16話
拙書『アンジェ先生転勤します』が1/13に5,000PV達成しました。
読切の記念SSがひっそりと公開されてますので、気が向いたら読んで頂ければ幸いです。
エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~
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二回戦目。速攻・吶喊という鮮やかな勝ちっぷりでボンブル修身を『4−1』で破ったラーゼ修女。僕たちは彼女たちとの対戦となった。
僕は新聞情報や先程の対戦を分析したりラバトと相談した結果、今回は敢えて指向と戦法を変えた布陣にした。スタミナ弱めの相手には尻上がりに調子を上げる剣闘乙女を宛がったり、強襲で相手の体力を削り取るなど徹底的に相手が嫌がる布陣だろうか。集めた情報によるとラーゼ修女は超速攻型の剣闘乙女達が多く揃っており長期戦になると戦績が著しく落ちる傾向にあるのだ。ポカフィシス街の大会でも吶喊が失敗すると勝てなくなったとある。
実行委員に呼び出されて控室から会場に入った僕たちは相手の布陣を見て読みが完全に当たったと思った、向こうの布陣が僕たちの思う形となったからだ。
★先鋒戦★
デリッカ(一回生) - パルジファ(三回生)
「一同、礼! 抜剣」
このパルジファは超々速攻型。相手を開始早々に叩き潰す戦法を大いに好むのだが、それを失敗すると勝率がぐっと下がる傾向にあり『スタミナに難あり』と下馬評があったのだ。
デリッカなら仮に速攻戦になっても冷静に対応出来るし、持久戦になると尻上がりに調子が上がる。そのため大事な緒戦をデリッカに任せ先鋒に据えたのだ。とは言えずっと先鋒に据えられてたミノンにとってはかなりの不服だったろう、試合前ブリーフィングでずっとむくれてたからな。しかしデリッカは、
「私、ザントバンク剣闘術会の名誉の先に勝利を刻んで参りますわ!」
と胸張って言いのけたので、僕は彼女に任せることにしたのだ。
「試合、始め!」
やはり速攻を選んだパルジファにデリッカはカウンターで迎え撃った。しかしパルジファはカウンター被弾を避けようと直ぐにバックステップで間隔を取ったのだ。デリッカは深追いせずに中段で構える。そしてデリッカは間合いをじわじわ詰めると連撃戦を選択、とにかく相手に息を吸わせる気がないぐらいの連続攻撃だった。
僕ら剣闘術会でスタミナ持ちなのはミノンってイメージが強いが、持久力はデリッカが一枚もニ枚も上手なのだ。夜も開けきらぬ頃から校内で走り込みをし、ミノン程じゃないがしっかり食べてよく寝る生活を意識してるそうだ。そのため夏季休暇明けから寮生活を選択したと言う。
連撃に継ぐ連撃を繰り広げられたパルジファは随分と息が上がってきたのだろう、打ち込みもカウンター狙いもできず防戦一方となる。デリッカはさらに踏み込んで間合いを詰めて鍔迫り合いに。そして何度も押し合い圧し合いしてタイミングをとったのか、ついに相手をぐっと押し飛ばしたところバタンと倒れ込んでしまった。
「倒伏、一本! そこまで!」
主審の宣言でデリッカは小さくガッツポーズをすると静かに闘技場を下りた。
★次鋒戦★
ジェイリー(一回生) - アクセファ(四回生)
デリッカとグータッチして闘技場に上がったジェイリーは、やはり一度二度と軽く跳んで脱力をし、停止線で静かに構える。アクセファは先程と同様、木剣を二度三度と大きく円を描くよう回してから構えた。このアクセファの構えは彼女のスタイルなのかもしれないが、やはり相手を挑発しているようにも見えるのだ。ジェイリーの表情は防面で見て取れないが、木剣の先がぴくりと動いた気がした。
「試合、始め!」
主審合図の瞬間、アクセファが打突一閃。まるで見切っていたジェイリーは軽く木剣で往なし、さらに鋭い打突一閃をお見舞いしたのだ。剣先はアクセファの喉元に吸い込まれると、ドンという鈍い音が会場に響いたのだ。
そしてドサリと倒れる音がしてようやく会場が静まり返ったのである。
「───打突一本、そこまで!」
ジェイリーほ右手を差し出しアクセファを起き上がらせると肩を抱いて何かつぶやき、一礼して闘技場を後にしたのだった。
