11話
拙書『アンジェ先生転勤します』が1/13に5,000PV達成しました。
読切の記念SSがひっそりと公開されてますので、気が向いたら読んで頂ければ幸いです。
エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~
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2023/01/23 ・13:36 文章の一部を変更しました。
(フィアランスが立ってるのか座ってるのか)
デリッカのお茶淹れ特訓を双子にお願いし、その日、僕は自室に帰宅した。
「もぉ、アンジュー遅いよぉー」
次姉フィアランスはそう言うと僕に飛びついてきた。ひしりと抱きしめると僕の身体中に鼻を鳴らしながら匂いを嗅ぐ。
「ねぇ、コーヒー屋さん行った?」
フィアランスは匂いを嗅ぎながら僕に尋ねる。昔から彼女は嗅覚が鋭敏なところがあり、どこで何をしてたかを匂いで嗅ぎつけることが出来る。
「うん。ちょうど豆の仕入れをしたくてね」
「そぉなんだ。右肩に甘酸っぱい女の子の匂いするのは気のせいかな? ねえ、気のせい?」
「んー、循環馬車で窓際に女の子が座ってた……ぽいからね」
「へぇー、時々道着からも同じ匂いしてたから、知ってる子でしょ?」
フィアランスはいたずらっぽく微笑みながら僕を睨む。
ほら来た、まるで捜索犬だ。
「ちぃ姉ちゃんは怒らないから、本当のことを言いなさい!」
わかったよもう。そう言うと僕はフィアランスにお茶が淹れられないデリッカのため知り合いの喫茶店へ預けてきた話をする。
「ねぇ、教師ってそこまでするもんなの? 教科書を読み上げて学生達に教えるだけで良いんじゃないの?」
フィアランスは一部始終を聞いて腕組みをすると、教え諭すように言った。
「かもしれん。僕だって教員になるなんて思ってなかったから正直手探りなんだ」
「お姉ちゃんがいい就職先見つけてあげるから、こんなところさっさと辞めましょ?」
そう言うとフィアランスは僕を強く抱きしめた。昨夜も言ったけどそれは絶対出来ないよ、強めの口調で僕は応える。
フィアランスはふぅーとため息をつくと思い出したかのように言った。
「そういえばね、アンジューにお客さん来てるんだった」
「そういうのは先に言ってよねちぃ姉ちゃん」
「えっと……、ジョルジェちゃんだっけ?」
「はい」
声の位置に目を向けると、顔を赤くしたジョルジェが椅子に腰掛けていたのだ。
「あ、あの……、これ、僕の姉で……」
「知ってます。さっきフィアランス姉様からお話は伺いましたから」
ジョルジェはふくれっ面でぷいっとそっぽを向く。
前々からジョルジェとは手紙で勉強(主に法物理学)を教えていたのだが、この手紙の量が徐々に増えていった。いつもかわいくて香り付きの便箋を使うもんだから経済的負担も大きいだろうと何度も便箋は用意するよと言ったのだが、それは私のポリシーですからと突っぱねる。
それなら風紀上問題があるかもと頭を掠めたのだが、僕の部屋で勉強を教える事となった。しかも彼女が持ってきてたのは『わかりやすい物理と法力・下巻』だった。
物理法力学の一番最初の授業の後で、実はジョルジェが下巻の質問も受け付けますかと手紙で訊いてる。(※帝歴284年春・03話)
なお下巻は帝立高等学院の理系学類の受験のみにしか使用しないテキストだ。ハイレベルで知られる医学院受験ですら使わないし他に使い勝手がほぼ無いのだ。しかしジョルジェが何故にこんなテキストの質問をするのか、何度も訊いたがニコニコと笑って応えてくれない。
まぁ勉強なんて強く興味を抱けば深耕しようとするから、僕は別段気にせず質問に応えていた。
「ジョルジェ君は微分方程式については判ってくれてるよね」
「はい、それをもってここが判らないんです」
彼女が指し示した部分についてテキストに書かれてない部分を僕は説明をする。
「ということで、ここで変数分離形なんだが……」
と、いつものように僕たちは小さなテーブルにテキストなどを広げる。僕が説明しジョルジェもふんふんと言いながらメモを残す。フィアランスはベッドに腰掛けて僕たちを眺めていた。
「ところで、ジョルジェちゃん」
しばらく勉強を進めていた時、急にフィアランスが僕たちに声をかける。
「何か有りましたか、フィアランス姉様」
ジョルジェはテキストなどから顔を上げる。
「勉強楽しい?」
まるで何気なくフィアランスが訊くと、はい、と元気に応えた。次姉は足を組み替えると、
「ところでなんで『フィアランス姉様』なの?」
と訊く。
やはり失礼でしたかと顔を蒼くし、声を震わせながらジョルジェが言う。次姉はあなたに言われても別に気にならないわよと笑顔で応えた。
「ところでね、ジョルジェちゃんって将来何になりたいの?」
「え?」
「二人が和気藹々と授業してたのを横で聞いてたけど、どう考えても修身学校でそんな高等な学問なんか、要る?」
「え、あ、はい」
ジョルジェは更に顔を青くなる。フィアランスは、私も故郷のイオニアで修身学校出てるから判ってるけど、カヴァネス目指すにしても女子師範学校行くにしてもそこまで勉強必要かしら、そう言った。
「ちぃ姉ちゃん、言わんとしてることは解るが勉強ってそんなもんじゃないんだよ」
僕は椅子から立ち上がるとフィアランスの前に立ちはだかる。
「帝立学院へ目指さないのなら不要な学問だ、そう断じてお終いなのは変だと思うな。ひょっとしたらジョルジェ君は帝立学院を目指してるのかもしれないし。まぁお互い楽しく頑張ってるんだ、それじゃ理由にならんか?」
僕がそういうとフィアランスも立ち上がる。にこりと微笑むと、アンジューがそう思ってやってるなら良いんじゃない? そう言って先程まで僕が座ってた椅子に腰掛けた。
「あのね、ジョルジェちゃん」
「……はい」
先程から俯いてたジョルジェは上目遣いでフィアランスを見やる。次姉はジョルジェの耳元に口を近づけると小声で何かを呟いた。
その瞬間、ジョルジェが目を見開き、頬も耳も激しく紅潮させた。
「まぁ二人共、頑張りすぎん程度に勉強すればいいさ」
そう言ってフィアランスは、ラバトさんと飲んでくるわ、そう言って部屋から出ていった。
フィアランスはジョルジェに何を言ったのか、何度か聞いてみたがついぞ教えてくれなかった。
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