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超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
2章 狡猾に笑う緑色人――ゴブリン編
27/52

2-12.知識は知識でしかない

ポイントありがとうございます!

「ケンイチ。少しの時間であったが、きみと歩めた道をアタシは光栄に思うよ」



 そう言うと、紫髪の女性が動かなくなった。両膝をつき、頭から落ち、力を無くした肉塊はもう戻らない。


「ざ、ザベスさん!!」


 そこでようやく、絶望を目の当たりにする。

 

「どうして、どうして……」


 彼女の体を仰向けにする。胸に刺された2本の矢と横腹に刺さった3本の矢――この状態で生き残ることはできない。

 呼吸も確認したが、そこに空気が漏れる音は無かった。



「……うそだ」



 絶望の森の中でただ1人、生き残ってしまった。


 なぜ彼女が助けたのか、ケンイチには想像できない。


 彼女は★2冒険者。ケンイチよりも位は上で、経験も豊富なはずだ。生き残るのなら、自分を優先にすべきである。


 にもかかわらず、彼女は助けた。その真意を知ることはもうできない。だけど、繋いでもらったこの命を無駄にしないこと、それがいま理解できる唯一の現状である。

 だが、どうやってここを突破する――人間の体に360度の目はついていないから全てを見ることができない。だが、全てを見る必要はないはずだ。

 咄嗟に自分の背中を木の幹にくっつける。一応、上方にも目を向け、ゴブリンの姿が無い事を目視で確認した。

 シールドで守れるぐらいまで、自身の体を縮こませたる。



「シールド」



 2枚の防御魔法を出現させ、CPUの敵みたいに、一定の速度で一定の距離まで動かした。

 こんなので守れるとは思えないから、少し工夫して変な動きを交えてだが。



「………」



 心配ではあるが、背中は守れているし、体も小さくしている。たぶん大丈夫なはずだ。

 心配しつつ本を開き、ゴブリンのページに目を通す。交尾方法とか、歴史とか書いてあったが、ケンイチが読みたいのは、習性である。彼らがどういった行動をし、どういう正確が多いのか、それが知りたかった。


「………」


 脳内に叩きこむだけだから、熟読なんてしていない。


「なるほど」


 声を漏らした。

 


 オスしか人を襲わない――それは、さっき読んだからわかっていたが、どうやらオスは怠けものらしい。自分の縄張りが荒らされたり、子供が殺されたりすれば復讐の行動をするが、それ以外は怠惰。何もしないし、基本的に遊んでばっかりで、もし相手が勝てると見込めば戦うことを放棄し、その場にいた一番弱いゴブリンに任せるとのこと。

 また、人間を襲う理由はプレゼントの調達のほかに、遊びとしてもあるらしい。どうやら苦しみながら死んでいく人間の姿を見たいがために襲う――とのこと。



 待て……。

 ケンイチはその下に目を向ける。


 弱いゴブリンに人を戦わせる理由――どうやらそれがゴブリンキングになるための条件のようだ。彼らは本能で、選別し、人間の前に出すようだ。ゴブリンキングになる条件は、以下の通り。


 1.オスゴブリンであること。

 2.下から数えたほうがいいほど、貧弱であること。(貧弱であればあるほどなお良し)

 3.しかし健康であること(怪我や病気をしたとしても、だれも看病してくれることなく、そのまま死んでしまうから)

 4.メスからモテないこと。(家族を持ってしまうと、そこでゴブリンは終わるらしい)

 5.人間と戦い沢山の経験値を集めること(これは魔力の吸収に近い)




「ほーん。なるほどなぁ」


ってこの情報で生き残れねぇよ――なんて考えていた矢先、緑の魔物が顔を出す。

見ると、それはゴブリンだ。肩を震わせ、鼻水を垂らし、いかにも弱弱しい全裸のゴブリンが震える手でナイフを構えた。

 彼の後ろにあざ笑うかのように、指をさしている。



「俺を殺して、ゴブリンキングになるってことだな。そうはさせねぇよ」


 ケンイチも立ち上がり、ショートソードを構えた。

 

