03話
拙書『アンジェ先生転勤します』が1/13に5,000PV達成しました。
読切の記念SSがひっそりと公開されてますので、気が向いたら読んで頂ければ幸いです。
エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~
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3/14・ラルフェの家名を修正
剣闘術は団体戦で行う競技である。過去には個人戦というのもあったらしいが今では殆ど聞かない。一説によると個人戦では『本当に強い者ばかりが勝つ』ためブッキーが儲からないから無くなったという都市伝説があるぐらいだ。
初等学校の運動会ですら賭博のタネにする国民性だ、修身学院の剣闘術公式戦も勿論賭博のタネとなっている。
「ザントバンクのオッズは……、二百二十三倍だってさ」
「何よ、それ。―――じゃあ私、賭けちゃおうかな」
「お、いいな、あたしも賭けンぞ。この前ガチョウレースの負け分、取り返さんとな!」
今朝届いた新聞を読んでた僕に、ルーチェとラバトが併せる。
「新聞屋の分析じゃザントバンク剣闘術会は部員三人に数人の新人が入った模様、とだけしか書かれてないな」
「何も分析してないんじゃない? 取材も来た記憶ないし」
と、ルーチェが言う。そしてニヤニヤしながら「なんか燃える展開よね」とか言ってた、まぁ滾るよな確かに。
「ンだよ、そンなん只のコタツ記事じゃねぇのかよ」
とラバトが言う。まぁブッキー発行の賭博新聞ならともかく、シュトレーメの地方新聞にそこまで期待してはいけないな。
「仕方ないわよ。私やアンジェリカが取材受けて無いし、ブン屋が嗅ぎまわってた様子もないんだから」
「というか、ここ十年連続西街・ヴェスバン修身女子が優勝してるし、領都大会でも毎年上位に食い込んでるみたいだぞ?」
新聞には大きくヴェスバン修身女子の過去十年の輝かしい戦績が掲載されていた。しかし州都大会まで勝ち進んだ事は無いらしく今年こそ念願の州都大会初進出を目指している、と書かれていた。なおシュトレーメ大会でのオッズは一・四倍となっている。
「よっし! あたし今から賭博新聞買ってくる!」
「ちょっと待てラバト嬢、もうそろそろ始業だろ?」
「あ、そーだったな、くそアンジェ」
そう言って僕らは新聞を片づけると朝食を摂る、食堂で注文したパンと温野菜スープと卵焼きだ。
「そういえばラバトちゃん、朝ワイン、飲まないの?」
「――あぁ、酒も煙草も寝る前まで我慢するようにしたンだわ」
ラバトは眉を顰めながらそう言ってスープを啜る。と言うのもルコトが帰ってからのラバトは、今までの生活を省み、改善に取り組んでいる。いつもぷかぷか吹かしてた煙草も終業まで我慢するようになったし、お酒も寝る前に少量飲むだけにしたようだ。それ以外にも早朝は体操をしてから学舎内をランニングし、汗を流してから僕のところへ上り込み朝食を一緒に食べるルーティンまで作ったのだ。もちろん僕への相談は、無い。
「おい、くそアンジェ」
「なんだよ、人の名前にくそを付けるなちんちくりん」
「うっせぇ。塩取ってくれ」
「ほいよ」
「―――ねぇあんたら、何かあったん?」
「知らん」
「うっせぇ鈍感」
「ラバトちゃん。アンジェリカが鈍感なのは今に始まったことじゃないわよ」
「知ってンよそれぐらい。ンでもさ、こいつ、ほんと鈍感なンだわ」
「お前ら二人して朝から僕をディスるな」
「うるさい鈍感」「うっせぇ鈍感!」
両方向から言葉が飛んでくる、二人して鈍感というのは如何なものか。解せぬ。
その日の午後、ラバトが賭博新聞を買ってきてくれた。
「おぅくそアンジェ、今のところの最新版らしいぞ」
「ありがとさん、ちんちくりん」
「うっせぇ鈍感!」
ラバトは僕の頭に新聞を打ち付けてから渡してくれた。新聞を見るとラバトが好きなガチョウレースの予想が既に赤ペンで幾重にも書き込まれていた。剣闘術・修身学院の部を見開いたところやはりヴェスバン修身女子特集の記事が目立つ。
「なんかウチらの学院と違って随分と深堀取材されてるぽいな。―――あ、ここにラフェルちゃんの名前が書かれてるぞ」
目を皿のように新聞を読んでたラバトが一つの記事を指す。
ラフェル・シューレ(2) × ―― ○ ヨハンナ・シュピリア(3)
当て身投げ一本で開始した瞬間に圧倒的な勝利を見せつけたヨハンナ。彼女は床に転がるラフェル(ザントバンク修)に手を貸して立たせてあげる余裕っぷりを見せつけた。しかしラフェルは受け身を取れず左肩を脱臼する事故にも見舞われたが、痛みを堪えてヨハンナを祝福していた。
「ラフェル君、去年試合で肩脱臼したって言ってたが、この話みたいだな」
「肩脱臼ってクセになンじゃねぇの?」
「強い衝撃で脱臼すると癖になるって言うな。彼女から何度も脱臼したって話は聞いてないから大丈夫だと信じたい」
「はぁー、なんか肩当たりがウズウズしてきた」
「マリパティちゃんの混合戦についても書いてあンな。どれどれ―――、『連携の取れてない素人』っと。もっとマシな書き方無いンか?」
「まぁ言い得て妙な所はある。僕が赴任してきた頃なんかあの二人、足さばきすら知らなかったんだ。素人と評されても文句は言えん」
「ほんとあの女狐教師、二度と戻って来ンなって思うわ」
三回生の三人の話を聞く限り、そして去年の成績記事を読む限り、前任の指導者は何一つ指導はしてなかったようだ。それにしてもラバトにしてもカオリルナッチにしても前任者の良い話というのを聞いたことがない。今は育児休業だから時期に戻って来るのではないだろうか? 仮に戻ってきたら誰が剣闘術会の面倒を見るんだろうか? 学院長のヴィルムに確認する必要があるな。
「今はみんなで勝とうって目的で行かんとな」
「お? くそアンジェのくせに気合入ってンじゃねぇの?」
「くそ付けんな言ってるだろ、ちんちくりん!」
「うっせぇ鈍感!」
そう言って僕の尻を引っ叩いた、少し痛い。
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