ジィ〜。」
「ちょっと!ほんとに何なの?!その目やめて吸い込まれそう!」
「ジィ〜。」
「もしかして…サウナ行きたいんですか?」
「コクッ。」
「なんだ、そうならそうと一緒に言って下さいよ。今更止めたりしないですから。ほら早く準備して下さい。」
「ジィ〜。」
「何でまだ見つめてくるの?今日ずっとそんな感じなの?!」
=====
「ここの浴場のサウナやっと使えるようになったのね。やっぱりお風呂はサウナ入ってナンボだもの。」
大浴場に着いた私と奥山さんは入り口で男湯と女湯に分かれたわ。まぁ当たり前よね。
「あら?フランソワ様。こんな早い時間に浴場に来るなんて珍しいですね。」
「咲場さん!今日のお仕事はもう終わりなの?」
「いえ、今は休憩時間です。サウナが使えるようになったらしいので入りたくなっちゃって。」
彼女はサキュバスの咲場さん。夜のランニングを終えた後浴場で会う内に仲良くなったの。男所帯の魔王城にいる数少ない女性同士、気兼ねなく色んな事を話せるわ。あと余談だけど怖いくらいスタイルが良いわ。
「私休憩が一時間なのですぐにサウナに入ろうと思ってるんですけどフランソワ様はどうします?」
「私も一時間しか時間がないの。名前は言えないけど監視役の豚カツの休憩時間に付いてきただけだから。」
「素直に奥山さんって言ってあげましょうよ…」
=====
雑談をしながら咲場さんとサウナに向かっているとサウナの前に人だかりが出来てるわ。しかも全員がのぼせてるみたい。どうしたのかしら。
「何か様子がおかしいわね。咲場さん、もしかしてサウナのメンテナンスが不十分とかって事は?」
「それは無いと思います。うちの技術職の人たちは魔界でもトップクラスですから。あのすいません、何があったんですか?」
咲場が近くでのぼせている子に話しかけるとその子はフラフラしながらサウナの中の様子を教えてくれたわ。
「何があったというか…中に井附さんがいてサウナの中の温度が一気に上がっちゃったんですよ。」
「井附さん?咲場さん知ってる?」
「えぇ、同じ受付で働いているので。確か私より先に休憩に入って浴場に行くって言ってましたね。」
「なるほど。どういう理由か分からないけどその井附さんが原因なのね?わかった!ここは私が解決してあげる!」
「待ってくださいフランソワ様!井附さんは…!」
ガラガラガラ…シュボゥッ!
「ぎいやぁぁあ!あ、熱い!目がぁ、目がぁぁあ!」
「フランソワ様ぁぁぁぁあ!」
「何なのよこのクソ暑い蒸気は!」
およそサウナとは思えない熱気に襲われて思わず悲鳴をあげてしまったわ。何をどうすればこんな温度になるのよ!すると中から赤い肌の子が外の様子を見にきたの。
「あのー、大丈夫っすか?すごい声出てたっすけど。」
「あ、あなたが仕掛けたの?フフ。先制攻撃とは中々やるじゃない。」
「何言ってるんですかフランソワ様…彼女は井附さん、種族はイフリートです。」
イフリートって確か炎を操る悪魔よね?
「皆さんのぼせてるみたいっすね。サウナには無理して入らない方がいいっすよ?」
「初めまして井附さん私はフランソワよ。多分だけどみんながのぼせてる原因あなたなんじゃないかしら。」
「えぇ?!自分っすか?」
=====
話を聞くと井附さんは普段仕事をしているときは体の炎の温度を調節して周りに迷惑がかからないようにしているらしいのだけど、サウナが気持ちよくて無意識に炎の温度を上げてしまったらしいの。
「自分暑いところとか大好きで、それでサウナに入れるようになったのが嬉しくて満喫してたらつい、皆さん迷惑かけちゃって申し訳ないっす!」
「いいんですよ井附さん。私達別にダメージを食らったわけじゃ無いんだから。」
「咲場さん?さっきの私の姿もう忘れちゃったの?眼球の粘膜モロいかれたわよ?」
「咲場さん…すいません普段のお仕事でもお世話になってるのに。貴重な休憩時間を無駄遣いさせちゃったっす。」
「あれぇ井附さんも?もしかして私魔物には見えなくなるスキル手に入れちゃった?主人公特有の急なスキル獲得しちゃった?」
「フランソワ様もすいません、せっかくのサウナタイムをお邪魔しちゃって。」
「あ、よかった見えてた。いいのよ井附さん。その体温もあなたの個性なんだから。」
「うぅ、咲場さんもフランソワ様も優しくてより申し訳なくなってくるっす。何かお詫びが出来ればなんすけど」
私が優しい?井附さん。なんて純朴な子なのかしら。こんな子を利用するなんて…いいえ、それでも私の心が収まらないわ!
「ねぇ井附さん。ちょっと頼みたいことがあるんだけど、お詫びついでに頼まれてくれないかしら?」
「何すか?出来ることなら何でも言ってくださいっす!」
「大丈夫井附さん?今フランソワ様相当悪い顔してるわよ?」
「問題無いっすよ!で!何をすれば良いんすかフランソワ様!」
「そうね、まず井附さんの能力によるんだけどイフリートってどれくらいの範囲の熱量を操ることが出来るの?」
「そうっすねぇ、個人差はありますけど自分は半径200メートルくらいの範囲ならイケるっすよ!」
「200?!最高よバッチリじゃない!」
「それで?井附さんはどうすれば良いんですかフランソワ様。」
「簡単よ。男湯のサウナの温度を上げてちょうだい!とびっきり熱くね!」
「えぇ?!なんでそんなことするんすか?!」
「考えてもみてよ。私がサウナに入れなかったのに名前は言えないけど私の監視役の酢豚がサウナを満喫しているのよ。そんなの許せる?いいえ許せないわ!」
「で、でも〜なんか罪悪感が〜」
「ん〜?さっきなんでもするって言ったわよねぇ井附さん?言質はとれてるのよ?」
この後少しの押し問答の末に作戦実行に至ったわ。さぁ。煉獄を味わいなさい!
「うぅ〜、すいませんっす奥山さん。」
井附さんは申し訳なさそうに少しの間両手を合わせて終了したと言ってきた。そんなに早く出来るものなのか良くわからなかったけど、そういうものなんでしょう。
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「ではフランソワ様、私と井附さんはこれで。」
「えぇ、今度一緒に三人でお茶しましょうね。」
咲場さんと井附さんの二人と入り口で別れ、私は男湯から奥山さんが出てくるのを待っていると…
「だぁっは!はぁ…はぁ…何なの?!急にサウナが熱く!あ、フランソワ様は大丈夫でしたか!男湯のサウナがいきなり熱く…何でニヤニヤしてるんですか。」
「べーつにー、上手く料理が出来た時ってこんな気持ちなんだなーと思って!」
「ちょ、なんか理由知ってるんですか?待って。あ、やばい!のぼせて真っ直ぐ歩けない!助けてフランソワ様ぁ!」
案外イフリートのいるサウナも悪くないんじゃないかしら。




