奥山さん、バトる その3
皆さんこんにちは、奥山です。七罪天対魔王軍選抜組の第2試合がそろそろ始まります。
控え室にはテレビがあり、中継が流れるので観客席に行かなくてもバッチリ試合の様子を確認出来るんです。
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『さぁー!続いてまいります第2試合!七罪天からは憤怒のサマエル!そして魔王軍選抜組からは我らが魔王様です!』
おおおおおおおお!!!!
おぉ、すごい歓声ですね!余りの大きさに控え室までその振動が届いてきます!
『フフフ、呑気な者だな魔王軍の兵士たちは…これから自分達の王が毒で溶かされるというのに…そう思うだろう魔王殿?』
『いや、うちこういう職場だから。』
魔王様…相手が雰囲気出して話しかけてるんだから少しは乗ってあげてもいいじゃないですか…
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「奥山さん、サマエルさんの腕からなんか出てない?びちゃびちゃ出てきててなんか汚いわね。」
「確かサマエルさんは毒使いって聞いたことがありますね。魔王様大丈夫かな?」
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『それでは早速参りましょう!第2試合、サマエルvs魔王様!レディ…ファイ!』
カーンッ!
『さぁ!食らうがいい!我が憤怒の権化たる毒…ペウ!』
開始のゴングが鳴ってサマエルさんが何か言い始めたのですが、次の瞬間には突然奇声を発してその身体が宙高く跳ね上がり、凄まじいスピードで空中で縦回転しています。
『おーっと!これはどういうことだ?いきなりサマエル氏が吹っ飛んだぞぉ!そしてその勢いのまま受け身も取らず地面に激突!…白目です!サマエル氏、白目を向いて仰向けに倒れたまま立ち上がりません!』
一体魔王様は何をしたんだ?!とうの魔王様はサマエルさんが元いた位置に立ちながらあくびをしています。
『えー、皆さん。ただ今撮影班からゴングから鳴った直後のスーパースロウカメラでの映像を受け取りましたので、中継で流したいと思います!』
五部原の言葉の後数秒置いてから控え室のテレビに映像が映し出されました。
映像にはサマエルさんの横からの姿が映されています。
…うわ!びっくりした!スーパースロウにも関わらずものすごい速さで魔王様がサマエルさんの懐に飛び込んできました!
そして魔王様がアッパーカットを繰り出し、顎を打ち抜かれたサマエルさんはそのまま空中に飛んでいきました。どんな威力だよ…
『なんということだー!スーパースロウでもギリギリでしか捉えられないスピード!やはり俺たちの魔王様は半端ないぞぉ!第2試合目も魔王軍の勝利!』
うおおおおおお!!!!
魔王様がバックヤードに下がりながら腕を突き上げると歓声は更に大きくなり、闘技場の熱気はどんどん高まっていっています。
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「ねぇ、奥山さん…」
「なんですかフランソワ様?」
「この大会って…面白い?」
「まぁ…みんな盛り上がってますし…」
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それからも試合も魔王軍の快進撃は止まりませんでした。
第3試合 強欲のマモンVS亜座美様の対決では亜座美様が開幕1秒でマモンさんを火だるまにし、
第4試合 怠惰のベルフェゴールVS雨井博士では雨井博士がよくわからない薬物を投与しようとして、ベルフェゴールさんがその余りの恐怖に気絶。
第5試合 色欲のアスモデウスVSメレ姐さんの対決は相手が女性だというのに一切の手加減なしにメレ姐さんのジャーマン・スープレックスが炸裂。
第6試合 暴食のケルベロスVS蝿谷様という現暴食の罪と元暴食の罪の対決は大きく開かれたケルベロスの口に蝿谷様が何かを放り込んだ瞬間、ケルベロスさんが泡を吹いて倒れてしまいました。あれってやっぱりウン…
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「よーし!やっぱり俺たち最強だな!ほらハイタッチすんぞハイタッチ!」
魔王軍選抜組の控え室はもう祝勝ムードに包まれています。なんならこのハイタッチももう10回くらいやってます。
「魔王様、まだフランソワ様の試合が残ってるんですよ?確かに試合数では勝ってますけど、一応最後まで見届けないと。」
「えー、私の試合やる必要ある?私サーヴァントを育てるために種火を集めなきゃいけないのよ。」
「アプリゲーの方を優先しちゃうなんて、この試合どんだけ興味ないんですか…」
コンコンッ!
僕たちが話していると控え室のドアがノックされました。
「ん?誰だろう。はーい…あ!五部原。どうしたんだよ。」
「あ、奥山。それにみなさんも…お揃いですね。えーとですね、先程七罪天陣営の方から提案がありまして。」
提案?なんだろう、この勝負を無しにするとかかな?こんな一方的な結果だと七罪天の面目丸つぶれだもんなぁ。
「次のルシファーの琉詩緒様とフランソワちゃんの試合で琉詩緒様が勝ったらこの対決、七罪天の勝利にしてほしいそうです。」
「情けないな!プライドとかないの?!そんなの認めるわけ…」
「いいわ、その提案受けてあげる!」
「ちょっと!フランソワ様は黙って!魔王様も何か言ってくださいよ!」
「覚悟を決めたんだなフランソワちゃん。へへ、もうすっかり戦士の目になっちまってやがる…」
「へへ、じゃねえよ!あんたこの大会中のそのテンションなんなんだよ!全然戦士の目じゃないからね?この人10時間ぶっ通しでゲームやってる時もこの目だからね!」
「わかりました。じゃあOKということで相手方にも伝えてまいりますので!」
「え?!ちょっと待て五部原!おい、おーい!!」
行っちゃった…本当に大丈夫かこれ?
