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18話

2022年11月11日、一部文章を修正しました。

2023年4月21日、タイトル修正

「でー、本の虫はカロリーナたんに鼻の下伸ばすっと」

 宴もたけなわ、一次会が終了してレストランから出た。

 二次会は皆バラバラと散っていったのだが、僕はラバトとカオリルナッチに無事拉致られた。

 そして五番街の常店・呑平にいる。

 なおカオリルナッチは僕の尻をつねってからずっと機嫌が悪い。



「あたし司書ですからーにコロリと落ちちゃうアンジェー先生っと」

「ですからそんなんじゃないですってー」

「うるせー本の虫ー! 重力加速度がなんだー!」

「なんだー言われても」

「はぁー、こうなると面倒くさいぞーカオリルはー」

 ラバトはふぅーっと紫煙を吹かし、煙草をもみ消す。

「めんどくさいってなによー! 皆して面倒面倒ってー、もー」

 ジョッキにストローを差し、ぶくぶくさせてる。

 本当にいじけた子どもだ。

「あたしはめんどくさくないぞー! 少し繊細なだけだー!」



「でー、カロリーナたんに会ったってことは、アストラル・グラマーちゃんに会えた?」

 ジョッキを傾けながらラバトは訊いた「知らん? 幽霊ちゃん」

「アスト……あぁ、幽霊ちゃん。カリナ・エクシーヴさんでしたけ? 会ったというか遭ったというか」

「ははは、もう会ったんだ。ひょうきんな子でしょ?」

「そうですねぇ。幽霊だなんて思ってませんでした。そうだ、自分の書いた同人誌を貸してくれたんですよ」

「あの子はけっこう真面目に活動してたからね。あと、最初に発見したのはあたしよ」

「そうなんですか?」

「あぁ、最初は学生の噂だったんよ。カリナがおる、カリナが廊下歩いとったって。どーせよくある学校の怪談的なもんだと教職員みんな思ってたんよ。んでもある日、文芸部の扉壊れたって報告あって直しに行ったら『あ、ラバトちゃんおひさー』だもん。思わず金づちで殴りかかったわ」

「それ、生身の人間なら大事件ですよ……」


「あ、舞台用語で金づちって『ナグリ』っていうんよ? で、打つことを『コロス』って。だから金づちで打つは『ナグリでコロス』ね」

「……すげぇどーでもいい情報ありがとうございます」

「ほかにも大道具のことも『ナグリ』っていうわね、ってそんな話じゃなかったか」

 ラバトは着火魔法(ライター)で煙草に火をつけて紫煙を吐き出すと

「で、あの子私になんて言ったと思う? 『輪転機の電源いれてくださーい』、よ?」

と言ってラガーを呷った。


「幽霊になると魔電に触れられないからって私に頼むのよ。で、魔電入れたら未完だった作品を刷りだしたのよね」

「自由ですね、カリナ嬢」

「カリナが原稿を修正しながら輪転機回して二人で製本して……って気が付いたら夜明けでしょ? 巡回してないし他にも仕事貯まってるしお酒飲んでないし、もうひどい奴だよ!」

「いやいや仕事中に飲むのはどうかと思いますよ」

「ちょっとぐらいいいじゃん!」


「うっせぇ! 夫婦喧嘩は他所でやれ!」

 突然カオリルナッチが叫ぶ。「カリナの話ならあたしも混ぜなさいよ!」

 さっきまで拗ねてたのに今度は話に食いついてきた、すこぶる面倒くさい人だ。

「あの子ねぇ……私の部屋に住んでるわよ、今頃寝てるんじゃないかな?」

「え?」「まじ?」

 僕もラバトも目が点になる。

「確かに夜中は見たことないな」と、ラバトが言う。

「ほら、私って寝るとき棺桶に入ってるでしょ? だからカリナが『あたしも棺桶欲しいですー』って言うからあんたは墓の下にあるでしょって言うと『だってまだ臭いんですもん』って。そりゃ腐乱してるでしょうけどあんたん家そこじゃん!」

