奥山さん、ビビる。
皆さんどうもこんにちは、昼の暖かな陽気を浴びながら
バンッ!バンッ!グチャッベチャ!ズドドドド!
魔王様から任された人質のフランソワ様の監視を
ズバッ!ブシャァァアッ!ヴォオォォ!ピンッ…シュッ!チュドーン!
「フランソワ様うるさい!まだ挨拶の途中なんですよ!」
「え?何の話?」
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こんな和やかな昼下がりには全く合っていないおどろおどろしい音がフランソワ様の部屋から漏れ出ています。
「一体何の音なんですか?魔界ですら滅多に聞けないですよそんな音。」
「あぁこれ?ゾンビゲーよ。最近発売されたデッドレフトフォーライジングデッド4っていう期待の新ナンバリングなの!」
「1つのタイトルでデッドとフォーを二回言ってるあたり大分頭悪いですよねそのゲーム。」
「いやいやバカに出来ないわよこれ。そうだ!奥山さんも一緒にやりましょうよ!このゲームソフト1つで2人プレイが出来るのよ。すごいでしょ!」
あまりゲームをしない自分からすれば何が凄いのかあまり分かりませんが、監視役が人質と同じ部屋でゲームするって違和感ありすぎて怖くなってきますし、それに…
「僕、ゾンビゲーはちょっと…」
「あら?奥山さんってゾンビとか怖がる人?意外ね。」
「いや怖いわけではないんですけどね?魔王城の同僚にゾンビがいるんでなんか気まずくなるというか。」
「…」
あれ?急にフランソワ様が黙ってしまいました。普段ならしょうもないだのなんだの言ってくるのに。なんて考えているとドアの小窓が勢いよく開けられました。
シャンッ!
「いるの?!」
「はい?」
「魔王城に!奥山さんの同僚にゾンビがいるの?!」
「え、えぇいますけど。…まさか?!」
「会いたいわ!今からそのゾンビのとこに連れてって!準備するから!」
どうやら僕は地雷を思いっきり踏み抜いてしまったようです。
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僕がその気になったフランソワ様を止められるわけもなく勢いそのままにその同僚と食堂で待ち合わせることになり、そして今三人で同じテーブルに座っているという状況です。
「こんにちはー。自分ゾンビの腐川って言いますー。…あのー、フランソワ様?その手に持たれてる物は一体?」
「フランソワ様。何で食堂にショットガン持ってきてるんですか?あと目が怖いです。」
「何を言っているの!セーラー服には機関銃、ゾンビにはショットガンがこの世の常識でしょう?」
「知らないですよそんな常識。ほら周りの人たちが驚いてますから渡してください。」
僕がため息混じりに回収しようとしたらフランソワ様がいきなり腐川にショットガンを突きつけました。本当何やってんのこの人!
「さぁ答えなさい腐川さん!今まで何人の人間をゾンビに変え、街を恐怖のドン底に陥れたの!」
「えぇぇぇ?!何なんですか急に!」
「一体どれだけの人を『そんな…お前までゾンビに!?クソッ!クソォォォオ!』という悲しみの連鎖に巻き込んだの!」
「ヒィィィイ!奥山さん助けてぇ!」
「ちょっとフランソワ様マジで落ち着いて!目がヤバイですよ目が!」
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「はぁ…はぁ…申し訳ないわ。本物のゾンビを生で見れて少々興奮してしまったみたい。」
「あれで少々なの?あんたのテンションゲージどうなってんですか?」
「まぁよくわかりませんがフランソワ様は自分にどういったご用件で来られたんですか?」
あの状況の直後によくフランソワ様に話しかけられるな。案外腐川は肝が座っているのかもしれません、肝があるかわかりませんが。
「腐川さん!私ねゾンビゲーが大好きなの!でもああいう手合いのものって人間視点しかないでしょ?是非ゾンビ側の気持ちを聞かせて欲しいのよ!」
「なるほどそういうことでしたか。でもすいませんフランソワ様。僕戦闘には参加したことないからよく分からないんですよ、魔王城での仕事は事務作業ですし。」
「そうなの?ゾンビといえば大群で押し寄せてくるとかそういうことしそうなのに。」
「ゲームのような人数を揃えるのも難儀ですし、自分たちは耐久力も機動力もないですからコスパ悪いんですよ。」
「自分の種族をコスパが悪いとか言うなんて…腐川お前意外と容赦ないな。」
「気にしないで腐川さん。足が遅くて脆いゾンビも需要があるわよ。固まってるところを手榴弾で木っ端微塵にする時とかストレス解消になるし。」
「ゾンビが目の前にいるのにあんたも容赦ないな!」
「あー、分かります。デッドレフトフォーライジングデッド4とか特に爽快ですよね。」
「分かっちゃうのかよ!あとお前もやってんかよ!」
ゾンビゲーの話題で意気投合し始める姫とゾンビという訳の分からない構図が出来上がってしまいました。この姫様はどこに向かっていく気なのでしょうか。
「腐川さんもゾンビゲーやるの?じゃあ私の部屋に来ない?色々揃えてあるわよ!」
「フランソワ様、一応あそこ監禁部屋ですからそんな友達誘うみたいなことは出来ないですよ?」
「えー奥山さんはいつからそんなケチはオーク…じゃなかった、ポークになったの?」
「じゃなくないよ!そのままいけばよかったのに何で言い直したの!」
「ふん!私は腐川さんと遊びたいの!許してくれなきゃ部屋には帰りませんからね!」
「ちょっとぉ!わがまま言うんじゃありません!帰りますよ!」
「い、や、だ!」
こうなったら意地でも動かないので食堂のテーブルに必死にしがみつくフランソワ様を引っ張ってみたのですがビクともしません。この子を馬力どうなってんの?僕オークだよ?本当にどうしよう…困ったなぁ。
「でしたら自分のオンラインIDとネット通話の番号を教えましょうかフランソワ様。あとでフレンド申請していただければオンラインで協力プレイ出来ますし、他にゲームをやってる仲間も紹介できますよ。」
そう言いながら腐川はメモ帳を取り出してサラサラと番号を書き始めました。
「!…そうよ!その手があるじゃない。そうと決まれば善は急げよ。何をしてるの奥山さん早く部屋に帰るわよ!ありがとね腐川さん。」
「ちょっと!フランソワ様待ってくださ…いや足速いな!もう見えないよ!」
「自分なりに助け舟を出したんだけど、いらなかったかな?」
「そんなことないよ。かなり助かったよ今度何かお礼するから、じゃあな腐川。」
腐川に別れの挨拶を言い、僕はフランソワ様を追って監禁部屋の方に走り始めました。
というかあの状態のフランソワ様をあっさり動かしてしまうとは。もしかすると僕より腐川の方が監視役に向いているんじゃないの?
以上、奥山でした。