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最終試合 傲慢のルシファー 琉詩緒様VS魔王軍選抜組大将フランソワ様の対決。
最後の試合ということで僕たちはみんな観客席に移動し近くで試合を見守ることにしました。
フランソワ様はすでにフィールドに立っているのですが琉詩緒様がまだいませんね?
『琉詩緒様?まだいらっしゃらないのでしょうか?そろそろ試合を始め…な、なんだ?!光の柱が!急に空から闘技場のフィールドに光の柱が現れたぞ!そしてその光の柱の中に誰かいるぞ…琉詩緒様です!なんとド派手な登場でしょうか!』
光の柱は収束していき、琉詩緒様が両手を広げ満足そうな顔でフランソワ様に話しかけました。
「待たせたな人界の姫よ。貴様には煮え湯を飲まされてきた。その雪辱、今ここで晴らさせてもらうぞ!」
「いや、別にいいんだけどね?あなたあの登場するためにどれだけ待たせたと思ってるの?私だけじゃなくて大会の進行も遅らせたのよ?あなたは満足できたかもしれないけどそれで周りにも迷惑かかることくらい自覚出来ないの?」
「フフフ。あ、相変わらず口が達者な娘だことよ。こ、これを見ても同じようなことが言えるかなぁ?!」
琉詩緒様声震えてますよ?でもこれって何だろう…あ!翼だ!琉詩緒様の背中に翼がある!あれは確か前にフランソワ様が千切って僕が燃えるゴミの日に捨てたはずなのに!!
「大変だった…ごみ収集場に電話して探させてもらってなんとか見つけ出し、治癒魔法で元の状態に直すまで本当に長かった…だがこの翼があれば私は無敵だ!死んでもらうぞフランソワ!」
「全く…戦いに挑むに当たって自分を過信することがどれほど致命的か教えてあげるわ。」
『さぁ!両者、そして闘技場のボルテージは最高潮!それでは最終試合!レディ、ファイ!』
カーンッ!
開始のゴングが鳴った瞬間、琉詩緒様は一気に上空に飛び上がりその場で滞空したと思ったら両翼が発光し始めました。
「さぁ喰らえ!お前は飛ばぬだろう?己の無力さを噛み締めながら我が光線で焼け死ぬがいい!」
ズドドドドド!!
『な、何という光線の弾幕だぁ!フィールド中に琉詩緒様による死の雨が降り注いでいます!人間であるフランソワ様に対する攻撃にしてはやりすぎではないかぁ?!』
「フハハハハ!!愉快だ!人間とはかくも無力な生き物か!そもそも前回がまぐれだったのだ!さて、そろそろいいか?」
ひとしきり光線を打ち終えた後、琉詩緒様は再びフィールドに降り立ちました。フランソワ様の様子を確認するためでしょうか。その表情は愉悦に満たされています。しかし…
「ん?いないな…少々やりすぎたか?余としたとこが熱中するあまり死体を蒸発させてしまったようだ。」
琉詩緒様は余程嬉しかったのか、観客席にいる僕たちの方を向いて魔王様に話しかけ始めました。
「どうだ魔王よ!これで我々の勝利だなぁ!そういう約束だものなぁ!おっと、撤回はさせんぞ!…ん?なんだ?何を指差している?」
「ルシファー、後ろ。」
「え?な、何ィィィい?!?フ、フランソワ?!何故だ、何故生きているのだ貴様ぁ!」
「いや、ビームが危なそうだったから控え室に行くための通路に避難してただけなんだけどね。」
「ひ、卑怯だぞ!反則だ!おい実況!これは反則だろう?!」
『うーん、それ人間相手に空から攻撃した琉詩緒様が言います?』
「く、揚げ足をとるようなことを…お、おい!翼から手を離せ!まさかお前また…!」
「言ったでしょう?自分を過信するのは致命的だって。フン!」
ブチィッ!
「ひぎゃぁぁあ!!!また千切った!また余の翼を千切りおったな貴様ぁ!」
「あのまま飛んでれば勝てたのにね、さて…もうわたし達に楯突かないようにちょっとお灸をすえてあげるわ。フランソワ…」
フランソワ様が拳を握りしめ、腰を落としました。完全に仕留めにいってますね。
「ふざけるな…余は…余は負けん!その心臓を抉り出して…」
「昇!竜!けーーーん!!!」
「ゴフゥ…」
フランソワ様の拳は深々と琉詩緒様の腹部に突き刺さりました。琉詩緒様は吹き飛ぶことなくフランソワ様の拳を支えるするようにぐったりと倒れこみました。
『決まったぁぁぁあ!!フランソワちゃんが琉詩緒様をダウンさせた!この試合、フランソワちゃんの勝利!そして七罪天VS魔王軍選抜組の戦いは魔王軍選抜組の全戦全勝です!』
おおおおおおおお!!!!!!
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戦いの後、七罪天の方達は琉詩緒様を担いで退散し、選抜組もすぐに解散となりました。僕とフランソワ様は監禁部屋に一緒に帰っています。
「あのー、フランソワ様。一つ聞いていいですか?」
「何?今日の戦いでの私の類稀なる判断力のことを聞きたいのかしら?」
「いや、ぶっちゃけそれはどうでもいいんですけどね。その両手に持っている大きな翼はなんですか?」
「何って…琉詩緒さんの翼だけど?」
「なんで当たり前でしょ?みたいな言い方してんの?!あんたよく他人の背中に生えてた翼を何の躊躇もなく持ってこれるな!」
「前も言ったけどこの翼の羽ね、埃をすごい吸い付かせるのよ。ちょうどストックがほしいと思ってたのよねぇ。奥山さんも使う?」
「遠慮しときます…」
フランソワ様と琉詩緒様の因縁はまだまだ終わることはない。そう確信した夕暮れ時でした。




