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奥山さん、悟る

皆さんこんばんは奥山です。もう覚えてらっしゃる方もいないとは思うのですがフランソワ様は今日課の夜間ランニングをしています。普段ははちゃめちゃな方ですがこの時だけは真面目に走り、シャワーを浴びて部屋に帰るというサイクルを毎日繰り返されています。


「フランソワ様ー、そろそろおやめになってください。30分以上は走ってますから…フランソワ様?」


どうしたんでしょう。急に走るのをやめてその場で棒立ちになり夜空を見上げています。


「フランソワ様?どうしたんですか?」


「奥山さーん、何かが飛んでるわよー。庭の上をぐるぐる周ってる。」


飛んでる?鳥だろうか…いやでもこの辺りで夜に飛ぶ鳥なんて…違和感を感じながら空を見上げてみると、飛ぶというより大股でピョンピョンと跳ねるように空中を走っている痩せ型のシルエットが見えてきました。


「あー、しまった。今日は早上がりの日だったんだ…フランソワ様すいません!」


「どうしたの?もしかして何か危な…グー…」


僕の言葉を疑問に思って聞き返した時には既にフランソワ様は空から砂をかけられて糸が切れたように倒れこみ眠ってしまいました。

そしてフランソワ様が寝たことを確認したのか空を飛んでいたシルエットは円の描くように下降しながら僕の前に着地しました。


「やれやれ関心せんのう、こんな夜更けまでお嬢を起こしているとは。ちと甘すぎるのではないか、奥山よ。」


「すいません散土(さんと)さん。これでもまだ厳しくしてる方なんですよ?」


僕の前に着地し、寝ているフランソワ様をまじまじと観察しているのはザントマンの散土さん。顎から生えた長く白い髭と肩にかけた大きな袋が特徴的なご老人で、夜中に起きている子供のところに現れては、袋の中の魔法の砂をかけて強制的に眠らせてしまうのです。


「散土さんの砂をかけられると絶対朝まで目が覚めないだよなぁ。シャワーとか着替えどうしよう…」


「んなもん起きてからでええじゃろ。まったく…最近の子供らときたら、やれスマホだのやれゲームだのと夜中まで平気で起きておる。あんなものをやるより、しっかり睡眠を取るべきじゃ。」


「あんなものとは聞き捨てならないわねお爺さん!睡眠時間を削ってまでやる意味がそこにはあるのよ!」


まるで地面にバネ仕掛けでもあったかのように跳ね起きたフランソワ様はそのまま散土さんと対峙しました。


「なに?!ワシの砂をかけられてこんな短時間で起きたじゃと?!」


「知らないのお爺さん。ヲタクはね二次元にハマっていく過程で誰もが魔術耐性を取得するのよ。」


「ないですよ?さも当然かのように嘘つかないでくださいよ。」


「魔術耐性じゃと?!…なるほど、何度も眠らせた子供達が夜中にゲームをするのをやめなかったのはそれが理由なんじゃな?」


「何で信じちゃうの?!それ子供達にもただ寝落ちしたくらいにしか思われてないんですよ!」


まずいなぁ、散土さんって真面目だからあんまり疑うってことをしないんだよなぁ。


「そのヲタクというのはなんじゃ?組織なのか、それとも宗教か何かか?」


「いいえ、組織でも宗教でもない。ヲタクを形作り支えているのは'愛,よ。作品やそれを制作した人々に対する愛がヲタクに魔術をもはねのける力を与えるの。」


「はねのけてないよね?現にあんた砂かけられた瞬間寝ちゃったじゃん!」


「し、信じられん…そのような心情だけでヲタクというのは強くなれるというのか?」


「当たり前よ、愛が深ければ深いほど私達は高みへ登ることが出来る。最終的には大地を割り、海を裂き、空をも翔けるのよ。」


「必要ないですよね?ヲタクとして役に立つ能力を何一つ獲得出来てないですよね?」


「ぬぅ…じゃが良いのか?その愛のせいで貴重な睡眠時間を無くしてしまうぞ?子供は早寝早起きをして健康的な生活を送るべきじゃ!」


なんだろう、散土さんの発言がだんだん保健室の先生みたいになってきたぞ。


「さっきも言ったわ。睡眠時間を削ってまでやる意味があるのだと。それはもうお爺さんにも、当の子供達本人でも止めることは出来ないのよ。」


なんかそれだけ聞くと危ないクスリやってるとしか思えないんだけど…まぁこんな言葉でも散土さんなら信じちゃうんだろうなぁ。


「お、おいそれは大丈夫なのか?中毒症状が出てしまっとるじゃないか。」


「あ、そこは普通なんだ。」


「そんなに警戒しないで?ゲームは悪くないの。ねぇ今度私の部屋で一緒にやってみない?きっと気に入ってもらえると思うの。」


「ふむ、これからヲタク達と対峙する時の対策ができるかもしれんな。ワシが推測するにゲームから特殊な魔力が発生しておるのやもしれん。」


「推測の段階でそこまで至るとは…只者ではないようね。」


「只者というかバカ者というか…もうどうでもいいや。」

=====

翌日


「かぁー!なんじゃい、何で今のコンボで倒しきれんのじゃ!」


「確かそのキャラ今回の調整で弱体化食らってたからね。どうする?このまま格ゲーを続けるか、シャドゥーベースっていうカードゲームやってみる?」


「ほほう、カードゲームとな?いいじゃろう!はよう用意せい!」


朝早くにフランソワ様の監禁部屋に来た散土さんはかれこれ4時間くらいぶっ通しでげーむをしています。


「散土さん、すっかりハマっちゃいましたね…今日の仕事に支障が出なければいいんですけど。」


「仕事?あー、今日は休もう。ゲームを研究するにはまだまだ時間が足りんわい!」


「その調子よ散土さん!今あなたはヲタクの深淵に近づきつつあるのよ!」


「いや、ただの歯止めの効かないダメな大人ですよ…」


人間の方達がゲームにハマるように魔物も例外ではないようです。もしかしたら、ゲームには本当に魔力的なものがあるのかもしれませんね。

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