「カオリルぅー、まず突っ込ませて。なんで棺桶の中で寝てるのよ、見たこと無いんだけど」

 ラバトは訊いていた。

「てかどうやって棺桶持ち込んだのよ!」

「え? ほら、私たちの学校って月心教の道場だったでしょ? 屋根裏に棺桶あったから、中身捨ててそこで寝……」

「この罰当たりがー! 謝れ、今すぐ中の人に謝ってこいー!」

「だ、大丈夫! 月心教は死んだら月に行くんだし。棺桶の中身は抜け殻みたいなもんよ」

「いやいや、その考えはおかしい。カオリル、すげぇおかしいぞ」

「ねえアンジェー先生もわかるでしょ?」

「カオリル先生……、まったくわかりません!」

「もぉ、めんどくさい人たちだなぁ」

「それはこっちのセリフだ!」「あなたの方がめんどくさいわ!」



「で、ちゃんと消臭剤も吹いたし塗装しなおしたんだけど、カリナも棺桶欲しいっていうから」

「また屋根裏に埋葬されてた人のを? 二度もやるとドン引きよ……一度でもドン引きだけど」

「ううん、カリナは新品がいいって言うのよ。でも学校に棺桶って持ち込めないじゃん、だから茶箱に入ってる」

「茶箱って、紅茶とか入れとく専用のあの箱?」

「そそそ。杉材でできてるけど、外側は防湿と補強のため紙が貼ってあるから冬は暖かいって言ってるの」

「幽霊って寒さ感じるん?」

「らしいよ? ちなみに夏は棺桶暑いってめちゃくちゃ文句言うのよカリナちゃん」

「ねぇ、あんたら自由過ぎない?」

「『学校の空気は自由にする』って法諺あるし、そんなもんなんじゃない?」

「いやぁ解らんほんと、アンジェ先生わかる?」

「わかりません、なんか僕らの理解の先にカオリル先生が居ますわ」




 その後、門限までに帰れた僕らはカオリルナッチの部屋で宅飲みすることに。

「カオリル先生おかえりー」

 出迎えてくれたのはカリナ・エクシーヴだった。

「あ、ラバトさんにアンジェ先生いらっしゃい」

「久しぶりやねカリナ」

「お久しぶりって程じゃないですね、カリナ嬢」

 ラバトと僕がそう言うと、カリナはカオリルナッチの部屋に招き入れてくれた。


「適当に座って? はい、ラバトさんお気に入りのクッション」

「ありがとー、って、()()どこよ?」

「あんたが今座ってるベンチソファよ」

「……ほんとかよ!」

 青いデニム生地が懸かったベンチソファを捲ったら月心教のシンボルが描かれた棺桶だった。

 カオリルが中を開けると内側は赤いベルベット生地が貼られ、縁取りに白いレースがかけてあった。


「え? 棺桶自慢大会ですか? 私はこの茶箱なんですー」

 カリナは茶箱を開けると内側に黒い生地が貼り合わせてあり、縁取りは白いレースとピンクのリボンだった。

「なぁあんたら……ベッド用意しようか?」

「いらん」「いらないですぅ」

 ラバトの提案を一蹴したふたりだった。

「カリナは寝心地どぉよ?」

「暗くて気持ちいいですよ? 私は体の大きさがある程度調整できますからすっぽり収まりますし、暑い日は頭と足出して寝れば気持ちいいですもん。カオリル先生は?」

「棺桶ってある程度吸湿防湿するから過ごしやすいんよね。ただトイレだけめんどくさいかな? それ以外は天蓋付きベッドだと思えばそんなもんよー」

 そんなわけあるか! と思ったらカオリルに読心されてしまった。

「アンジェ先生、入ってみたら快適さわかりますよー」

 固辞したのだが、入れとうるさいカオリルに絆されて棺桶で横になることに。



……意外と快適でした! 天井というか蓋に引っ搔いた跡があったけど……

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