いつものハイン様
悪役令息はママが好き
設定資料
クラウドフレアにデプロイしました
うーん、どうかな~。もう少し練れる部分があるとは思う。
https://0946ea23.akuyaku-mama-settings.pages.dev/
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その日、俺は毎朝のルーチンとなっているガッデムとの鍛錬を終え、流れる汗をフェリにふき取らせていた。毎朝日が昇る少し前から、日が昇り切るまでの限られた時間を鍛錬に当てているのだ。
健全なる精神は健全なる肉体に宿るという言葉もある。
かつてセレンディア大陸全域に版図を広げていた神聖ロマリア大帝国という御大層な名前の国の詩人の言葉だったか──当時の皇帝であるファドリアヌスを風刺したとかで辺境に追放され、憤死したらしい。
それはともかく、ガッデムの奴は特に忠実なので、俺を殺すつもりでかかってこいといったら本気で殺そうとしてくるので中々見込みがある。しかも力任せではなく、理に適った殺り方をしてくるため俺としても気が抜けない。
所作の一つ一つに工夫があり、俺も学ぶところがある。間違いなくこのアステール公爵家に於いて一番の武人と言えるだろう。奴の様な男が門番としてにらみをきかせていれば、公爵家の箔というものもつくというものだ。
「若様──」
いつも通りフェリがその日一日の母上の予定を伝えてくる。
「佳きに」
どうやら母上もここ最近は政務が忙しく在られる様だ。しかし大事はあるまい。ここ最近の母上の精気の漲り様には瞠目せざるを得ない。日々魔力が増大しているように見える。母上のお年で魔力の器がああも成長すると言うのは寡聞にして聞いた事がないが──。まあそれはともかく、魔力を視る限りは体調も万全に思える。
それにしても、学園などという下らぬ劣等動物園に行く義務さえなければ、俺も母上の為により身を粉にして母上の為に働けたものを。
今日もそうだ。
意味のない登校をしなければならない。
母上の授業があるならば喜んで登校するが、今日は母上はお休みである。
そのくせ、ここ最近は試験前だということで授業がみちりと詰まっているのだから始末に負えない。
ガイネス帝国の成り立ちだの、法制についての解釈だの、そんな事を覚える必要があるのだろうか。
歴史を学ぶにせよ、学ぶ価値のある歴史でなければ意味がない。
母上が生まれる前の歴史など存在しないも同然であるので、俺にとっては無意味であり無価値である。
法制も同様だ。
弱者は死ねばいいし、無能は殺せばいい──それでいいではないか。
まあ母上はそういうのが苦手なのようなので、俺も日々カス共に慈悲をくれてやろうと努力をしているわけなのだが。
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と、言う事で劣等動物園にやってきた俺だが──。
「よう、ハイン! 今日も相変わらずクールだな! 少しは笑ったらどうだ? 朝いちばんは笑顔から始めるといいんだぜ!」
「アゼル様! その様にハイン様に気やすく話しかけないでくださいまし! 今、ハイン様は瞑想をしているのというのが見てわかりませんの!?」
「ア、アゼル君、ハイン様は目を瞑るのに忙しそうだし、向こうで話そうよ……」
三馬鹿が俺の周囲でピイチクパアチクと。
どこもかしこも劣等ばかりだ。
臭いたつな……堪らぬ劣等の匂いでえづくじゃあないか……。
「エミー……じゃない、エスメラルダ、そう怒るなって。皺が増えるぜ? そういえばテスト勉強はちゃんとやってるか? 余り下手を打つと退学させられちまうからな、まあお前なら大丈夫だとおもうけどさ!」
俺は別にこの連中とうまくやっていきたい──などとは思ってはいない。ただ、劣等と見下しているわけでもない。このアゼルに関してはこと剣術に関しては磨きに磨き抜かれていると思っているし、エスメラルダは名目上とはいえ俺の婚約者である。タフな所があるというのもこれまでの付き合いで理解した。もう一匹の──なんだったか、セリア? セリカ? ちょっと名前は忘れてしまったが、俺に対して劣等とはまた別の不快感を覚えさせるという意味で、この女も何かしら秘めるものはあるのだろう。
だが別に仲良しこよしがしたいわけでもないのだ。
そんな俺が言えた話でもないのだが、アゼルはどうにも対人関係を築く能力が欠如しているように思えるな。
まあどうでもいいか──。
ともあれ、アゼルの言は一応は事実ではある。
この帝立サンフォード学園は入学時の試験の成績に応じてクラス分けがされている。(幕間:かえってきた男③参照)
星藍石
天涙石
竜血石
これらは能力に応じたものではなく、その質に応じた区分となっている。
星藍石は外敵から帝国を護る守護者としての能力を見られ
天涙石は技術開発面に貢献できるかという能力を見られ
竜血石は政治的に貢献できるかという能力を見られる。
そもそもとことんド無能はこの学園に入学する事は許されないので、生徒は全員一応帝国が定める一定の能力はあると言う事になる。ただそういった場所であっても後々適正が違っていたという事は往々にしてあるわけで、そういう場合にはクラス替えが行われる。
テストとはすなわちその適正の再審査であり、大まかにわけて三種のテストを行って能力の偏りを見るものだ。しかしその出来が余りにも悪いと、たとえ高位貴族の指定といえど、学園を追われる事になる。そうなればその貴族家にとって家名に拭い難い泥を塗りたくる事になるわけなので、皆それなりに奮起するわけだ。
その様にして選別に選別を重ね、世代ごとの能力水準を維持しようとしているというのは──なんとも涙ぐましい努力ではないか。
どれだけ努力をしようと抗えぬ力、波というものはあるのだと分からせてやりたくなるというものだ。
例えば亜人ではないからといってつけあがっている者たちと、亜人だからといって弱者ぶって権利を主張する者どもを殺し合わせ、勝った方を八つ裂きにするというのはどうだろう?
勿論思うだけでやったりはしない。
母上はそういうのはお嫌いなのだ。
飼われる幸福というものをそれなりに享受できる世界を創らねばならない。
カスが自発的に世界の、いや、母上の為に嬉々として働けるよう取り計らわねば。
俺もより一層の努力が必要だな。




