13話
拙書『アンジェ先生転勤します』が1/13に5,000PV達成しました。
読切の記念SSがひっそりと公開されてますので、気が向いたら読んで頂ければ幸いです。
エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~
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領都大会まであと数日、僕は学院長室に呼び出された。
領主館の執行代理人ことコーキがわざわざ来校したらしい。先触れもあり、領都大会の段取りについてと聞かされていたので昼時間帯を狙って来たのだろうか。そして僕は教職員室から出ようとしたところ、ルーチェに捕まってしまう。
「ねぇアンジェリカ、一緒にお昼ごはん食べようよ」
「すまん、領主館から先触れを貰っててな。いまから学院長室に行かんと」
「――何よそれ、私も連れて行きなさいよ!」
有無も言わさずルーチェが付いてくることになった。僕らは学院長室に行く道すがら、新たなる執行代理人のコーキについて軽く説明をしておいた。
「え、って事はジンの妹が執行代理人なの?」
「あぁ。その代わりジンとは全然似ても似つかんぞ」
「じゃあ絶対行く、へばりついてでもいくからね!」
「くっつくな!」
そう言いながらルーチェは僕に凭れ掛かってきた。学院長室までのこの区域は滅多に学生が往来しないのでルーチェに遠慮は無い。そして鬱陶しい、重いわめんどくさいわ恥ずかしいやら、僕は早く離れて欲しいから必死にルーチェを押しやろうとするがどうも離れる気は無いらしい。結局、彼女は学院長室の前まで僕の背中にくっついていた。
「えっと……、リーナ皇女殿下……ですよね」
「――い、いいえ、ルーチェ・リングィナです」
「いやいや、どう見ても『氷結の薔薇姫』リーナ皇女殿下じゃないですか」
学院長室に入った時、煙管から紫煙を燻らしていたコーキだったがルーチェの顔を見てそれを落とし、慌ててソファから立ち上がると跪いた。そして二人は何度も問答を続けているのだ。
「ったく、早く要件言いなさいよコーキ嬢」
「は……ははっ! 領都大会への最終確認でありまして、その──」
コーキはルーチェに恐縮して話が全然進まない。結局ぶーぶー文句垂れる彼女を無理やり退室させてようやく話が進み出したのだった。
「お疲れさま、ブリーフィングするぞー」
「今日のリーダーはマリです、皆さん元気ですわ」
「ありがとうマリ君。今日は稽古前に領都大会についていくつか領主館から連絡があったので伝達するな。先ずは……」
と、搔い摘んで言えば移動含めて旅行行程は七泊八日だ。内訳は片道二日、調整日一日、試合は二日、予備日一日と言う。その間の授業は公休扱いになるが、授業によってはレポート提出を求められている旨を説明をした。
「マジでレポートあるんですかー?」
とパティが言う、カオリルナッチの授業単元で出るらしいぞと答えておいた。
「先生の権限でなんとかしてください」
「――無理言うな、カオリルナッチ先生の事だ、言ったら増やされるぞ。とまぁ後は……今回の遠征では、僕達に金銭的負担は無いぞ。ただし、お家や友達にお土産を買うとか買い食いしたい時は自分のお小遣いでやってくれ。あと、領都はこのシュトレーメより遥かに広大で都会だから、迷子とトラブル防止のため単独行動は謹んでくれ。詳しくはカロリーナ先生が作ってくれたこの『遠征のしおり』をちやんと読んでおくように」
「はいっ」「はーい」「はい」
「あと、校医のシュバンヴィ先生は遠征に帯同出来ません。代わりにカロリーナ先生が来てくれます。医師ではありませんがルーチェ先生やラバト嬢に聞き辛いことがあったら質問してやって下さい」
「はいっ!」「カロちゃん先生来るんだ」「先生しつもーん!」
「はい、ラフェル君どうした」
「カオリル先生は来ないんですか?」
「来る予定は無いが……どうした?」
「いや、来てくれたら、飲みに連れてってくれ──」
「あのなぁ、僕らは物見遊山で行くわけじゃないんだぞ? 遠征中は全員禁酒だからなっ!」
「ちょ待てよ、くそアンジェ」「横暴よっ、アンジェリカ!」
「お前ら……何しに行くかホントに判ってんのか……?」
僕は溜息をついた、稽古以外でもある程度の緊張感を求める僕が変なのだろうか。優勝して州都大会に出られる事になったら領都で一杯ご馳走してやる、そういう話となった。
出発日当日の早朝。
領主館が用意したのは一台の馬車と貨車だった。着替えなどを押し込んだトランクや木剣防具などを貨車に乗せて幌をかけ、華美ではないが見る限り上質なそれに皆乗り込んだ。
「今回は貨車に乗らなくていいのか?」
「ちゃんとした客車をご用意しました、安心してご乗車ください、アンジェ先生」
御者に言われて僕も乗り込もうかと思った時に声を掛けられた、振り向いたらコーキだった。こんな朝早い時間だが彼女はわざわざ見送りに来てくれたのだ。
「少ないですけどこれは私からの餞別です、よかったらラングステで美味しいものを食べて下さいな。――おすすめはウォルフラ地区の重石亭です、東街のヒンカリみたいな食べ物、クロップカーカーが美味しいです。ただ、お酒についての条例は厳しいので気を付けてください」
コーキが小さな皮袋を差し出した。僕は一度断ったが、少額ですからと押し付けてきたのだ。こりゃ彼女にお土産を買って帰らないとな。
「領都の緯度はプリューゲル並です。朝夕の気温差は大きいですし、この時期は大丈夫だと思いますが、夜中は急激に寒くなることもあります。身体を冷やして風邪を召さないよう注意して下さい」
「わざわざありがとうな、コーキ嬢」
「絶対勝ってきてくださいね!」
トコトコと馬車が動き出す。ふぅと一息付いて顔を上げると皆が僕の顔を見ていた。
「な、なんだ皆」
「えらく執行代理人なんかと仲が良いよねって皆で言ってたんですよ」
と、ラフェルが応えた。いやいや、彼女は悪友の妹で、たまたまここに赴任してきただけだと言ったが、
「なかなかかわいい妹さんから、こそこそと餞別貰っちゃう……、そして私達はいちゃいちゃを見せつけられたわけですか」
「別にいちゃこらついてないだろ? なにむくれてるんだ」
「むくれてませーん!」
そう言ってラフェルが皆でカードゲームしようぜと言い出した。しかし僕はしばらく混ぜてくれなかった。解せぬ。
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