奥山さん、察知する
皆さんお疲れ様です、奥山です。今は深夜の監視業務の最中なのですが実は滅茶苦茶眠いです。
お昼ご飯を食べた後いつも仮眠をとるのですが今日はなんだか眠くならなくて起きていたツケが回ってきたようですね。
「やばい…油断したらその瞬間に寝ちゃうくらいの眠気だ。そうだフランソワ様と話せば少しは目がさめるかも!フランソワ様ー。」
部屋に向かって呼びかけてみたのですが返答がありません。寝てしまったのでしょうか?普段ならこの時間は起きているはずなのですが。
「フランソワ様?もう寝ちゃったんですかー?」
「うーん…どうしたの奥山さん?用があるなら明日にしてくれない?私今日はもう眠いの…」
「あ、寝てたんですね。すいませんおやすみなさい。」
フランソワ様の本当に眠たそうな声を聞いて僕はすぐさま部屋に背を向けました。
「本当に寝てたんだ、珍しいなぁ。でもどうしよう、これじゃ眼を覚ます手段がもう…」
「どうしたの奥山さん、独り言なんて言っちゃって。」
「え?フランソワ様?なんで部屋の外にいるんです?!」
「なんでって、トイレに行ってたのよ。奥山さんも分かりましたって言ってたじゃない。だいぶウトウトしてたけど。」
「…一回部屋に戻ったりとかは?」
「ないわよ?だって入り口ここしかないし。」
……すっごく目が覚めました。
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朝の7時半。僕の監視業務の開始時間、そしてフランソワ様の起床時間でもあります。
ギーギュルゲルギュルボシュボーシュピーピーピロピロピロ カチッ!
「あー、よく寝た!おはよう奥山さん。今日もいい朝ね!」
「あのフランソワ様?前から言おうと思ってたんですけど、その目覚まし時計の音なんとかかならないんですか?」
「これ?どんなに疲れて寝てても一発で起きられる音声だって雨井博士がくれたんだけど本当によく起きれるのよ!何か変?」
「全部変ですよ!全体的に音が汚いし、最後の方の音声とかFAXが届いた時と同じ音じゃないですか!よくそれで毎朝起きられますね。」
「え?魔界ではこれが一般的だって雨井さんが言ってたわよ?」
「な訳ないでしょ!よく信じたなそんな情報!とりあえずその時計は僕が預かりますから、これからは別の奴を使ってください。」
「えー、お気に入りだったのにぃ。まぁ替えはあるからそれを使うわ。」
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グギュ、グギュ、ギュゴゴゴゴゴ…チュギギギギ…カチッ!
「うーん!なんて爽やかな朝なのかしら!気持ちのいい目覚めね奥山さん!」
「どこがだよ!早朝になんちゅうおぞましい音出してんですか!しかも昨日のよりなんか音が汚いんですけど?!」
「この音声はね『魔っちゃんが極度にお腹が減っている時に鳴る、まるで魔蟲の鳴き声のようなお腹の音』ですって。」
何故魔王様のお腹の音を録音してあるんだろう…雨井博士って普段暇なのかな?
「ちなみにこれを作ったのは魔っちゃんよ。」
「あの魔王何やってんの?!こんな音声作って女の子に渡すとかただの変態だよ!」
「でも魔っちゃんはこれは魔王城ではポピュラーな音だって。」
「だから信じちゃダメだってば!言うにしてももっとマシな嘘思いつかなかったのかよ!」
予想した通り、フランソワ様の部屋にはロクな目覚まし時計がありませんでした。でも大丈夫!僕にはちゃんとした解決策があるんです。
「フランソワ様、昨日仕事終わりに目覚まし時計を買ってきたんですよ。一般的な普通な目覚まし時計です!それは預かりますから、今日からこれを使ってください!」
「あらこれってプレゼントかしら!奥山さん、私はこれくらいでなびく女じゃないわよ?」
「むしろ目覚まし時計でなびいてたらヤバイ気がしますけどね…」
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ヂリリリ…ヂリリリ…ヂリリリ…
今は朝の8時なんですがフランソワ様は一向に起きる気配がありません。僕自身の30分も同じ音を聞かされて頭がおかしくなりそうです。
「まさか…」
カチッ!ギーギュルゲルギュルボシュボーシュピーピーピロピロピロ
「ふぁぁあ…おはよう奥山さん。あら、今日は少し寝すぎたみたいね。」
「なんでこんな気持ち悪い音の方で目が覚めるんですか…僕医学の知識ないですけど、この音たぶん身体に悪いですよ?」
「そんなことないわよ。起きるときにその音を聞くとフワッとしてとっても幸せな気分になるの。」
「ダメな奴じゃん!もう絶対鳴らしませんからねこの時計!」
「おーい奥山、フランソワちゃーん。」
階段の方を見るとこのおぞましい音声を作った張本人の雨井博士が手を振りながら上がってきていました。
「あ!ちょっと雨井博士!なんて気持ち悪い目覚まし時計作ってんですか?!」
「おぉ、すまんかった。実は間違って違うものをフランソワちゃんに渡してしまってのう。」
「間違ったもの?目覚まし時計じゃないんですか?」
「あぁそれはのう、時計の形をした音響兵器で、その音を1分と聞き続けた者はたちまち発狂して死んでしまうんじゃ。」
「あっぶねぇなおい!一歩間違えたら僕たち朝日とともに死んじゃうところでしたよ!」
「なるほど、妙に頭がキリッとすると思ったらそういうことだったのね。なかなかスリリングな起床だったわ。ありがとう雨井さん。」
「どういたしまして、楽しんでもらえてよかったわい。」
「どうしてお礼を言いあえるの?!え?僕が間違ってんの?」
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その後代わりの目覚まし時計をフランソワ様に渡し、雨井博士は去っていきました。
「まさか発狂する音声だったなんて、今回は奥山さんに助けられたわね。」
「助けた…んですかね?ていうかその目覚まし時計は大丈夫なんですか?鳴らしてみてくださいよ。」
「雨井さんは安らぎの極地を目指した音声って言ってたわ。聞いてみましょうか。」
カチッ! シャーーー、シャンカシャンカシャンカシューーピーピーピロピロピロ…
「どう思う奥山さん?」
「…没収!」




