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奥山さん、加担する

「奥山さん、魔界でもナンパってあるの?」


「ナンパですか?まぁあるっちゃあるんじゃないですかね。と言っても種族同士で結婚することが多いですから、少ないと思いますよ?でも突然どうしたんです?」


「なんかね、SNSのアカウントにDMが届いたのよ。『あんたに興味があるから魔王城に行っていいか?』って。」


「え?なんでフランソワ様が魔王城にいるって知ってるんだ?それヤバイ奴ですよ。返信はしないで無視した方がいいですよ。」


「まぁ普段なら私もそうするんだけど、送って来た人の名前がね。」


「名前?お知り合いとかの名前だったんですか?」


「それがねこの人の名前、バアルだって。」

=====

僕がこの件を幹部の方達に報告すると魔王城は上へ下への大騒ぎになり、幹部達が各所で指示をしながら至る所で歩兵が警戒態勢を取っています。

それほどフランソワ様にメッセージを送ってきたバアル様は恐れられている存在ということです。


「ねぇ奥山さん、みんな慌ててるけどそんなに怖いのバアルさんって。」


「ヤバイなんてもんじゃないですよ!あの方一人だけでも手に負えないほど強いのに、その下に66個も悪魔たちの軍団を抱えてるんですよ?それに相当イカれてるんですよ。」


「おいおい随分な言いようだねぇ、まぁ魔王の手下達にここまで恐れられてるってのはいい気分だがな。」


なんだ?いきなり誰かが話に加わってきたけど姿が見えない。というかフランソワ様のいる監禁部屋の中から声が聞こえたような…


「ここだよここ!なんだよ、天下の魔王城の警備がこの程度なんて悲しくなってくるぜ。」


「奥山さんすごい!猫が喋ってる!しかもなんか偉そうにソファに踏ん反り返ってる!」


猫?なんでこんなところに…まさか!


「確かバアル様って色んな動物に変身できるって聞いたことが…フランソワ様その猫から離れて!」


「すごいフワフワしてる!いい毛並みしてるわね!」


「おいおい嬢ちゃん、俺に触るのは高くつくぜ?」


「いや、緊張感!離れて!とか真剣に言ったのが恥ずかしくなるじゃん!」


小窓から覗くとフランソワ様は何の物怖じもせず部屋にいる灰色の猫を撫でくりまわしています。ここは部屋に入ってやめさせるべきなのでしょうが、ぶっちゃけめっちゃ怖いです。

そんな事を考えながら僕が悩んでいると猫の姿が歪んでいき、銀髪の若い男の人間の姿に変わっていきました。


「ほ、本当に何にでも変身できるんだ。」


「こんなの朝飯前だっつの。いちいち驚いてんじゃねぇよ。さてどうだ嬢ちゃん?俺の人間の姿は?」


「えー、なんかチャラてやだ。さっきの猫の方がよっぽどマシよ。」


「チャラ?!…は、ハハハ。なかなか面白い事言うじゃねぇか!」


「ちょっとフランソワ様煽っちゃダメ!あんた本当に死にますよ!」


僕が足がすくんで動けないのにフランソワ様は何の物怖じもせず正面から向かい合っています。どんだけ肝が太いんですか!


「俺の前に立った奴はどんな奴だろうとビビって逃げ出しちまうんだがなぁ。褒めてやるぜ嬢ちゃん。」


「出た出た自惚れ俺つよアピール。そういうのいいから早くここにきた用件を言いなさいよ。あなたこのままじゃ女の子の部屋に不法侵入した変質者よ?」


「なぁもうちょいビビってくんねぇかな!俺これでも悪魔の中じゃかなり恐れられてんだぞ?」


「だからって素直にビビる筋合いはないでしょ?なんか武勇伝の1つでも聞かせてみなさいよ。その話次第で判断してあげるわ。」


「命令してる…フランソワ様、あんたすげぇよ…」


「武勇伝?ふふ、そんなのありすぎて困っちまうなぁ。そうだなぁ最近のって言ったら、おいオーク。お前も知ってるだろ?俺がお前ら魔王軍に喧嘩ふっかけた時だよ。」


あぁ、あの戦いですか。本当に突然でしたね。魔王城にバアル様が率いる軍団が現れて訳のわからないまま戦った感じでした。

何より恐ろしかったのが戦いの最中さらわれた兵士達の死体が目玉を抉られた状態で送られてきたんです。思い出すだけで吐き気がします。


「てことだ。どうだ?人間の嬢ちゃんにはちと刺激が強すぎたか?」


「ありきたりな話ね。そんなのでイかれてるアピールしてるの?それもう色んな作品で使い古されてるわよ?」


「お前本当何言ってんの?!死んだ奴に失礼だろ!」


「すごい、ヤバイ人とヤバイ人が会話すると片方が常識人になるんだ。でもそれが事件起こした張本人なんだよなぁ。」


部屋の中ではバアル様が立ち、フランソワ様が座りながら聞くという最早上下関係が分からない状態になってます。


「そういえばあなたこの間ソロモンさんのとこで騒動起こしてたわよね。なんで?」


「なんでだと?ソロモンの野郎がレメゲトンを無くしたってアガレスが言うもんで、面白そうだからやったんだ。まぁ俺からすれば暴れるのに理由なんざ必要ねぇんだがな。」


「ひー、痒い痒い痒い!あなたいい歳してそんな発言して恥ずかしくないの?その発言が今日イチで怖かったわよ!ね、奥山さん!」


「急に振るのやめてくださいよ!あとバアル様の顔が真っ赤になってますよ!もうやめて差し上げて!」


「はいはい、で?順番めちゃくちゃになったけど何でここに来たの?」


本当にめちゃくちゃな順番だな。そう言えば聞いてなかったっけ?バアル様は恥ずかしさか怒りか分かりませんが震えている身体を落ち着かせて質問に答えました。


「魔王城で人間の女が悠々自適に暮らしてると聞いて興味が湧いてな。どんな女かと思ったが、大した事ねぇな。」


「その大した事ない女にバカにされてる悪魔の大将がいるらしいわよ?」


「フランソワ様、自分で発言させといて煽ってくのは悪質ですよ。」


「……」


あ、バアル様が完全に黙っちゃいました。これ完全にキレたんじゃ?


「クソガキが…こっちが大人しくしてりゃ好き放題言いやがって!ちょっと痛い目見せた方がいいみてぇだなぁ!」


まずい!こんな狭い空間でバアル様が魔力を解放したらいくらフランソワ様でも無事じゃ済まないぞ!


「フランソワ様、今ドアを開けますから早くこちら…に?」


「グェ…ギ…は、離し…て…ウッ…」


僕がドアを開けた時にはすでにフランソワ様が身長差を利用してバアル様にぶら下がるようにしてチョークスリーパーをかけて気絶させていました。あれなかなか解けないんですよね。


「ふー、危なかったわ。ここで暴れられたらPCとかゲーム機とか色々ダメになっちゃうから焦ったわよ。」


「うわぁ泡吹いてますよ。どんだけキツく締められたんだろう?…何でバアル様の携帯いじってるんですかフランソワ様?」


「こいつのオンラインID調べてるのよ。魔王城の人が酷い目にあったんでしょ?ちょっと仕返ししてやりましょうよ。例えば通販でシャレにならない額の商品注文するとかね。」


またこの姫様はエグいことを…普段なら僕はこういう行為は止めるんですよ?でも今回は相手がバアル様ですからねぇ、


「フランソワ様。おいたは程々に、ですよ?」

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