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11話

拙書『アンジェ先生転勤します』が1/13に5,000PV達成しました。

読切の記念SSがひっそりと公開されてますので、気が向いたら読んで頂ければ幸いです。


エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~

https://ncode.syosetu.com/n4841ia/

 試合翌日。自室から出ると校舎には『祝・剣闘術会優勝』と書かれた大きな垂れ幕が下がっていた。昨日の今日で用意できたのかと思っていた。ただ、よく見ると垂れ幕をよく見ると黄ばみや染みがいくつか。どうもお古を引っ張り出してきてぶら下げてるのだろうか。とはいえこの様に広く知らしめてくれたら剣闘乙女たちにはきっと誇らしいだろう。



 昼過ぎにヴィルムから呼ばれたので学院長室へ伺ったところ中にはヴィルムとカオリルナッチ、そして若い女性が居た。その方は中街領主館の新しい執行代理人らしい。と言っても前までの老齢期一歩手前のそれに比べて今の執行代理人は随分と若々しいな、と思ったが。


「アンジェ先生、実は領主館から剣闘術領都大会のお誘いが来ててね」


 そうヴィルムが笑顔で言うと若き執行代理人は青い顔をしながらおずおずと招待状と書かれた封筒を差し出した。それにしても今日はそこまで暑くない、むしろ涼しいくらいなのに珠のような汗を浮かべている。


「あの、すごい汗ですけど具合悪いんでしょうか?」


「いッ……いえ! だ、大丈夫です!」


 そう言って執行代理人はハンカチで汗を拭う、しかしどう見ても大丈夫そうには見えない。控えてたカオリルナッチが僕に耳打ちをして教えてくれた。


「アンジェー先生。前に()()おてんば姫が領主館で派手にやらかしたでしょ? おかげで今じゃこの学院やべぇって思われてるのよ」


 あ、あぁー、あの件か。ルーチェが烈火の如く怒りちぎって大問題になったもんな。ただ、ダブルブッキングを食らって合宿所が使えずルーチェの別荘を使わざるを得なかったってオチまで付いたがな。その件は領主館には伝えなかった、僕自身もこれ以上の面倒事は御免だからだ。


「招待状ってことは、領都大会に出られるってことで良いんですよね?」


「へっ、あ、はいッ! 左様でございます! 詳しくは封書に書かれておりまふが、再来週の予定でふ!」


「──代理人様。別に取って食おうって訳じゃないんです、そこまで緊張しなくて大丈夫ですよ」


「い、いえっ! き、ききき緊張してましぇん!」


 そう言いながらもさっきから噛みっぱなしで既に涙目の彼女は、顔色も青から蒼白に変わりつつあるのだ。


「しょしょしょ!」


「どうかしましたか?」「何、どうしたの」


 突然奇声を上げた執行代理人に皆が当惑する。


「めめ名刺渡してましぇん!」


 ついに泣き出した執行代理人は震える手で名刺を差し出してきた。僕も渡してないと思い慌てて差し出したが。


「ありがとうございます! 拝見します!」


と言って名刺を頭上に掲げて受け取った彼女だ、ここまで来たら慇懃無礼な気がして堪らない。そして僕の名刺を目にしたら一度目を見開き、僕の顔を二度見し、また名刺に目を落とす。そしてようやく彼女の頬にようやく紅が差し出した。



「あの、アンジェさんって、失礼ですが……ファルス研究室にいませんでした?」


「え、えぇ、去年まで居ましたよ」


「ってことは、ジン・カーツは解りますよね? ――それの妹です、私」


「ジンの妹ぉ!?」


 思わず立ち上がり叫んでしまった。執行代理人の彼女はにこりと微笑む。カオリルナッチの咳払いで気を取り直した僕は彼女の名刺を見る、コーキ・カーツと書かれていた。


「本当に不肖な兄がお世話になりまして。アンジェさんの事は色々と伺ってたんですよ」


「そ、そう――、ジンから家族の話って殆ど聞いたこと無くてな」


 後期中等学校時代、寮で同室だったジンとはいつも一緒に学生生活を過ごしていた。とはいえ彼は夜遊び癖があったため、どのように遊んでるかは聞いたこと無いが。で、ずっと一緒にいた割には彼が後期中等学校に来るまでの事は全く聞かされてないのだ。何度かそれとなく聞いたことはあるが、なんか適当にはぐらかされた記憶はある。


