第1撃 「始まりの雨」 ーLa lune Un fond D'après les 23e
ここからだと、月下は近所だ。俺のテリトリー内で自分勝手にやらかすとは、ナメた連中なんだろう……。
月下23番通りの最初の角を曲がった所、そこが麻薬組織の本部らしい。「野村事務所」と掲げられた看板は、錆に塗れている。蹂躙しているという割りには、しみったれた場所だ。
いや、だからこそ裏政府の目を気にする事なく今まで組織を運営出来たのだろう。携帯電話に送られた
ターゲットの顔写真を比較しながら、建物を出入りする人間を見定めた。
10分もしないうちに、ターゲットは現れた。薬物中毒者なのか、血走った目をしている。まぁ、何ら不思議ではないが。
いかにもな悪人面を見ていると、吐き気がしてきた。ソレだけじゃない。肥満を体全体で表現したような人間が、顔は青白く眼球は飛び出しそうな面構えだ。
道徳的にコイツを判断する事が出来るのは、聖人君子かいるかも分からない神ぐらいだろう。
少なくとも、俺には無理な話だ。同じ人間である事自体が、すでに不愉快極まりない。
仲間割れを企てた連中にしろ、この人望皆無の元社長にしろ。どうでもいい奴らには変わりない。
鈍く歩く狸を遠くから静かに眺め、どんな手段を使うか考慮する。定石通りならば、銃火器の出番だ。
しかし、俺の戦闘スタイルは中遠距離向きじゃない。従って、拳銃を常備している事は少ない。刀剣類が基本だ。
接近戦の分、生傷は覚悟の上だがその方が性に合っているのだと思う。決まりだ。ターゲットに接近後、速やかに暗殺。
俺は一旦、暗がりに身を隠して暗殺の機会を窺った。




