奥山さん、進む。
皆さんおはようございます。奥山です。この頃は雨続きだったのですが今日は久しぶりに晴れています。やっぱり日の光はいいですよね。浴びてるだけでなんだかやる気が湧いてきますよ。
「おはようございます。フランソワ様。」
「おはよう奥山さん。あぁ…わかる!わかるわ!」
「え?なんですか急に、怖いんですけど。」
「奥山さん、あなた朝食にご飯を食べたわね?」
「いえ、僕朝はパン派なので。」
「おかず…塩鮭ね?」
「ベーコンエッグですけど…」
「飲み物は…そう、玄米茶ね!」
「ホットミルクだよ!何一つとして合ってないよあんたの推理!ちょっとフランソワ様、突然どうしたんですか!」
「いやぁ、推理ものの漫画読んだらね、私もやってみたくなっちゃって。『プライベートアイディテクティブ探偵湖南』って漫画なんだけどね。」
「同じ意味の単語三つ並べてるだけなのにすごい頭悪そうですねその漫画…さすがに漫画読んだだけで推理できるようにはならないですよ。」
「えー、でもちゃんと推理のノウハウ書いてるわよ?『3番目に出てくるやつが大体怪しいからとりあえずそいつ疑っとけ』って主人公の師匠が言ってるし。」
「なんてこと言ってんだよその師匠!推理もクソもないよ!ちょっとフランソワ様それ没収!その漫画もう読まないほうがいいですよ!」
前々から思っていたのですがフランソワ様は一体どこからこんなゲテモノ漫画を探してくるのでしょうか…
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あー、今日はいつにも増して平和だ。僕の身のまわりにいる人たちははちゃめちゃな人たちばかりなのでこういう時間がとても貴重に感じられるんです。
「ねぇねぇ奥山さん人生ゲームやりましょうよ!」
ほら、突然こういうこと言い出すでしょ?
「人生ゲーム…ですか?まぁいいですけど二人でやるんですか?」
「大人数でやると待つ時間が多くなるでしょ?だから二人でやりましょ、ほら早く早く!」
ガチャ!
そういってフランソワ様は監禁部屋のドアを開けて僕を招き入れ…ちょっとまって?
「ちょっと!何でフランソワ様がドア開けてんですか!もう言うのも馬鹿らしいけどあんた一応監禁されてんですよ?!」
「何を今更、そんなの気にした方が負けよ奥山さん。ほらほらジュースとかお菓子の用意も出来てるから。」
僕は言いたいことが山ほどありましたが、それを言い始めたら日が暮れてしまいそうだったのでひとまず飲み込んで部屋に入りました。
部屋の床の中央にはすでにボードが広げられています。近くにはボードが入ってたであろう箱があり、デカデカとタイトルが書かれています。
「えーと何々…『新録!転生した先が人生ゲームの世界でマス目の命令に絶対服従なんだが?!』…ねぇ、フランソワ様。前の探偵漫画といいどこでこんな頭の悪いタイトルの物を見つけてくるんですか?」
「え?魔っちゃん経由で。」
「魔王様かぁ。なんかすっごい腑に落ちるなぁ。」
やっぱり変な人のところには変なものが集まるものなのでしょうか…今僕の前でウキウキと二人分のコマの準備を進めているフランソワ様も例外じゃないですよね。
「さぁ!早速始めるわよ!どっちが先行にする?」
「フランソワ様からでいいですよ。マスにどんなことが書いてあるか見ておきたいんです。」
「よーし、じゃあ行くわよぉ〜。えい!6ね、人生ゲームってルーレットの最大値が10だから6でも素直に喜べないわよね。」
「まぁ人それぞれだと思いますけど、えーと何が書いてあるんだ?『異世界に来て初めて知り合った女の子から一万円もらう。』…え?」
「やったぁ!初っ端から一万ってでかいんじゃないの?!」
「フランソワ様違和感抱いて!こいつ異世界でいきなり女の子からお金むしり取るろくでなしですよ!」
「まぁまぁ文章のアヤでしょ?ほら、奥山さん早くルーレット回して!」
そうかなぁ、まだ始まったばかりだし気にしすぎなのか?嫌な予感がしながらも僕はルーレットを回しました。せめてフランソワ様よりもいい数字…
「うわ!1だ、ついてないなぁ。」
「プププ、そんな調子で私の相手が務まるのかしら?なになに…『道を歩いていたらオークに襲われた!身ぐるみを剥がされてとても辛い…』…ちょっと奥山さん!自分で自分を襲ってどうすんのよ!」
「知らないですよ!しかもこれ命令でもなんでもないよ!ただの日記じゃん!」
何でよりにもよってこのマスに止まっちゃったんだよ僕!一番止まっちゃいけないやつだよ!
