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超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
2章 狡猾に笑う緑色人――ゴブリン編
21/52

2-6.別の冒険者

 ケンイチが考えたことは、半分正解である。家だったものが黒い塊に姿を変え、崩壊していた。地面は何かを掘り返したのか、穴だらけで、村としての機能が見えない。

 しかし、それは半分だけで、もう半分――つまり、不正解部分はと言うと、家の原型をとどめ、地面も綺麗に舗装されていた。



「これは、どっちなんだ」



 小窓から見たケンイチが、判断に迷う。

 解決したと言っていいのだろうか、それともまだ解決していないと言えばいいのか――丘の上からでは判断ができない。

 馬車の動きを止め、バルも目を凝らし、よく見ている。



「魔物の姿は見えませんね」


 眉に皺をよせたバルが、渋い声でそう言った。

 ケンイチも同じように見渡してみる。

 なんの姿も確認できない――つまり、それは人の姿も見えないということだ。



「とりあえず、降りてみますか」


 ゆっくりと馬車を発進させ、なめらかな下り坂を降りる。

 ケンイチは荷台に戻り、リーベにありのままを話した。


「――っていう状況なんだけど、どう思う?」


「うーん」


 眉間を寄せ、唸り声をあげながら考えるリーベ。やがて、言葉を手探りでぽつぽつと結び始めた。


「ゴブリンが関係しているんじゃないかなぁ」


「根拠は?」


「習性とさっきみたからなんだけど」


「なるほど」


 生物としての行動――それでリーベが結論付けたようだ。

 詳しくは知らないけど、どういうわけかゴブリンは金品を集めるために家を荒らしたりするらしく、それを根拠に考えた場合、掘り起こされた穴は納得する。

 ただそれを元に考えた時、どうしてもう半分が無事だったのか不思議だ。お目当ての宝を見つけて満足したのだろうか。


ケンイチは、それはない、とすぐに否定する。もし1つでも宝となる何かを見つけた場合、傲慢にもう1つ探そうとするはずだ。それはきっと村中が穴だらけになるほど掘り続けるだろう。

 だから、あり得ない――だとしたら、ゴブリンじゃないのか、と否定の思考に陥り始めたまさにそのとき、



「この村にお荷物を届けに参りました」


 バルの言葉と共に、馬車の動きが止まる。

 どうやら誰かと話しているようで、また別の女性の声が聞こえる。


「ふむ、そうか。ご苦労だった」


 やや偉そうではあるが、警戒しているのだろう。声に緊張が走っている。



「確認させてもらうぞ」


 そう言って、荷台の布を開けられた。

 開けた女性は、驚くなり尻もちをつく。編み込まれた、肩に流れるピンクの髪。黒ふち眼鏡の奥にある青い目は右往左往に動き、ビクビクしている。表情は、怯えたハムスターのようで、痙攣していた。

 実際の身長は、163センチだろうか。頭につけたとんがり帽子のおかげでわからない。

  全身に黒い布を覆っており、彼女はその隙間から手を出していた。

 


「だ、だだだだ、誰ですかアナタたち」


 声は震えており、緊張している。

 ケンイチたちを見るなり、震える手で指をさした。



「依頼をこなすために来た冒険者です」


 敵意が無いことを示すため、手を広げる。


「ほ、ほほ、本当ですか」


 尻もちから立ち上がった女性が、今にも泣きそうな目で睨みつける。

 こりゃ参った、とどうするか考えていた時、



「やめないか、ロル」


 ドスの効いた低い声で女性を止める。


「すまなかった。サブさんから話を聞いた冒険者だな」



 紫の髪で左目を隠した女性がひょっこりと現れる。

 黄色の目は、まさに冷静だ。ツンとした大人びた顔からは想像もできない緩んだ口端は、どこか優しさを感じさせる。

 首元には銀の鎖を、手首に黒いバンドを巻いており、ギラついていた。彼女もまた黒を基調とした布を巻いているが、ロルとは違い、この人はマントとして背負っていた。布の隙間から白を基調とした服が見える。



「ザベスさん」


 ケンイチが名を呼ぶと、彼女は手とうを立てた。


「わりぃ、連絡が行き届いてなかったわ」


申し訳ない、と言った表情を向けてくる。


「ぜんぜん大丈夫ですよー」


 隣に座るリーベを見た。彼女は目をパチクリさせ、一体誰なのかという表情をしている。


「この人は冒険者のザベスさん。★2冒険者」


 そして、2か月前のパーティーで名刺をもらった一人である。


 

「よろしくお願いします」


 リーベが一礼する。


「あぁよろしく」


 気さくに手のひらを見せた。


「ここに来た理由は大方きいている。案内するよ」


「ありがとうございます」


 ケンイチ、リーベ、シユは荷台から降りる。


「きみは?」


ゾベルが少女を興味深そうに目を向けた。


「彼女は、シユです。口が喋れないみたいで」


ケンイチが代わりに答える。

目を大きく開き、ゾベルは少女と同じ目線に座り込んだ。



「もしかして、サブさんの孫か」


 シユは、小さな首を縦に動かした。

 ザベスは、シユの頭を撫でる。実際に生きているんだ、と感じたいのか、力任せに頭をワシワシしていた。

 ふいにザベスの口が小さく動く。


「…………」


 何を言っているのかわからない。

 正面に居るシユも聞き取れなかったらしく、頑張って理解しようとしていた。

 またザベスが小刻みに口を動かす。


「……………」


 シユが食いしばった表情で、耳を澄ませる。

 悩んでいるのか、ザベスは眉を寄せた。ただその後、意を決したように一度唇をかみしめた。

 そして、


「よかった」


 と一言。

 ザベスが言っていたのは、安心であった。

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