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超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
2章 狡猾に笑う緑色人――ゴブリン編
16/52

2-1.冒険者の始まり!

新章です。

「おめでとうございます!!」


 ローナからカードを受け取った。表は名前のほかに、冒険者のランク、そして写真のようにリアリティのある絵。裏面には魔法履歴が記述されているが、やっぱり防御魔法のシールドしか書かれていない。

 もっとかっこいい魔法を使いたいものだ。


 とは言え、正式に冒険者に慣れたのは大変喜ばしいもの。

 2か月間、耐えて正解だった。寂しさと悲しさに何度、心がくじれたことか。いつもの日常を願って寝ても、起きれば異なった世界。両親や友達の寂しさを胸に、夜な夜な泣いていたりもした。

 ほんと、やり遂げれて良かった。



「ありがとうございます!」


 礼を言って、すぐに隣にいるリーベへと目を向ける。


「見ろよ、これ。やっと正式な冒険者になったぞ!」


「おめでとう。頑張ったわね」


「ほんと、そうだよな。俺頑張った」


 2か月間ほぼ勉強しかしていない。

 やっと休日だ――と思えば、宿題が出て丸一日が潰れた。おかげでカヤコの手伝いができず、なんの恩返しもできていない。

 まぁこの冒険者と言う職業が彼女にとっての恩返しなのかもしれないが。



「では、一応軽めに説明させてもらいますね」


 ローナは紙に指をさしながら説明してくれる。しかし、それは例の脂肪が邪魔をし、思春期男子を夢中にさせた。


「――ということで……ってケンイチさん。きいてました?」


 全くわからないが、何かを喋っている。

 ケンイチはただ一言。


「素晴らしいですね」


 と言った。



◆◇◆◇◆◇



 空に浮かぶ光はサンサンと輝き、この世界を灼熱に染めた。だけど、日本よりも涼しくて、長袖でも十分だ。

 2か月前と変わらず茶色の服で全身を覆うケンイチと、白に赤い線を入れたいつものリーベが街を歩く。



「まったく、あそこで素晴らしいなんて、どうして言えるのよ」


 睨みつけるように横目をケンイチへと向けた。


「な、なんでだろうねぇ」


 そんなこと自分が言えるわけがなく、目を逸らした。


「まぁなんとなく察するけど」


「!?」



 いま、なんと――隣の人間はわかっているというのか。それは、ないはずだ。ばれないように見ていたわけだし、今回がただただイレギュラーなだけで――脳内の言い訳だけが募るばかりで、その言葉は外に出ることが無かった。



「あっ着いたわ」


 リーベはそれ以上言及することなく、目的の場所を見上げた。

 石造りの建物に扉が無い。窓のような大きな穴からは、中で何をしているのか十分に見えた。 販売する長身の店員を始め、溶解炉を使う人、打つ人、そして見る人の4人。



「奥に居る人が店主」


 腕を組み、ゴツゴツ頭に白い布を巻いた半裸の男はいかにも職人って感じがする。彼は製造する人に唾を飛ばしながら指示していた。


《何をやってるんだ!》



《ここはこうするんだよ!!》


 と、幻聴だが聞こえる勢いがあった。

 ケンイチとリーベは穴から中に入り、店員へ軽い会釈した。



「やぁこんにちは」


 茶色の髪を後ろに束ね、ブラウンの目を隠した長身の男性。身長は180センチを優に超えていた。表情はにこやかで、職人と言う印象が見えない。しかし恰好は白の作業着を着ており、この真夏では熱中症で倒れてしまいそうだ。



「今日はどうしたんだい」


 店内に並ぶ鉄はくすんだ輝きを持っていた。しかし、それがまた重厚感があり、少年の心を釘付けにする。


「すごい、武器だ!」


 ショートソード、ダガー、レイピア、ランス、薙刀、双刀、斧、手斧、鎖鎌――などなど、異世界ならではの武器が壁に立てかけられている。

 1個1個じっくりと見ているケンイチの二の腕を掴み、


「この人の武器を受け取りに来ました」


 と、言ってリーベがチケットのようなものを見る。

 男性はじっくりとそれを見て、ニッコリとほほ笑んだ。



「おめでとう、冒険者になれたんだね。ここから好きな武器を選ぶといいよ」


「まじ?」


「まじ」


 男性の言葉を聞いて、ケンイチは喜ぶ。

 さっそく武器を見た、どういった戦い方をするのか脳内でシュミレーションしながら選ぶ。

 長さ、バランス、重さを重視しながら探すさまは、バットを選ぶあのときと似ていた。

 そういえば、最近買い替えたんだよなぁー―あの世界で生きていたことを思い出しながら、思考して数分ケンイチはついに見つけた。

 初めから目に付けていたあの武器――。


「俺、ショートソードにします」


 くすんだ輝きを持つ鉄の剣は、持ち上げたケンイチの顔を反射させる。

 重量感を持ちながらも、それほど重くはない。十分に振ることができ、体が付いて行くことができる――まるで野球バットみたいだ。


「それにするかい?」


 ケンイチは頷いた。


「そうか。喜んでもらって嬉しいよ」


 どうやらリーベが渡したあのチケットが代金としての役割を担っているようだ。

 ケンイチは説明を聞いていなかったし、聞こえてなかったからわかっていない。

 2人は店を出て、次に目指したのは道具屋――カヤコの所まで徒歩で進む。

 その道中、リーベは腰に添えたショートソードを指さした。


「いい武器じゃん」


「だろ。気に入ってるんだ」


 ケンイチが見せびらかすように、鞘に納めたままリーベに見せた。


「武器はお気に入りを選ぶのが一番よ」


 そこは野球バットを選ぶ時と似ていた。

 コーチもそんなこと言ってたなぁと思いつつ、2階建ての木造建築の前に立った。

 約2か月前はここで大惨事が起きていたのに、今はもうそれが過去のものとなっている。倒壊した建物も、破壊された道路も、全て元通り。正式な冒険者と建築関係者により、片付いていた。



