第5章 「紫禁城に立つ特命遊撃士」
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「AInova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
そうして政府専用機から公用車に乗り換えてしばらくすれば、明代から続く悠久の歴史を誇る紫禁城の威容が私達を迎えてくれたんだ。
この威風堂々と聳える壮麗にして絢爛な紫禁城こそが、我が主君であらせられる愛新覚羅麗蘭第一王女殿下とその母君にして今上の君主であらせられる愛新覚羅芳蘭女王陛下のいらっしゃる王城なのだ。
そう考えると、自ずと背筋が伸びてしまったよ。
こういう事になると分かっていたなら、巴図魯に任じられた時に一緒に叙勲した双龍宝星勲章も持ってきた方がより礼を示す事が出来たかも知れないね。
あの式典での私の役割は護衛だった訳だし、不穏分子の掃討の際に勲章を破損しては殿下に申し訳が立たない。
それらの止むを得ない事情はあったし、王女殿下や和碩親王殿下がそのような事を云々仰るような狭量な御方ではない事は分かっていたけどね。
そうした反省や気づきは、次回に活かしていけば良いのだよ。
そして折り目正しく漢服を着こなした美人の女官さんに案内された宮中は、外観にも増して素晴らしかったんだ。
「こちらで御座います、吹田千里少佐。」
「有難う御座います、夏侯女士。おおっ、これは…」
もう思わず感嘆のうめき声を出しちゃったくらいだよ。
上品で壮麗な中華式の建築様式は叙勲式の際に訪れた在日大使館のそれと同系統ではあるものの、歴史の重みに裏打ちされた風格と趣は大使館のそれを遥かに凌ぐ圧倒的な物だったの。
行き交う文武百官や女官達も堂々としていて威厳に満ちており、ここが中華王朝を統べる王城である事を否応なしに実感させられるよ。
だけど不思議だったのは、伝統と格式に裏打ちされた威厳に満ちた空間であるはずなのに、私にとっては少しも威圧的に感じられなかった事なの。
それどころか初めて足を踏み入れたにも関わらず、不思議な程に居心地が良くて親しみ深く感じられたんだ。
それをお伺いした所、永祥和碩親王殿下はこのように仰っていたんだ。
「それは吹田千里少佐が、この紫禁城に相応しい方だからですよ。貴女は我が中華王朝の準貴族である巴図魯の称号を持つだけではなく、私と麗蘭第一王女殿下の救い主でもある。それに貴女は我が国の忠臣として、既に報国寺の昭忠祠に祀られているのですから。」
「おお、何と…和碩親王殿下、それは誠に名誉な事で御座います。」
後に日本へ帰国するタイミングで西城区の報国寺を参詣する形で確認したんだけど、中華王朝やその前身である大清帝国の為に活躍した烈士や義士の中に「吹田千里巴図魯」の名前が並んでいたのを見た時には感涙ものだったよ。
それは私が忠勇義烈の志士として中華王朝に認められ、その数千年の歴史の一部になったという事なのだからね。
太祖の側近として初期の清朝を支えられた范文程や、エヴェンキ族の名将として数多の戦闘で類稀なる武勲を立てられた海蘭察。
こうした綺羅星の如き名だたる先人達に後れを取らない名実共に立派な忠臣になるべく、私も一層に頑張らなくてはいけないね。
忠臣としての武勲を正しく評価され、歴史に名を刻む偉人の仲間入りを果たす事が出来た。
この事実は私の行動指針にも大きな影響を与える事になるんだけど、まずは宮中での出来事に触れなくてはならないね。
紫禁城の宮中に入城出来ただけでも光栄な事だというのに、何と愛新覚羅永祥殿下と侍従の皆さんはその深奥である内廷に私を案内して下さったんだ。
「宜しいのですか、ここは王室の方々の為の内廷だとお伺い致しましたが…?」
流石の私も畏れ多くなって、思わず確認させて頂いたよ。
「勿論ですとも、巴図魯殿。それに相応しい武功を、貴殿は成し遂げられたのですから。」
「次期天子の麗蘭第一王女殿下と私の生命を、貴女は救って下さいました。一度目は影武者として、そして今回は『勇者』の称号を持つ準貴族の巴図魯として。そんな功臣である貴女の忠義と武勇に、我々王族としても報いたいと存じます。」
殿下と侍従の皆さんの御言葉に、私はますます背筋が伸びる思いだったよ。




