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22話

拙書『アンジェ先生転勤します』が1/13に5,000PV達成しました。

読切の記念SSがひっそりと公開されてますので、気が向いたら読んで頂ければ幸いです。


エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~

https://ncode.syosetu.com/n4841ia/

 明くる日の早朝、ラバト姉妹とルヴァンシュが僕のところへ来た。目を赤く腫らしたラバトがバツの悪そうな表情をしていたが。


「お、おは、おはよう……アンジェ先生」


「おはようラバト嬢、そしてルコト先生にルヴァンシュ嬢」


 そしてしばらく流れる静かな時間。


「んで急で申し訳ないんだけど……、帰ることになりました」


「え?」


「移動時間を忘れちゃっててさー、てへぺろ」


 ルコトがそう言って舌をぺろりと出す。


「母さんったらいつもそういう時間配分出来ないんだからー」


 ルヴァンシュが言うにはサマンサ魔法国からここまで長距離馬車を乗り継いで五日間以上掛かるそうだ。ルコトたちはここで数日程度過ごす予定だったがこのままだと秋期始業に間に合わなくなる、法術学院に問い合わせた学院長ヴィルムからそのように伝えられたそうだ。


「じゃあ帰るんですね……、せっかく実践法力学について色々と教えてほしかったのですが」


「それならルヴァンシュから昨日聞いたかもですが、――ほんとにウチに来ます?」


「あはは、それはお断りします。いい話だと思うんですが、こんな時期に皆を放り出すのはちょっとね」


 僕はこのルコト滞在のチャンスを活かして色々と法力学について教えを請おうと思ってた。しかし帰ってしまうとなれば非常に残念でしかない。


「気が向いたら考えてくださいな。いつでも待ってますから」


 そう言ってルコトはラバトの肩に手を置く。


「やっぱラバちゃんの言う通り、アンジェ先生は行かないかぁ」


「秋からの授業もあるし剣闘術会も公式戦始まるし、無理だろうよ」


「んでも、もしアンジェ先生が行くって言ったら、ラバちゃんは行くんだもんね」


「何言ってるんだよバカ姉ぇ!」


 ラバトは肩に置かれた手を払い除けてルコトに掴みかかろうとするが、ラバトは足を滑らせたのかバランスを崩す。その隙を突いてルコトはクラッチ杖で軽くラバトのヒザ裏を打つ。そしたら静かにラバトはひっくり返った。


「もうラバちゃん、相変わらずドジっ子なんだからー」


 そう言ってコロコロと笑うルコトだったが、ラバトはここまで転んだりしない。ぽんと跳ね起きたラバトは僕のところへやってくると


「違うからな? な?」


と顔を真赤にして身振り手振り何か言い訳をしようとする。


「もう叔母ちゃん必死すぎー」


「あらあら、私のラバちゃんにもほんとに春が来ちゃったかしら?」


「違うって!」


 小柄な三人がわちゃわちゃと言い合いしてるとなんだかかわいい。




「急で申し訳ないけど、今日の長距離馬車でここを離れるわ」


「そうですか……残念です」


「ヴィーと飲みに行きたかったわ」


 ルコトはそう言うとひとつ溜息を付く。


「きっとあの子の事だから今頃二日酔いで寝入ってると思うわ。顔を見たときでも良いから非礼を詫びておいてほしいの」


「えぇわかりました。お伝えしておきます」


「ところで……、あのお姫様は?」


「ルーチェもきっと二日酔いでまだ寝てると思います。昨日は二人とも派手に飲んでましたからね」


「そうなのね。ルヴァンシュからも話は聞いたけど、あなたも大変ね」


「あぁ、……あはは」


 ルヴァンシュからどのような話が伝わったのかは僕にはわからないが、ルコトの表情を見ると碌な話ではないということは察することができた。


「じゃあラバちゃんも飲みすぎないようにね」


「うん」


「たまには長期休暇取って私のところへ遊びに来てもいいんだからね」


「―――いいの?」


「ダメな訳無いじゃない。いつでもおいで」


「わかった」


 ルコトはラバトの手を取ると、しきりに手の甲を撫でる。


「右足親指の付け根の痛みは、『痛風』よ。封印されし邪竜のざわめきなんかないわよ。少しはお酒を控えて栄養考えた食事と運動しなきゃだめよ」


 ルコトがにこりと笑ってそういうと、再びラバトの顔が紅潮しはじめる。


「ねッ、姉ぇ勝手に人の日記ッ!」


「痛風は女の子には少ない病気だけど、生活習慣を改善することで――」


「見てンじゃないよ! 誰にもわからんようにタルク語で書いてたンにぃ!」


「お酒は夜寝る前に少しだけにしないさい。その邪竜が暴れると大変なんだからね」


「―――――ッ!」


 ルコトはおもむろにラバトに抱き着くと二度三度と頭を撫で、


イモ・ド・ニキ(いたいの)モヘレ・トセ(とんでけ)


法力発動言語(ヘクセライ)を唱えると、彼女たちの足元に青白い法力陣がいくつも発動する。


「体を大事にね、私のラバちゃん」





 僕らは校門でルコト達を見送った。丁度循環馬車が来たので彼女たちが乗り込み、発車したのを見て僕はラバトを見る。彼女は眉間に皺を寄せ僕の顔を見つめていた。


「どうした、ラバト嬢」


「――なんもねぇよ」


「嵐のような人でしたね」


「ほんと昔ッから変わってねぇ、ルコ姉ぇは」


「そっか。――よかったら今度、ルコト先生ンとこ遊びに行くか?」


 僕がそういうとラバトは表情を明るくして「本当か?」と訊く。


「ルコト先生の方がいきなり襲撃してきたんだ。僕らもお礼参りするのも一つの礼儀じゃないか?」


「そ、そうだな! おう、向こうでうンまい酒をたらふく飲んでやる!」


「さっき飲み過ぎを指摘されただろ? しばらくは禁酒だな」


「えーッ、ヤだよ! 我慢できるわけないだろ!」


「大丈夫だ。昨日黒猫亭のフェリシー嬢がいいものを教えてくれたんだよ」


「なんだよ……、もったいぶらずに教えろよ、くそアンジェ!」


「人の名前の前にくそをつけるなちんちくりん!」


「うっせぇ、くそアンジェ!」



 そろそろ夏季休暇が終わる。

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