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奥山さん、理解出来ない

皆さんお疲れ様です奥山です。今日もいつもと変わらぬ監視業務に勤しんでいるのですが1つだけ気が重くなるような用事が出来てしまったのです。


「それでは行きましょうかフランソワ様。はぁ…」


「珍しいわよね、奥山さんから私を連れ出すなんて。ため息までついちゃって…もしかして幹部からの呼び出しとか?」


「どうして…知ってるんです?」


「あら、勘で言ったけど本当にそうなのね。でもそんなにテンション下がってるってことはよっぽど嫌な人なのね。」


「嫌というか…僕あの人のテンションについていけないんですよ…」


「…?」


今から会いに行くお方はなんと言いますかもう本当に濃いというか、曲者揃いの魔王城の中でも異彩を放っているというか…

=====

僕たちが訪れたのは魔王城の地下にある幹部の方の自室です。ここにいるのです、魔物の魔を更に掘り下げたような魔が。


「…よし、いくぞ。阿土(あど)様!フランソワ様をお連れしました。」


「あら、そうこんな時間!いいわよぉ〜。早く入ってきてちょうだい!」


「ん?奥山さん今から会う人ってもしかして…」


やはり速攻で気づきましたか…ならもう当たって砕けろだ!僕はドアを押す腕に力を入れ、意を決して部屋に踏み込みました。


「あらぁ本当に来てくれたのねフランちゃん!やだ間近で見るとお肌ピチピチじゃない!あ、ごめんなさい興奮しちゃって。アタシはアドラメレクのMERE。気軽にメレ姐さんって呼んでね!…それと…」

バチンッ!


「ブホォ!な、何故振り向き様にビンタを…」


「奥山ちゃぁん、何回言えばわかるの?アタシはMEREよ?阿土なんてダサい本名で呼んでんじゃないわよ!」


皆さんには教えておいた方が良さそうですね。この方は魔王軍幹部の阿土(あど)さん、改めて魔王様専属の衣装係のMEREさんです。

元は前魔王の佐竹さんの専属だった方で今は催事における現魔王様や時々幹部の方々の衣装全てを統括していらっしゃいます。…ここまでなら、ここまでならいいのですが…


「よろしくメレ姐さん!すごいわ。魔物にもオネェっているものなのね。」


「そりゃいるわよぉ〜。魔物はね強かじゃないとのし上がっていけないの。でものし上がるにしても自分の好きなことをしていきたいじゃない?だから私はオネェ、そしてファッションデザイナーの道を選んだわけよ。」


「でも阿土さん、いい加減可愛い女の子見つけて着せ替え人形にするのは…」

バチンッ!


「失礼ね!これにはちゃんと意味があるんだから!」


「じゃあそう言ってくださいよ!何で先にビンタが出るの!」


すぐ手が出るのもそうですが、メレ姐さんには困った趣味があるのです。気に入った可愛い女の子を捕まえては自分のデザインした服を着せて感想を聞いてくるのです。

誘われた女の子は自分がファッションモデルになるということで最初は喜ぶのですが、ひどい時には一日中拘束されることもありメレ姐さんの部屋に入った子は種族関係なくゾンビのようになって出てくると言われています。


「というわけで!早速着て欲しい服があるのよ。まずはこのセーターとスカートよ!かなりの自信作なの、さぁフランちゃん試着室へGO GO GO!」


「覚悟してねメレ姐さん。私、ファッションにはちょっとうるさいわよ?」


あぁ今日は楽しみにしてた番組があったのに…録画予約してないんだよなぁ…

=====

「着替え終わったわよー。」


「はーい、早く見せてちょうだい!」


よくよく考えるといつも着てるワンピース以外を着たフランソワ様って新鮮だなぁ。そう思っていると試着室のカーテンがシャッと開き、


「やぁだ!超似合ってるじゃな〜い!やっぱりアタシの目に狂いはなかったわ!どう思う奥山?」


「確かに綺麗ですね。中身もこれくらい綺麗ならよかっ…」

バチンッ!


「何言ってんの!中身が汚れてる子にアタシの服が似合うわけないでしょ!」


「だからビンタする必要ないでしょ!あんた手がデカいから顔の半分持ってかれるんだよ!」


「全く、これだから歩兵は…どうフランちゃん?是非意見を聞かせて!」


「うん、いいわね。あのーこの上に着てるやつとかあったかいし。」


薄いな!ファッションにうるさいとか言っときながら感想ペラペラじゃん!ヤバイよメレ姐さんブチ切れるよ!


「フランちゃん!気づいてくれたのね!アタシがその服に込めたメッセージに!」


「嘘でしょ、合ってるの?!メッセージの意味知ってます?!」


僕にはわからない何かがファッションの世界にはあるのでしょうか、フランソワ様の感想を聞いた後、メレ姐さんは顔をツヤツヤさせながら次の服を持ってきました。


「次はこの黒のワンピースよ。いつもの質素な白いワンピースじゃフランちゃんの魅力を活かしきれないわ。それにフランちゃんにはきっと黒が似合うと思うの!」


「メレ姐さんいいの?私の色気で床がビチャビチャになっちゃうわよ?」


「え?色気って液体なんですか?」

=====

シャッ!


「どうかしらメレ姐さん、奥山さん!」


「ほらやっぱり!よく似合ってるわフランちゃん!今のあなた、抜群にセクシーよ!どう思う奥山?」


「すごいですね!色を変えるだけでこんなイメージが変わる…」

バチンッ!


「何でだよ!ちゃんと褒めたじゃん!あんたもう僕を殴りたいだけだろ!」


ダメだ、このままメレ姐さんの近くにいると僕の顔面のバランスがおかしいことになる!


「フランちゃん気に入ってくれたかしら?」


「そうねぇ〜、やっぱりね、女は…あれよね」


「そう!あれなのよ!」


どれなんだよ。もうついていけないよ、本当にどうしよう…

=====

「いやー!ありがとうフランちゃん!やっぱり綺麗な女の子に服着せるのっていいわー。創作意欲が刺激されるわね!今日着てくれた服は全部あげるわ!あなたに着てもらえたら服達も幸せよ!」


「いいの?!こんなに可愛い服をくれるなんて優しいわねメレ姐さん!またいつでも呼んで!喜んでモデルを引き受けるわ!」


「やめて!その度に僕がビンタされちゃう!」


適当に挨拶を済ませて部屋を出れたのは5時間後でした、僕は大量の衣服を抱えてフランソワ様と階段を上って行きました。


「疲れた…それにお、重い…さすがにこの量はきついですよ…でも良かったですねフランソワ様。綺麗な服がこんなに手に入って。」


「うーんそうでもないかなぁ。」


「え?何でですか?!」


「よく考えてみて奥山さん。普段私は部屋でゲームやアニメを見てるのよ?そんなことするのにいちいちおめかししないわよ。ジャージで十分。」


「確かに…」


僕が今日喰らったビンタは何だったんでしょう…服の重さがそのままメレ姐さんへの同情に繋がっていくように感じた奥山でした。


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