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09話

拙書『アンジェ先生転勤します』が1/13に5,000PV達成しました。

読切の記念SSがひっそりと公開されてますので、気が向いたら読んで頂ければ幸いです。


エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~

https://ncode.syosetu.com/n4841ia/

 シュトレーメの循環馬車に乗り、コトコトと中街を走る。


「アンジェ先生、循環馬車ってよくお乗りになるんですの?」


「まぁ安いしな。このシュトレーメってだけでもかなり広いから循環馬車は便利だよ」


 デリッカ君は循環馬車は使わないのかねと訊いたら、まず使わないですわと応える。


「このシュトレーメも歩いたら端から端までけっこう時間がかかるがこの循環馬車を使うと時間は随分と短縮できるぞ。あと、やっぱり歩くと疲れるからな」


「まぁ……、それでは辻馬車はお使いになりませんの?」


「高いじゃん」


「まぁ……」


 僕は珍妙なことを言ったのだろうか、デリッカは驚いた顔をする。


「そう言えば、アンジェ先生は合宿でも同じものを食べてたり、ずっと同じ本を読んでたりしますから……学院のお給金そんなに安いんですの?」


「そんなケチ臭く見えるのか……? いや、具体的な事は言いたくないがそこそこ貰ってるつもりだぞ」


 それを訊いたデリッカはふっと笑うと、


「アンジェ先生はこんなに一生懸命頑張ってるんですもの、お給金が安いわけないですもんね」


という。しかしながらこの帝国内の教員の賃金事情、残念ながら決して良いとはいえないのだ。

 どこの国でも『教員』は将来の人材を育成するという崇高な目的がある人間がする『聖職』だ。そして帝国憲法典では教職員にも労働組合が認められているが、それは待遇改善(あと、変な政治活動)に寄与してるだけで賃金事情改善に寄与しているとは思えない。なにせ教職員と公僕はゼネスト防止のため争議権だけ認められてないからだ。賃金は安いので教員には副業が認められてたりするが。

 そのデリッカへの返答は、あはは……、と空笑いを浮かべるだけだったが。



 循環馬車はトロボ川大橋を渡ると、一人、また一人と乗客が乗り込んでくる。夏季休暇中だからだろうか、女学生数人が乗り込んでくるとスイーツの話やら親方衆の歌謡大会の話やらと大声で話し始めた。


「んたっく、西街の子たちは……公共の場だというのに()()()()()


と、デリッカは独りごちる。


「まぁまだ夏季休暇中だからな。うちらの学生達も街中へ遊びに出たら同じ様なもんじゃないかな?」


「……そうかもしれません。ジェイリーとかミノンとかいっつもはしゃいでますから」


 何がそんなに楽しいんでしょ、そう言うとデリッカはため息をつくと窓の外を眺める。


「学校、つまらないか?」


 僕が外を眺めるデリッカの横顔に訊くと、別に、そう応えるとまたため息をついた。


「西街ってたまにしか来ませんが、けっこう賑わってますのね」


「ここらへんは商工業地帯だからね、あの望楼が立ってる建物が帝立銀行シュトレーメ支店だ」


「へぇー。あの中にどれだけのお金が眠ってるのかしら?」


 デリッカは嬉しそうな顔をして僕を見る。


「さぁな。ある日金庫を開けたら『お宝頂戴しました、怪盗フォンティーヌ』と書かれた手紙でも置かれてたりしてな。んで帝立銀行職員がその事実を隠そうとあれやこれや必死してるんだよ」


 僕は昔、フィアランスから借りた小説の話をする。フィアランスは怪盗フォンティーヌ物を好んで読んでおり、事ある毎祖父母に本を買ってくれとねだってたのをよく覚えている。


「えー! アンジェ先生もナチコー・ヴィヴィッド先生の作品を読まれるんですの?」


「あぁ、小さい頃にな。てかデリッカ君はナチコー作品を知ってるのか?」


「もちろんですわ! 今の『恋の連立方程式』シリーズなんて最高ですわよ!」


「え? あの作品ってナチコー作品なの?」


「もちろんですわ、もうやばいですよね!」


 恋の連立方程式シリーズは、確かミノンが好きな恋愛小説でもある。同好の士なはずなのにこの二人の相性は残念なほど非常に良くない。木剣握り合って喧嘩する寸前になった程だ、ミノンの話はしないでおこう。


 はやく次の作品を読みたいですわ、と言うデリッカにそろそろ降りるぞと伝え、七番街で下車した。




「いらっしゃいませー、アンジェ先生ーいらっしゃい!」


 胡桃材の重厚なドアを開けるとエルツァが声を掛ける。


「久し振りですねアンジェ先生。……あら今日はデートです?」


 デリッカを見かけるとジト目で僕を見て言う。実は、と今日訪れた事情を説明した。



「お茶の淹れ方……ですか」


「このデリッカ君に教えて頂けんか?」


 懐から謝礼を入れた封筒を出しテーブルに置く。エルツァはそれを見て、


「デリッカ……さんでしたっけ? 私はけっこうキツイ性格かもですが、覚える気あります?」


と訊く。デリッカは、えぇ、と応えた。


「じゃあ、私みたいな給仕の格好してここでバイトしません? バイト代は出ますし、お茶の淹れ方から作法ぐらいは身につくと思いますよ?」


 エルツァはにこりと微笑むとくるりと一回転、ふわりとスカートが浮き上がる。


「アンジェ先生、このデリッカさんを三日ほどお貸し下さい。ちゃんと食事も寝所もお給金も用意しますんで大丈夫ですわよ」


「そうか。デリッカ君、ちょっとここで働いてみるか?」


「えぇ。お願い致しますわ」




 三日間、二人にデリッカをお願いした。

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