奥山さん、困惑する
「奥山さんは異世界転生しないの?」
「いや、そんなコンビニ行くみたいな感覚でするもんじゃないでしょ!」
「でももし出来たら特典がすごいのよ?ドチャクソ強い能力が手に入ったり、女の子に無条件でモテモテになったり、ちょっといいことすればすぐチヤホヤされるようになるらしいわよ?」
「なんかインチキ商品の広告みたいですね…ていうか、異世界に転生する条件って何なんですか?」
「死ぬ。」
「ハードル高すぎでしょ!自分の命をそんな'たられば,の出来事にかけるほど僕主人公気質じゃないんで。」
あれ?もしかして僕遠回しに死ねって言われてたのかな?だとしたらフランソワ様が相当陰湿な悪口言ったことになるぞ。フランソワ様に限ってそんなこと…あるな。この人なら言う。
「じゃあ今から異世界転生ごっこしましょうよ!そしたら奥山さんも異世界転生に興味が出るわよ!」
「異世界転生ごっこ?あの、どんなことをするのかまるでわからないんですが。」
「簡単よ、いい?今から私が物を落とすから奥山さんはそれを拾って。そしたら私が奥山さんを好きになるから。」
その程度で好きになっちゃうの?異世界の女の子たち絶対将来苦労するよ!
「それじゃあ早速スタートよ!」
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ゴトッ…
「あらいけない!私ったらうっかりお気に入りのアニメBlu-ray全巻セットを落としてしまったわ!誰か拾ってくれる殿方はいらっしゃらないかしら?」
うわぁ、話しかけたくないなぁ。なんでプライベートでBlu-rayの全巻セットを持ち歩いてんだよ。
「お、お嬢さん大丈夫ですか?Blu-rayはデリケートですから気をつけた方がいいですよ。」
「なんてお優しいの!好き!つきあって!」
「…」
「…」
「どう?異世界行きたい?」
「Blu-rayを落とす子がいる異世界だけは絶対行きたくないと思いました。」
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「うーん、奥山さんは女の子にモテるのには興味はないのね。」
「違いますよ?Blu-rayを日常的に持ち歩いてる変人が嫌なんです。」
異世界に行った人達って大変だよなぁ。だってあんな人達に無条件で近寄られちゃうんでしょ?いや、これはただフランソワ様の認識がおかしいのか?
「じゃあこういうのはどう奥山さん。奥山さんは不慮の事故で死んじゃった。で気がつくと謎の空間で神様と出会い、めちゃつよスキルを手に入れる、どう?」
「どうと言われましても…まぁさっきよりは良さそうですけど。」
「じゃあ決まり!私が神様で奥山さんはタンスの角でなんやかんやあって死んだ人ね!」
「どうしよう、死因が気になりすぎて集中出来ない!」
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「う、うぅ。ここは一体どこなんだ。」
あ、これダメだ。恥ずかしさで死にそう。いやもう死んでるのか。訳わかんなくなってきたぞ。
「ファーファーファー、目覚めたかね奥山くん。」
「あ、あなたは?!」
「レンタルビデオ屋に行ってきた帰りのおっさんじゃ。」
「なんでいるんだよ!帰ってビデオ見ててくれよ!」
「冗談じゃよ、ワシは神じゃ。不運にもタンスの角でなんやかんやなっちゃった君には特別にスキルを授けてやるぞい。」
「本当ですか?なんだかツッコミたいことは色々ありますけどどんなスキルがあるんですか?」
「うむ、今君に授けられるのは[全身の無駄毛を除去出来る能力] [忘れ物をしなくなる能力] [毎食のおかずがピザになる能力]じゃ。」
「最後の1つだけ無駄に重いのはなんでなの?!他は完全に自己管理でどうにかなるやつでしょ!」
フランソワ様は一体どんなものに触発されてるんでしょうか。一向に異世界というもののイメージが掴めません。
「むー、奥山くんはワガママじゃのう。よしじゃあそんな君にとっておきの武器をあげよう!」
「あ、武器とかもあるんですね。そういうものの方がしっくりくるかも。見せてもらえますか?」
「勿論じゃとも!ほれ、これがワシの持っておる最強の武器[槍かと言われればそうではなく、切れ味はどうかと聞かれれば鈍器程度にはある何か]じゃ!」
「とどのつまりただの棒じゃねーか!何かとか言って濁してんじゃないよ!こんなのそこらの公園で拾えるでしょうが!」
「なんじゃい生意気なクソガキめ!これはさっきワシの家の裏庭から拾ってきたばかりなんじゃぞ!」
「やっぱ棒じゃん!よくそんなのを最強とか言えたな!」
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異世界転生ごっこはひとまず中止になりました。というか始まってたかすら怪しいのですが…
「ダメかぁ、異世界転生って思いのほか難しいのね。」
「難易度の問題なんですかね?フランソワ様の考えてる異世界ってもうその存在がバグみたいになってましたけど。」
そもそも転生とまでは言わないまでも人間界から魔界に来てるんだからフランソワ様もそれなりの体験してるはずなんですけど…
「あの、フランソワ様。フランソワ様は今魔界に来てますよね。これって人間からしたら十分異世界に来てるってことになるんじゃないですか?」
「どうかしらねぇ。考え方によってはそうなるのかしら。こっちに来てからPC環境とかすごい良くなったしねぇ。」
「生々しいなぁ…フランソワ様にはないんですか?こんな能力が欲しいとか色んな人に好かれるようになりたいとか。」
「あるに決まってるじゃない!最近の主人公はまず異世界に転生することが第一条件なんだからバッチリ妄想は済ませてあるわ!」
この発言にほんの一瞬頼もしさを覚えたあたり僕はもうダメなようです。もう流れに身を任せましょう。
「じゃあフランソワ様はどんな風な能力が欲しくてどんな風にモテたいと思ってるんですか?」
「決まってるわ、無限に金を生成できる能力で大富豪になり数々の美女達をたらしこむのよ!」
「モテてないよね?!もしモテたとしてもこれほど悲しい愛はないですよ!」
「でも無限に金が作れるのよ?働かなくていいのよ?」
「せっかく異世界で能力を得られるんですからもっとこう、カッコよく敵を倒せるような奴の方がいいですよ。それで女の子を助ければモテモテにもなるでしょ?」
「奥山さん…そんなことで好きになる程恋は甘くないの。女を舐めないでもらいたいわね。」
Blu-rayを拾ってもらって恋に落ちる女を演じた奴が何を言ってるんでしょうか。
「でもそうねえ、あえて選ぶなら毒かしら。嫌な奴とか倒したい奴の寝室とかに無臭の毒霧を充満させて暗殺とかしてみたい!」
「してみたい!とか明るく語るような内容じゃないでしょ?!あと全然かっこよくないよ生々しいんだよあんたの妄想!」
「まああれよね。転生には向いてる人と向いてない人がいるってことじゃない?」
「僕ら二人とも向いてないからこんな不毛なやり取りをしちゃってるんですかね…」
異世界に転生した皆さんは一体どのように過ごしてらっしゃるのでしょうか?まるで物語の主人公のような能力を手に入れ、女の子に囲まれて華やかな生活を送られてるんですかね?
もし街中でBlu-rayを落とす女の子が居ても話しかけない方が気をつけてくださいね。その子は多分魔王城でくつろぐくらいヤバい子なので




