第7章 「主君より授かりし新たなる使命」
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「AInova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
そんな想像に耽る私を現実に引き戻したのは、麗蘭第一王女殿下の御質問だったんだ。
「ところで吹田千里少佐よ。こうして貴公は我が中華王朝とその前身である大清帝国の歴史において史上初となる日本人の巴図魯となった訳じゃが、それは貴公の身にどのような変化をもたらしたのか…それを妾と和碩親王殿下に聞かせては貰えまいか?」
要するに麗蘭第一王女殿下は、「巴図魯となってからどのように過ごしており、また今後どのように生きていこうと考えているのか?」という具合に私の所信に御興味を御持ちだった訳だよ。
だから私も、一切の腹蔵なくお伝え申し上げたんだ。
日本人で史上初の巴図魯として殿下にお仕え出来るのは、この上なく誇らしいという事。
この類稀なる栄達を遂げた私だからこそ出来る事や成すべき事が、必ずあるはずだという事。
今の私は人類防衛機構に所属する特命遊撃士にして中華王朝の臣下でもあり、日本と中華王朝という二つの祖国があるという事。
二つの祖国を持つ者として、国家や組織を繋ぐ高レベルな相互安全保障体制の緊密化を成し遂げる為に日本と中華王朝の架け橋となりたい事。
その為に市民講演会で持論を語ったり島之内や元町といった中華コミュニティのイベントに来賓として参加したりして、公務にも力を入れている事。
それら諸々をね。
「そして此度の長崎での式典に付随した席で、さる華僑の重鎮の方よりこのような御声を寄せられました。曰く、『巴図魯殿がいらっしゃると、まるで本物の麗蘭第一王女殿下がこの場にいらっしゃったかのようです。』と。華僑を始めとする中華コミュニティの方々の中には、私を通じて麗蘭第一王女殿下の御威光を感じられているのではないかと…」
「間違いなく、そうした節もあろうな。神戸や長崎や横浜で暮らす華僑や華人が妾を始めとする王室に心を寄せているのは喜ばしい限りじゃが、妾もまた多忙の身。影武者を務め上げられる程に妾に瓜二つの貴公が代行者として華僑を始めとする日本国内の中華コミュニティを訪問してくれるならば、我が国と在日中華コミュニティとはより円満な関係を継続的に維持する事が出来る。それは間違いなく、貴公の目指す所の『日中の架け橋』であろうな。しかし、それでは貴公は再び妾の影を演じる事になるのではないか?貴公はそれに、異存はないのか?ありのままの自分で在りたいとは思わぬのか?」
私の意図する所も、麗蘭第一王女殿下に正確に御理解頂けた。
そして麗蘭第一王女殿下もまた、私を気遣って下さっている。
そのような御優しい御方だからこそ、尽くす甲斐もまたあるというものだ。
「勿論で御座います、愛新覚羅麗蘭第一王女殿下。私がこうして巴図魯という高貴な立場となる事が出来ましたのも、元を辿れば殿下の影としての御役目を全う出来たからこそ。日中友好の架け橋として両国の国益と持続可能性に寄与し、高度な国際安全保障体制を確立して東アジアの安寧に貢献する。その為ならば私は、喜んで殿下の影となる所存に御座います。」
「うむ…よくぞ申してくれた。貴公のような義烈の忠臣が妾の影でいてくれるからこそ、妾は次期天子として光の中で立っていられるのじゃろう…これ、夏侯秀梅!例の品をここに運び給れ!」
そうして麗蘭第一王女殿下の命を受けた侍従が持ってきたのは、蒔絵の施された漆塗りの上品な箱だったの。
この箱だけでも相当な価値があるんじゃないかな。
「さあ、巴図魯殿。こちらをお受け取り下さい…」
何とその中には、翡翠で出来た美しい玉佩が入っていたんだ。
「おお、これは…」
奇麗なドーナツ型をした玉佩を見ていると、「史記」でも語り継がれた和氏の壁を思わず連想してしまうよ。
「これを貴公に下賜しよう。日本人初の巴図魯として、そして妾が初めて任じた日本人の臣下として、今後とも何卒宜しく頼むぞ。」
「有り難き幸せに存じます、愛新覚羅麗蘭第一王女殿下!この吹田千里、殿下の御期待に添えますよう今後とも尽力させて頂く所存に御座います。」
そうして本日二度目となる跪拝の姿勢で、私は主君に改めて忠誠を誓わせて頂いたんだ。
私の双肩に担った使命が、また一つ増えた。
しかしそれは決して、重荷や負担のようなネガティブな物ではない。
それは私を大切に思って下さる高貴な御方との信頼の証であり、これから築いていく歴史の道標でもあるからだ。
そう考えると、こんなにも喜ばしくて誇らしい事はそうそうないよね。