うわぁフランソワ様がめっちゃニヤニヤしながらこっち見てる、腹立つなぁ…
「奥山さん勝負は決まったかしら?私はどんどん先を行かせてもらうわね。5ね。1、2、3…『神様からもらっためちゃつよスキルで女の子にモテモテ!近くの村をサクッと救った。報酬10万円貰う』…フーー!どうやら私は異世界で生き抜く才能があるようね!」
「フーー、じゃねぇよ!チクショウ!扱い違いすぎでしょ!僕だって…こい!…げぇまた1ですか?!」
『奴らが憎い…なぜ俺がこんな目に……決めたぞ、俺はオークスレイヤーになる!近くの村で装備一式を買い揃えた。借金5万を負う』
「奥山さん…あなた、自分の種族を殺すことを誓うなんて…なんて数奇な運命を辿っているの?」
「だからなんで?!泥沼じゃん僕の異世界人生!生きていける気がしないよ!」
「さぁじゃんじゃん行くわよ!8!どれどれ…『敵のスキルを吸収する能力で最強に!なんやかんやで20万貰う。』」
「なんやかんやって何だよ!そこ一番大事でしょ人生ゲームにとって!」
クソ!こんな人生ゲーム早く終わらせなきゃ!僕は一番大きい数字が出るように念じながら力強くルーレットを回しました。カラカラと音を立ててルーレットが止まったのは『1』でした。
「呪われてる!呪われてるよこのルーレット!」
「まぁまぁ、何かいいこと書いてあるかもよ。」
「本当ですか?『なんやかんやでオークが絶滅した。だから鎧を脱いで農家としてスローライフを送ろうと思います。』…知らねぇよ!そんな報告どうでもいいからそのなんやかんや言ってくれよ!」
「よかったじゃない、オーク絶滅したんだし。」
「よくないですよ!今の僕ただの無一文の農家ですからね!」
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闇の異世界人生ゲームはその後も続けられたのですが僕はその後『1』の呪いから解放されたもののずっと農家のままで、対象的にフランソワ様はバンバン異世界での覇道を駆け上がり、ゴールした時の僕たちの総資産は、
「僕が5500万ですね。異世界農家って結構儲かるんだ…フランソワ様は?」
「えーっと、討伐クエストとか立てた街の商業施設の収益を含めて6700万ね。フフン!私の勝ちよ!」
あれ?思いのほか差が少ないというか…
「いやー、オプションで女の子たちと色々遊んでたら思いのほかお金減っちゃってたわね。」
「あー、なんか表を見てゴソゴソやってたのはそれだったんですね。もともとどれくらいあったんですか?」
「50兆くらい?」
「むしろどう遊んだらそこまでお金溶かせるんですか!豪遊なんてレベルじゃないよ!はぁ…何でこんな人生ゲーム真面目にやっちゃったんだろ…」
「それはね、あなたが心のどこかで異世界転生を求めているからよ。」
「それ…人生ゲームじゃなくていいですよね?」
この人生ゲームって誰得なんだろう?今度実家に帰ったら昔買った人生ゲームをやり直してみよう。そっちは大丈夫…だよね?




