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16話

 バーベキューしたりスイーツバイキングを楽しんだり温泉に入ったり。合宿という名のリゾートなのではと思われるかもだが練習はちゃんとしていた、と思う。とはいえ毎晩毎晩上階ではガールズトークという名の馬鹿騒ぎを起こす彼女たちと数日。僕はほとほと迷惑していた。




「なぁくそアンジェ」


 相変わらず僕の部屋で酒をかっ食らってるラバトが言う。


「上のアイツら、毎晩騒いでるけど大丈夫なんか?」


 天井の先、上階の彼女らの部屋を見やる。ドタバタと物音は耐えないし、乙女と思えない嬌声も響いてくることもある。



「年頃の乙女たちの部屋に僕が行くなんて無粋も良いところだ。もしここが公共施設なら止めに行くべきだろうがな」


 本から目を離し、ひとつあくびをしながら僕は言う。



「幸いここはルーチェ嬢の好意で貸切だ。多少のオテンバは目を瞑ろうさ」


「……やはりあたしは静かに酒が飲みたい。注意してくる!」


 そう言うとラバトは酒瓶を持って出ていこうとする。



「おいおい凶器を持っていくな、酒瓶は置いていけ」


とラバトの肩を掴んで止めた。ラバトは振り返ってニヤリと笑うと


「安心しろ。平和的解決を目指すわよ」


といって酒瓶を抱えて出ていった。不安でしかない。




 ラバトが上階へ向かってからは静かになった。何かが壊れる音が聞こえるまでは放っておくことにした。ラバトが何かしたのだろうか、それはそれで少し寂しい気がするがここ最近読み進めてなかった論文集に目を落とすことにした。




     ☆     ☆




「お前ら一体何してんのよ?」


 グラス類は部屋にあるだろう、酒瓶だけ持った私が部屋に入ったときにはとんでもない光景が繰り広げられてた訳だ。ほぼ下着姿の皆がお菓子を貪り食いながら談笑してるのだから。


「えー? ベビードール品評会」


 足を放り出してソファに腰掛けるルーチェが言う。

 熱気なのか酒気なのか上気した顔の彼女はけたけた笑いながらベビードール姿のジョルジェたちに酌をさせていたのだ。


「てか、くそアンジェが踏み込んできたらどうする気だよ!」


「んー? 乱痴気騒ぎ?」


「よし、お前に聞いたあたしがバカだった、すまん」


 とりあえずルーチェにデコピンをする、相当痛かったのか顔を顰めていた。


「あ、あの、ラバト先生、どうぞ……」


 ジョルジェがグラスを差し出すと酒を注いでくれた。


「んーありがとうな。……ってかそんな姿、くそアンジェが見たらなんて言うだろうな」


 あたしはそう思ったことを口にすると、ジョルジェは顔から耳から真っ赤にして口をパクパクさせていた。


「あ、あの、その……、えっと! その……」


 狼狽するジョルジェを見て、ここで見聞きしたことは言わんよ安心しな、そう伝えた。




「てかアホルーチェ、何故にベビードール品評会なんかしとんのよ」


 あたしは思ってた疑問を訊くことに。そしたらルーチェはあっけからんと


「今日の地稽古で私から引き倒されるか木剣を叩き落されるかしたら罰ゲームでベビードール品評会って宣言してたからね」


とけたけた笑いながら言う。なんなんだこいつ、本物の馬鹿なのか思った。稽古にこんな辱めを加えるなんてアンジェが知ったら激怒するかもしれないのに。


「中にはジェイリーちゃんやラフェルちゃんみたいに喜んでる子もいるし、恥ずかしそうにしてるジョルジェちゃんやミノンちゃん、ツンケンキャラのデリッカちゃんとか見てると面白いでしょ?」


 そう言って、ぷりぷりしてるデリッカに酌をさせてるルーチェだった。


「ら、ラバト先生もお酒! いかがですか!」


 顔から耳から赤らめながらデリッカが酒を注ぎに来た。


「おう、じゃあ返杯もしてくれや」


と、あたしが酒を注いだのだが、その先はルーチェに止められた。


「一回生たちは未成年だから駄目よ」


 いやいや、未成年を酒席に出すほうが問題じゃないのか?




     ★     ★




 夜な夜な騒いでる私達ですが、昨夜はバニーガールでした。きっとルーチェ先生の趣味なんでしょうね。あ、バニーガール姿、私けっこう好きですよ。うさちゃんピョンです!

 

 昨夜はみんなの初恋話で盛り上がりましたよ! ただし最終的には妄想話でしたけどね! だってどう考えてもルーチェ先生含めて私達に男っ気無いですもん! ってジェイリーちゃんが素直に言った瞬間に空気が凍りつきましたよ。ジェイリーちゃん、いつの間に氷結法術が使えるようになったんでしょうね。そのせいなのか今日の稽古でルーチェ先生のジェイリーちゃんに対する当たりはキツかったと思いますね。

 で、今宵はベビードール。ところでルーチェ先生は何人分の衣装を持って来てるんでしょう? そんな大荷物を持ってた記憶ないんですが。まさか伝説の収納法術使えるんですか?



