第1撃 「始まりの雨」 ーJ'ensorcelle un tigre épée
愛刀<虎徹>を鞘から抜き、ターゲットが俺の射程距離に入るのを待つ。
まさかコイツは、今にも殺されるとは思っていないのだろうな……。そうこう考えているうちに、ターゲットは完全に殺せる範囲に入った。
俺は間髪入れずにに刀を振るう。虎徹の刃の美しくも妖しい輝きは、醜い血飛沫に赤く染められた。
瞬殺で終わらせるのが、俺のやり方だ。余計な感情の入りえない完璧さがある。
無念さと驚愕さを混ぜ合わせたような表情を残した顔。すでに体とは離れ離れになった醜い顔だ。これが、組織のトップを勤めた男の顔だろうか?
ボスの方がよっぽど良い、社長の風格を持っていると思う。もちろん、好きではないが。
余計に吐き気が催す顔面を目で見ないようにして、俺はターゲットのポケットを探った。お目当ての財布は右のポケットに押し込められていた。
対象者の持ち物等は、依頼に関係ある物意外は殺した奴が好きに使っていいらしい。中には、対象者の腕時計や服を持ち帰る奴もいると聞いた。
だが、俺はそんな趣味は持っていない。俺が持ち去るのは、財布の中の現金だけだ。カードやなんかは、使い方が分からないから捨てる。
元社長の財布と言っても、対した額は入っていなかった……。現金だけで、8万と5千円しかない。とんだはした金だ。俺は最期に蹴りを打ち込んだ。
死んだ人間の体が、大きく建物の脇に飛んだ。力なく地面にひれ伏す姿には、哀愁すらも感じる。




