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超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
2章 狡猾に笑う緑色人――ゴブリン編
32/52

2-17.ライラとハンドック

「先が続いているわ」



 人間一人ぶんしかない穴。そこには、無限に広がる暗闇が広がっていた。

 これなら大丈夫だろう――一行は、中に入る。



「シールド!」


 最後にハンドックが入り口部分を防御魔法で閉ざした。


「ライト」


 リーベがそう口にすると、レイピアの先端に松明ほどの炎が灯る。奥が見えるわけではないけれど、足元を照らすには十分な炎だ。



「ちょっとさみいな」



 後ろのエリスが肩を震わす。

 この洞窟の中は、湿っておりヒンヤリとしていた。ケンイチは、リーベの炎魔法の影響により暖かくなっていたが、後方のエリスたちはそうでもない。見ると、口から吐く息が白い。

 寒さは体力を奪うので長居はできないが、とりあえず少しの休息は得られるだろう。

 奥まで歩いて、歩いて、歩いて、やっと最深部へと到達した。体感的には、5分ちょいと言ったところだろう。



「ここでおしまいね」


 岩壁に触れた彼女が振り返る。

 通路と比べると、最深部は広い。4人が寝っ転がれるほどの十分なスペースができあがっていた。

自然によるものなのか、人為的なものなのか、魔物の影響か、判断はできないが、作戦を立てるための話し合いができそうである。

 ケンイチは、岩壁を背にし、座ったそのとき――


 グシャ。


 何かを潰してしまった。支えにした右手にはべっとりとした液体が付いている。その液体は、ぬめぬめしており臭いを嗅いでみると悪臭がした。例えるなら、たっぷりと牛乳を含んだぞうきんを生乾きしたような臭い。



「最悪だ」


 べっとりついた謎の液体を岩壁へとこすりつけるが、そこにまだ臭いが居座っている。ズボンにも付着してるだろうし、帰ったら早々洗いたい。


「運ないな!」


 隣にいるエリスが腹抱えて大爆笑している。それも穴に響くほどの大きな声で――そこまで笑わなくてもいいんじゃないか。ケンイチは、腹が立ったが今はそんな暇ないし、無視した。



「ハンドックさん、エリスさん。免許証を見せてください」


「んあ、いいけど」


「構わないぞ」



 二人の手に持ったカードを受け取り、凝視する。まず最初確認したのは、エリスだ。ステータスは以下の通り。


 炎……なし 水……なし 雷……C 光……なし 闇……B

 備考:射撃……B



「?」


 ケンイチは、備考に目が付いた。


「射撃……」


 つまり、投擲のことだ。石を投げる、ブーメランを飛ばすなどなど何かを手に持って遠くに投げる行為を彼女が得意という意味になる。どれくらいの魔法が使えるのかわからないが、これは絶対に役に立つ。



「あっ」


 ケンイチは、ひらめいた。

 腰に巻いてあるポーチから1枚の羽を取り出し、彼女が言った言葉を脳内で流した。


〈人を圧死させたり、浮遊させるほどの力はないけどな。身を守る術として使ってくれ〉


 これを元にして考えた場合、グリフォンの羽は殺傷するほどの威力は無いけれど、自分の身を守れるぐらいの攻撃力がある――と考えていいはずだ。ならば、魔法の威力を強化できる、と考えていいのではないか。

 つまり、エリスの射撃スキルを更に上乗せする――みたいな。

 他にもリーベの炎魔法を強化することも可能だろうし、なんだったらこの羽でシールドの使い道を増やすこともできるだろうし――作戦が頭に浮かんでくる。



「よし、エリスさんは射撃で戦いましょう」


「いやいやいやいや。これじゃあやつらを殺せねぇよ。そこまで育ってねぇからな」


「たぶん大丈夫でしょう。作戦があるんで――まぁあとで話しますね」


 とりあえず、現時点でやるべきことは情報収集だ。何ができて何ができないのか――大雑把ではあるが、1つでも多く知りたい。この絶体絶命な状況を生き抜くために、必要なことだ。