「きゅ、きゅうーーーー!」


 甲高い声を発し、間髪入れず突っ込んでくる。

 ゴブリンの振り方は荒く、大雑把。上ばかりナイフの攻撃が集中しており、下ががら空きとなっている。

教習の間に剣の振るい方を教えてもらったから、ケンイチは知っていた。これの弱点は——



「下からの切り上げ」



 ナイフでショートソードを弾いた勢いのまま、左斜めに剣を振る。

 竹のように切られた体はパックリと割れた傷が浮かび上がり、血が噴き出した。



「ぎゃーーーー!」



痙攣し、悲鳴をあげながらゴブリンは倒れる。

 撃退した――かに思えたが、しかし、顔をかすめる矢は木の幹に刺さった。

 見ると、前方の3体のゴブリンが弓を構えていた。その中に河川敷に居たあのゴブリンの姿まで。


 情報を仕入れたとして、強くなるわけでもなければ、打開策が閃くわけでもない。知識は知識であるため、活かせる状況で泣ければ本領を発揮しないのだ。



 まずいぞ、これ――それから数も増えていた。ケンイチはショートソードを鞘に抑え、背中を向ける。

 どこにいるのかわからない。しかし、このままとどまっていたら死んでしまう。

 いま死ぬか。後で死ぬか――どうせ死ぬのなら、もう少し長生きしたい。



「………!」

 


 硬直していた体に鞭打って走るケンイチ。彼の背には、先ほどのシールドを張っているので矢による攻撃は防げるだろう。ただ余裕はない。

 対して、ゴブリンは攻撃する側で限りはあるが、余裕はある。涎を垂らし、森の中を駆けるその様は、まるで狩人。ゴブリンは、弓を手にケンイチを追いかけていた。



「捕まったら死ぬぞ」



 ケンイチは村の方向に逃げる事を考えた。だけど、



「そういうわけにはいかねぇよな」



 あの村に居る住民たちにこれ以上の地獄を味わってほしくない。自分が死んで終わるのであればそれでいいのだが、村に逃げてしまえばそうはならないだろう。ユーリ一行とリーベがいるから守れるだろうけど、全てではない。必ず守れるわけではないことを、あの村の状況を見て感じた。

 だから、村からなるべく離れた位置へと走る。とにかく、全速力で足を動かす。



「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」



 肺がズキズキ痛み、口の中に鉄の味が広がる。足がふらつき、倒れそうになるが、木の幹を支えにし自身の体を正常に戻した。

 それでも――限界がくる。



「うわぁ」



 自身の足がもつれ、倒れてしまった。地面を転がり、足をすりむきながら、大木に全身をぶつけた。

 背中の痛みも入り、苦しむ。それでも、どうなっているのか――状況を確認するため、目を開いた。



「………」



 言葉が出ない。ゴブリンは、いたぶるように気持ち悪い目を向けている。

 すぐに殺してくれるとは思えない――きっと、苦しんで殺してくるのだろう。

 恐怖からか、目じりに涙をためたまさにそのとき



「ファイアー・ショット!」



 空から降ってくる火の玉は、数体のゴブリンを焼いた。

 影がかかり、上を向く。太陽を反射しているのか、眩しい光がケンイチの目を傷めて、ついつぶってしまった。


「ごめんなさい。遅くなったわ」


 その声が聞こえたタイミングで、目を開く。

 肩まで伸びた金色の髪。赤い線が入った白の服。右手には、白の輝きをだしたレイピア。


「リーベ!」


 安堵からか、ケンイチは泣いていた。


「そんな泣かないでよ」


 そう言って、彼女は笑う。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ケンイチの工夫が面白くて、ついつい先が気になります。この小説はまるでポテトチップスのようです、一度読み出したら止まらない。 リーベはヒーロのようで、「遅くなった」展開も自然で良いと思いま…
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