 そんな折、ラバト先生が来ました。ジョルジェちゃんやデリッカが酌をしてました。私はお酒やおつまみを用意する当番だったのですがしばらくしてラフェルンがまた酔って泣き出したって言うから慰めに行ってくれと言われました。ラフェルンはお酒を飲まないほうが良いと思います。


 ラフェルンは、私は主将としてどうあるべきか悩んでると言うんですよ。

 聞かれても答えられませんよ。というか今じゃ七人仲良く頑張ろうと動き出してるんですから、今は歩みを止めないように走り出さないように適宜鼓舞するぐらいじゃないですか。

 まぁ仲良く頑張ろうって言っても、私、デリッカと仲良くできる自信がありませんけどね。あの子やっぱ苦手、きっと彼女も私のこと苦手でしょうね。

 で、ラフェルンにみんなで頑張りましょうよと声を掛けることしか出来ないかな? もし私がアンジェ先生みたいに頭が良かったら献策したりして、名軍師・ミノンと名を馳せるかもしれませんが。ん? 軍師? 



「で、ラバト先生! 軍師について詳しいですか?」


と私が聞いたとき、ラバト先生は飲んでたお酒を吹いてました。


「はぁ? ミノンちゃん、軍師になりたいん?」


「はい! この剣闘術会を守る軍師になりたいです!」


 ラバト先生は火の付いた煙草を拾うと灰皿に揉み消し、


「お前、なに言ってるんだ? 酔っ払ったのか?」


と醒めた目をして言われました。


「だって! 軍師ってかっこいいじゃないですか!」


「まず落ち着けミノンちゃんや。軍師はこんな小規模な剣闘術会を守るのが仕事じゃない、万単位の兵を扱う軍を指揮する君や将に戦略指揮を助ける者のことだ。しかも本当に軍師になりたいと思うなら、そこのルーチェ先生かアンジェ先生に聞けば良い」


 ラバト先生がルーチェ先生を呼び、私が軍師になりたい事を説明してくれた。ルーチェ先生はニコニコしながら


「帝女隊に入る? ねぇ、入る?」


と私の肩をがっちり掴んで鼻の穴を膨らませて言いました、正直その顔が怖いです。


「帝女隊に入ると軍師になれるんですか?」


「卒試でキュリル技官から一本取るとなれるわよ」


 それって絶対無理ですよね。笑いながらで息を乱さずに延々と正確に打ち込んでくる機械式化け物(ベルセルク)ですよアレ。娘のジェイリーちゃんからですら一本も厳しいのに。


「他にも帝立陸軍学校を優秀な成績で卒業して将官学校入学か、帝立学院から将官学校か、帝女隊から叩き上げで昇進して将官学校入るか……ねぇ」


 ルーチェ先生はワインをくいっと飲んで一息ついて、


「というか、今現在の軍規で軍師制度無いわよ? 似たようなもんだと将官学校で参謀科を選択すると参謀本部勤務になるわね……おすすめしないけど」


と言った。えー、おすすめできないんですか? って聞いたら


「女の子が参謀本部勤務になるとね、結婚できなくなるってジンクスがあるの。まぁ婚家から腹黒そうって言われるからね……」


 えー、結婚できないのは困るなぁ、旦那さんに毎朝目玉焼きを作るって夢が叶わなくなるのは嫌だなぁ。


「そうそう。帝女隊を任期まで勤め上げて退職金と持参金持ってどっかに貰われてくほうがいいぞ? そこの行き遅れみたいになると厄介だぞ?」


「誰が行き遅れよー、ちんちくりんエルフのくせにー」


「誰がちんちくりんだ! てか、くそアンジェにいつもそんな態度ばっかしてっから図々しい処女って言われてるのよ!」


「だっ! 誰がそんな! ひどい!」


「え? キュリルがいつも言ってんぞ」


「よーし。明日あの乳なし技官に焼きを入れるか」


「おう、手伝うぞ」


 酔っ払いが結託してました。というかラバト先生はエルフって噂、聞いた事あったんですがそれは否定しないんですね。なんかいい小説のネタになりそうです! そしてルーチェ先生は……、へぇー、一途ぅ。




     ☆     ☆




「はいおはようございまーす」


 朝食前のブリーフィング。ジェイリーが風邪と腹痛だそうだ。


「え? ジェイリーが? ほんと?」


 思わず僕は聞き返した。ラフェルは昨夜薄着で寝てしまったらしく身体が冷えちゃったと言う。


「あの、アンジェ先生。まさか、ば、ばか……くすくす、馬鹿が風邪引かないとお思いですの?」


とデリッカが言う。あからさまに嘲笑を含んで言うもんだからジョルジェもミノンもデリッカを睨みつけていた。


「いやいや、まぁ……、デリッカ君、そんな失礼な事は口にしない!」


 僕は溜息をついてしまう。一回生の四人はどうしてここまでいがみ合えるんだろうか。


「ここらへんはシュトレーメと違って夜になると冷えるからな。薄着して腹出して寝たら風邪引くし、早寝早起きを心がけてくれよ?」


と伝えるに留めた。そして校医のシュバンヴィに診察を依頼したが断られた。


「今日はこのブリーフィングが終わったらすぐにでも『親方衆の歌謡大会』の場所取りにいかなきゃいけないんだし!」


「なぁシュバンヴィ先生、あんた何しに来たんだよ」


「え? ヴィンチ町大会を見に」


「違ぇよ! 仕事だろ、あんたの!」


「あぁーはいはい、肺炎になって血痰吐いたら呼んで?」


「そこまで悪化してたら大問題だよ!」


「あーもう、わかったわよ! 薬はラバトさんに任せるわね!」


 そうシュバンヴィが言ってたが、ラバトとルーチェ、あとラフェルが二日酔いだという。


「お前ら……遊びに来てるんじゃないんだぞホント」



 溜息しか出ない、今日は休養日にした。あと消灯過ぎたら馬鹿騒ぎはしないことを厳命した。

感想、もしございましたら気兼ねなくお書きくださいませ。おっさんの励みになります。


もし誤字脱字がございましたらご報告くださいませ。すぐに訂正いたします。

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