 ケンイチは、口を開いた。



「射撃の中で、どういったことができますか?」


「そうだなぁーー……」


 顔を上に向け、数秒間うねったのちにエリスは、ケンイチへと目を向ける。


「ミラーとか」


 なるほど。

 ミラーとは、日本語で直訳するなら鏡になるが、この場合跳ね返しという意味になる。つまり、投げた石を標的から標的にぶつけることが可能で、もし条件が揃えれば威力が増すことになる。まぁその条件というのはまだ解明してないから、そこは考えなくていいだろう。



「他には?」


「他は、カーブ」


 カーブは追尾型の魔法であるが、弱点として威力が弱いのでゴブリンを倒すことはおろか傷つけることも不可能だ。

 作戦には組み込めない。


「…………」


 エリスが少し考えて、何かを思い出したのか口を開いた。



「時間がかかってもいいのなら、シューティング・スターか」


「!?」



 シューティング・スター――それが事実なら相当な戦力になる。

 ケンイチは、身を乗り出した。お尻に粘着質の液体が付着した感覚はするけど、そんなこと気にしない。生き残る可能性があるからだ。



「時間ってどれくらいですか?」


「10秒から15秒ぐらい」


「まぁまぁかかりますね」


 ケンイチは、ゆっくりと腰を落とした。ねっちょりと音を立て、地面に着地する。



 10秒から15秒――少数のゴブリンであれば問題ではないのだが、今回は十数体のゴブリンと相手をするだろう。そんな時間を3人で作れるか。

 否、それはできない。きっとどこかでおこぼれが生まれ、そのおこぼれが動かないエリスへと標的を変える。



「それなら、スモックを使えばいいんじゃないかしら」


 人差し指を突き立てながら、リーベは言った。


「確かに!!」


 ケンイチが同意を示す。

 しかし、エリスは曇った表情で、


「んなことしたら、オレ以外みんな見れなくなるから意味ねぇって」


「そっか」


 リーベが肩を落とし、ケンイチも同じような行動をしつつ口から空気を戻した。

 エリスの話はあとにするとして、今度はハンドックの免許証へと目を向ける。



 炎……なし 水……なし 雷……なし 光……なし 闇……C

 備考:防御魔法……B パワー……B



 パワーとは、単刀直入に言うと力の解放である。人間は脳の制限によって10%しか使えないのが科学の常識とされていた。が、この世界はどうやら取得した魔法によって、その力を開放することが可能となっている。常時ハンドックの体が大きいのがその証拠だ。彼の肉体は、身長を含めケンイチの倍以上あり、節々が幹のように太い。


 これが使えるか――は、わからないが、力があることに悪いことが無いのは事実。

 それに、防御魔法Bはケンイチよりも成長しているし、明らかに彼は上位互換だ。自分の出る幕がないまま全てを収束することが可能かもしれない。

 ……まぁできる限りのことは、したいけれど。



「ありがとうございます」


 そう言って、ハンドックに免許証を返した。彼は受け取るなり、それを鎧の隙間に差し込んだ。


「何かわかったことがあるの?」


 リーベが不安な表情をしている。

 ハンドックとライラの情報を見て、ケンイチは――。


「全くに近いな」


 少しは出て来たけど、全部ではない――まだ確証の域にはったっていなかった。


「あっ」


 言葉が出ないようだ。何かしゃべろうと口をパクパク動かしているだけで、その先がない。



「安心しろって、絶対何か策があるはずなんだ。ゴブリンを倒すための作戦が必ず――」


 この世界に来て約2ヶ月。ケンイチは、いろいろなことをリーベやカヤコ、冒険者協会などで学んできた。いまその受け取った知恵を使うときだ。

 絶対に生きて帰る――ザベス、ロル、カッシャを思い浮かべていた。

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