「カヤコさーん」


 ケンイチが扉を開きながら、彼女の名を呼ぶ。


「んあ……」


 カウンターから間抜けな声と共にチョコッと顔を出す幼女――しかし、実際はケンイチやリーベよりもはるか年上だ。

 話の端から想像するに30歳近いのだろう、見た目の若さによりそうは見えないが。

 カヤコが手を振りながら近づいてくる。



「話は聞いておる。道具が必要なんだろ」


 そう言って、彼女の手から渡された布のポーチ。その中には、冒険者にとって必要な道具が詰め込まれている。


「そうです」


 ケンイチは受け取り、腰に巻いた。


「冒険者らしくなったじゃないか――問題は見た目だが」


 全身茶色の衣服で身を守っているケンイチを下から上まで見た。


「まぁこれは後々どうにかします」


 流石に服をもらうのは、気が引ける――今まで散々お世話になったのだから尚更。

 だけど、カヤコはそう思っていないようだ。

 彼女は一度カウンター奥まで消え、戻ってきたときには手に紙袋を持っていた。


「祝いの品だ」


「えっ、なんですかこれ?」


「見ればわかる。開けろ」


 カヤコに促されるがまま、ケンイチは袋を開け、中を確認する。


「ま、まじで……」


 そこには入っていたのは、綺麗に折りたたまれた赤い服。

 一度、カヤコを見る。


「い、いいんですか……」


 自信たっぷりにカヤコが頷く。


「先祖代々から続くカヤコの宝を守ってくれたんだ。これぐらいおつりがくる」


 その言葉が響いた。

 ケンイチは、力強くお辞儀する。


「ありがとうございます!」


 手で払いながら、


「リーベにも言うんだぞ」


 頭を上げ、彼女を見た。


「ありがとうリーベ。俺、頑張るから」


 彼女は微笑んだ。


「一緒のパーティなんだもん。これくらい安いものよ」


「さて」カヤコが前に出る。


「そんな格好だと仕事もしにくかろう。奥のほうで着替えてくるがよい」


「そうさせてもらいまーす」


 服を持ったケンイチが早速カウンターを抜け、廊下で着替え始める。

 服にそでを通し、ズボンに足を入れ、ボタンをしめた。


「よし」


 これから冒険者として仕事をするときはこの服を着るのだと思うと、気が引き締まる。

 野球のユニフォームに初めて袖を通したことを思い出しながら、彼女たちの前に立った。



「どうだ。冒険者らしいか」


「らしいじゃなくて、もう冒険者よ」


 そう言いながらリーベがじろじろと見て、頷いてくれた。


「似合ってるようで良かったわ」


「うむ。立派な冒険者にしか見えんぞ」


 そこまで褒められるとは思ってなくて、恥ずかしくなる。

 ただこれも慣れるだろうし、そうなったとき本物の冒険者としてやっているだろう――下手なことはできないな、と考えた。



「リーベ、ケンイチ。お前たちに渡したいものがある」


 カヤコがポケットから取り出したのは、布でくるまれた何か。

 2人はそれぞれ1つずつ受け取り、巻いていた布を取った。


「これは……」


 リーベが声を漏らし、ケンイチは息を呑んだ。

 そこには茶色の羽が1枚のみ。一体どんなものなのか、知的好奇心が刺激される。



「それはグリフォンの羽を加工して作った物だ」


 獅子の胴体に、鷲の足と翼を持つ幻獣――ケンイチは、その存在を知っていたし、何度か対戦したことがある。なんだったら、見たこともあった。

 ゲームやアニメの話だけど、その空想じょうの生き物をこうして――加工品とは言え、触れられるとは思いもしなかった。

 ただリーベやカヤコはこれを普通としており、その獣の名を聞いて興奮していたのはケンイチだけだった。



「グリフォンなんて普通の獣よ」


「まじ?」


「まじだケンイチ」


 カヤコが話の続きをする。


「グリフォンなんてそこかしこにいる生物だ。見たこと無いのか?」


「ないですね」


「こりゃたまげた。グリフォンを見たことないと……。まぁ住む地区によっちゃ見れないかもな」


 カヤコが納得したように頷く。


「で、話を戻すと、その羽は風を起こすことができる」


「風を……?」


 リーベが反応した。


「そうだ。ただし、人を圧死させたり、浮遊させるほどの力はないけどな。あくまで、身を守る術として使ってくれ」


「わかりました」


 リーベと目が合った。


「今のは聞いてたよね?」


「もちろん」


 カヤコには話を流すほどのバイオレンスが無い。だから、ケンイチもそれはしっかりと聞いていた。



「さて、渡すものも渡したし、カヤコはお前らの無事をここで待ってるぞ」


 その小さな手を振る。


「行って、人助けして来い」


「はい」


「もちろんです」


 ケンイチはドアノブを握って、振り返る。


「色々とありがとうございました」


 その言葉に、カヤコが涙ぐみ鼻水を垂らす。


「絶対、絶対、ぜっっっっったいに無事に戻って来いよ。もし戻ってこなかったら、カヤコ怒るからな」


 溢れてくる涙を手首で払いのける小さな女性に、いつしかケンイチたちも涙をこらえていた。


「もちろんです」


「アタシたちは、必ず帰ってきますから」


 扉の向こうには希望と未来が待っている。

 ケンイチとリーベは、1歩外に出た。


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