第1章 「和碩親王護衛任務、決戦の地は長崎だ!」
挿絵の画像を生成する際には「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
こうした具合に、巴図魯の爵位を叙勲してからの私は今までとは比べ物にならない程に注目されるようになったんだ。
そんな巴図魯の爵位を叙勲してからの私が立てた直近の功績で忘れちゃいけないのが、長崎で行われた日中友好式典への出席とそこでの凶賊撃退だね。
何しろ長崎は日本が鎖国していた江戸時代でも中華王朝の前身である大清帝国との交易の行われていた港町だから、堺や神戸に負けず劣らずで中華王朝との共催イベントや国際的な式典が多いんだよ。
そして当然ながら、それを狙うテロリストもまた存在するって訳だね。
この時の式典では中華王朝の王室メンバーの中でも若手実力者と名高い和碩親王の愛新覚羅永祥殿下も参列が予定されていたから、殿下の暗殺計画を防ぐのは最重要課題だったの。
そこで巴図魯である私に、護衛役としての白羽の矢が立ったって訳。
伝令を受けて支局長室へ出頭した私に理由が伝えられた時には、「ああ、成る程なぁ…」と実感した次第だよ。
「何しろ吹田千里少佐は日本人初の巴図魯ですからね。殿下を至近距離で護衛するには最適です。それにテロリストも殿下と少佐のどちらを先に狙うかで判断を迷うでしょう。そこに隙が生まれます。」
上官殿であらせられる明王院ユリカ大佐の御説明には、確かに筋が通っていたね。
そりゃ本物の王族じゃないにしても、私だって中華王朝の準貴族だもん。
仮に首尾良く討ち取る事が出来たなら、中華王朝の現政権に敵意を抱いているマルクス主義者の残党共としてはこれ以上ない戦果だろうね。
まあ、私の首はそんなに安くはないんだけど。
「左様で御座いますか、明王院ユリカ大佐。それは確かに、小職にしか務まらない任務でありますね。」
この支局長室に出頭した時にかけられた御言葉を反芻しながら、私は自身に寄せられている期待と担っている責任の大きさを改めて実感したんだ。
吹田千里少佐だからこそ、任せられる。
改めて考えてみれば、私もこの殺し文句に自尊心と使命感を刺激されて今まで色んな特別任務に赴いてきたよね。
摘発を逃れて市井に潜伏したテロリストやカルト教団の暗殺に愛新覚羅麗蘭第一王女殿下の影武者に扮しての敵拠点への潜入と破壊工作、そして今回における愛新覚羅永祥和碩親王殿下の護衛。
どれもこれも重要な特別任務である事には変わりないけど、私に求められる要素は全部違っているんだから奥深いよ。
暗殺任務の場合は射撃の技量が問われたけど、EMプロジェクトにおける影武者任務では愛新覚羅麗蘭第一王女殿下に瓜二つの容姿、そして今回の護衛任務では巴図魯という式典に参列するに値する高貴な身分でしょ。
このような任務が出来るようになったのも、全てはEMプロジェクトの影武者任務を成功させて巴図魯という高貴な地位に就けたからこそ。
それを思うと、我が主君である愛新覚羅麗蘭第一王女殿下への感謝の思いと忠誠心が一層に深まるって物だよ。
だけど式典会場にレーザーライフルを持ち込めないのには参っちゃったね。
そりゃ式典にレーザーライフルなんて持ち込んだら威圧的過ぎるって事は、私にも分かるけど。
だから巴図魯としての嗜みとして太極扇と鉄扇術を学んでおいたのは、私としても正解だったよ。
扇子なら式典会場に持ち込んでも全くおかしくないし、頑丈な鉄扇が護身用の武器として優秀なのは新選組の初代筆頭局長だった芹沢鴨が証明してくれているからね。
これは念には念を入れてという保険だけど、自動拳銃も満洲服の懐へ忍ばせる事に決めたよ。
使わないで済むのならばそれに越した事はないんだけど、万全を期すのは公安職として当然の話じゃない?
「そうなりますと…式典時の小職の護衛につきましても、人選には留意する必要が御座いますね?」
「その通りです、吹田千里少佐。少佐のレーザーライフルと同様、サイズの大きな個人兵装は友好式典において威圧的な印象を与えかねませんからね。」
要するに、レーザーランスを用いる生駒英里奈少佐や合体式個人兵装のガンブレードランサーを二人で運用している神楽岡葵少佐とフレイア・ブリュンヒルデ少佐は護衛として随伴させられないって事。
そりゃ私だって個人兵装のレーザーライフルを置いていく選択はしたけど、流石に護衛役の子達にまで普段と違う武装を強いるのは不確定要素が多過ぎるからね。
そうなると護衛役として随伴させる人員は、必然的に絞られてくるよ。
要するに、遊撃服の内側に忍ばせて携行出来るようなコンパクトな個人兵装を選んだ特命遊撃士だね。
その辺は私なりに心当たりはあるから、心配はいらないんだけど。
古人曰く、「人事を尽くして天命を待つ」。
神頼みする気なんて更々無いんだけど、やれるだけの事は準備しておかなくちゃいけない。
それは人様の生命を預かる公安職なら、当然至極の事だよ。