「やっぱ聞いてないですよね。――そりゃ兄さんと私って母親が違いますし」


「そうだったんだな、通りで」


 コーキとジン、言うほど似てないのだ。ジンは銀髪だがコーキは焦茶色だし、顔の造形も違う。まぁ兄妹かもと思えるのは右眉尻にほくろがあるぐらいだろうか。


「もし兄さんから連絡あったら、たまにはカナウジィに帰ってこいとお伝え下さい」


「カナウジィ?」


「え、兄さんって出身地もお伝えしてないんですか?」


「あぁ、帝都育ちとしか聞いてないな」


「確かに中等学院から帝都に住んでますが、あれでもれっきとしたカナウジィ辺境伯の長嫡子ですよ?」


「はぁ?」


 確かにカナウジィ辺境伯の家名はカーツだ、しかし家名としてはかなりありふれており辺境伯のカーツ家に連なる一族なんて遠い地の話だと思っていた。


「はやく海賊ごっこみたいな生活やめて戻ってきて欲しいんですけどね。兄が結婚しないと私もできませんし」


 そういってコーキは溜息を付き、セカンドバッグから煙管を取り出した。


「一服よろしくて?」


 そう言いながら火皿に刻み煙草を詰め始める。ヴィルムも懐から煙草を取り出した。僕は黙って頷くと二人は先を灯して紫煙を吐き出した。


「ジンの話はそこまでとして、領都大会の封書を拝見させていただいていいかな?」


「え、あ、はい、どうぞ!」


 二人が一服してる中、開封して何枚かの紙を取り出した。その中の一枚は確かに領都・ラングステでの剣闘術大会の出場要領が記載されていた。

 ヴァルガッシュ卿の所領はシュトレーメ中街含めて八つあり、その中で修身学院の剣闘術会が行われるのだ。そこで勝ち上がった一校が州都大会に出られるらしい。シュトレーメ大会の時は総当たり戦だったが、領都大会は勝抜け(トーナメント)戦らしい。


アシ(旅費)マクラ(宿泊場所等)付きです、アゴ(食費)だけはそちらでお願いしたいんです」


「そうですね。これは皆と相談して出場するか決めたいと思います」


「そ、そうですよね。――出来れば前向きな検討をおねがいしたいんです」


 そう言ってコーキは煙管を灰皿にコンコンと叩くと、両手を膝の上に載せて頭を下げた。


「前任の執行代理人が御校にご迷惑をお掛けしました事、今更ながらお詫びさせてください。現在、弊館は組織を一新してよりよい市民サービスを提供するよう鋭意善処しております。そして汚名を雪ぐ機会として今回の領都大会があると思っております。私共は御校へ大いにご協力致しますので、是非とも出場を前向きに――」


「コーキ嬢、頭をお上げください。お詫びなら家令のジャニス殿……、彼女から頂いてるから。そこまで深く反省してるなら、より良い市民サービスの提供を公平に与えるべきだと思うぞ」


「――アンジェさんの御厚意、深く感謝いたします……、領主館員一同その思い肝に銘じて業務に当たる所存です」


 そう言ってコーキは再び深く頭を下げた。


「お役所言葉、まだ慣れない?」


「――やっぱ解ります? 学校を出てからヴァルガッシュ伯爵のとこで散々研修受けたんですが、どうも」


「まぁ簡単な言葉を難解にして一般市民を混乱させるのがお役所言葉だからね」


「言い得て妙なところがありますね。あと、今回の領都大会で――」


 しばらく歓談したあと、出場可否結果をお伝えしに伺いますと言って学院長室を後にした。





「遅くなってすまない、ブリーフィングするぞ」


「はい、今日のリーダーは私、デリッカですわ。みんな健康、元気です。ラフェル先輩が僅かに二日酔いらしいですわ」


「そうか報告ありがとう。ラフェル君、大丈夫か?」


 そう訊くとラフェルは顔を赤くして顔をそらした。別に熱があるって顔の赤さじゃ無いから良いか。


「えぇ。――昨日はご迷惑おかけしました」


「気にするな。というか気にするぐらいなら飲みすぎるな」


 そう言うとミノンが咳払いをする。彼女は眉間に皺を寄せ、ものすごい怖い顔をして僕を見ていた。


「ミノン君、どうした」


「先生って――、やっぱラフェルン先輩といい感じなんですか?」


 ミノンは立ち上がるとそう言う、他を見渡すとジョルジェもデリッカも、ルーチェですら僕を射抜くよう見ていたのだ。ラバトとマリ、パティだけミヨミヨしながら見つめていたが。


「あのなぁ……、ラフェル君は学生で僕は教師だ。――そこは弁えて生きてるつもりだし、ここで仕事してる訳だ。んで疑われるような事なんてあってはならないと思っている。だがはっきり言っておく、ミノン君はどう思ってるかは知らんが、間違いなく妄想の域だと言っておく」


「でもね! 先生と生徒の禁断の恋って……」


「ミノン君、ナチコー作品の読みすぎだ。もしそんな禁断の恋が良いんだったら、少し古い作品だが『先生となんか恋をしちゃいけません』ってのを読んでおけ。これもナチコー作品なんだが、その禁断の恋がどうなるかが書かれてるぞ」


「――アンジェ先生……、ちょっとよろしくて? それって過去に帝立学院の入試問題になったあの作品ですわよね?」


「デリッカ君は知ってたか。わざわざナチコー先生が書き下ろしてくれた教育学・心理学専攻者用の問題となった作品だ」


 教師と学生が恋をしてしまった事で、どのように二人が社会から爪弾きにされていくかが書かれたナチコー作品だ。恋愛小説なはずなのに小説の内容は主人公二人の世界の周りの心理描写を中心に書かれているという、かなり異質な作品だ。

 そこでは『面白おかしい事実にほんのちょっと嘘を混ぜると皆はすべて本当の事と信じて周りに言いふらす、その嘘の含有量は人づてに伝わるたびに増す』という有名な台詞があるのだ。


「オチは言わんが読めば解る、禁断の恋じゃ幸せにならん。卒業してから先の話は知らんがな」


「――ってことは、私も卒業したらワンチャンあります?」


「お前人の話聞いてんのか……?」


 僕の口から溜息が漏れる。


「で、ここからすごく大事な話、領都大会のお誘いが来てな――」



 大会に参加することとなった。

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