★混合戦★
マリ・パティ(共に三回生) - ステファ・トトシス(共に三回生)
ジェイリーとグータッチして交代した二人は静かに停止線まで歩み寄る。そしてマリの右籠手とパティの左籠手が手遊びのように打ち合った、これはここ最近始めた二人のルーティンらしい。ステファとトトシスも停止線に歩みを止め、二度三度と軽く跳ねた。
「試合始め!」
主審の宣言で互いに木剣の先をカツカツ当てる。とうも吶喊が不利と思ったのかカウンター狙いだったのか、互いに機会を伺う戦法になってしまった。遅延行為を取られたくないのかマリもパティも積極的に打ち込んでいるが、相手側は警戒のため無駄打ちはせず防御を崩さない。
何度かの逡巡の末、マリとパティが同時にトトシスに飛びかかった。パティは時折上段構えでステファに威圧行為をして、トトシスとマリの一騎打ち、時々パティの加勢込みという激しい乱打戦が始まったのだ。
「胴あり、一本!」
トトシスに息も付かす気のない打ち込みでついにマリの放った引き胴が彼女を打ち抜き一本を上げることが出来たのだった。余程疲れたのか、トトシスもステファも立ち上がることが出来なかった。マリとパティはその二人に手を貸して立ち上がらせると闘技場で何故か握手して降りていった。
3−0、まさかのストレート勝ちを挙げた僕らは静かに控室に戻った。設置されてたベンチに腰掛けた僕らは防具を外すと手拭いで顔を拭った。出来れば副将戦『快速のアビー』と謳われた彼女とミノンを是非とも手合わせをさせたかったな。なにせミノンは新聞に『おかわりミノンちゃん』と渾名されたのだから。
どうも僕の預かり知らないところでミノンは新聞取材を受けおり、その時記者が屋台をご馳走してあげると言われたらしい。しかしミノンはおかわりまで要求したそうで、おかげこんなかわいい渾名が付けられたのだ。もちろん本人にはかなり不評だが。
「私だって乙女なんですよ! なんだかいつもなんか食べてるみたいじゃないですか! 私だって『冷蒼の剣』とか『氷結の薔薇姫』とかもっとカッコいい渾名がいいんです!」
と言ってたが、エド姉ちゃまもリーナ姫もこんな二つ名要らないと言ってた。こうなったら、勝ったら『どすこーい!』と言ったほうが……とアドバイスしたら大変なことになりそうなので、やらない。
「皆んなおめでとう、香茶をどうぞ!」
今回は控え選手だったラフェルはそう言って皆に声を掛け、カップを皆に渡し廻る。僕もそれを受け取り口にすると濃厚な甘い香りが鼻腔をくすぐる。そしてとても冷涼で爽やか味わいであった。
「ラフェルン先輩、なんか変な……いや、変わった味ですよねこれ」
「このラングステ名物なんだってさ!」
ミノンが訊くとラフェルは胸を張って応えた。
とはいえこの香茶、香りも味も非常にいいのだが、なんかバランスが変なのだ。例えるなら『ミントティのミルク割り』と言うべきか、もしくは『ミントフレーバーミルクティ』なのか。とにかく僕の口には合わない。しかしこの世の中『チョコミントアイス』というのもあるので好き好きなのだろうが。なお僕はチョコミントアイスは食べられない、どうしても歯磨き粉味にしか感じないからな。
「──でね、前にアンジェ先生、教えてくれたじゃないですか」
「ん、僕がラフェル君になんか言ったか?」
「名物に美味いもの無しって!」
「おい!」「ひでぇ!」「何よそれ!」「やっぱり良い感じなんですかぁ!?」
皆が僕らをにらみつける中、いたずらっぽく笑うラフェル。きっと味見した上で用意してくれたのだろう、確信犯だな。
「ご当地名物ってその地区の人らが好きな味で作るからさ、私たちの味覚とズレって出ちゃうのよね」
そう言ってジェイリーは美味しそうに香茶を飲んでいた。そして一つまた一つ溜息を付くと一気に飲み干した。
「私は好きかなこの香茶……、さっきの試合を思い出してたからスッキリしたよ」
「ねぇジェイリーちゃん、あの試合、苛ついてた?」
「ジョリー、やっぱ気付いてた? 剣先を振り回すなんて相手が格下だと思ってもやっちゃ駄目だよ。だからアクセファさんに『わざとじゃなくても挑発行為になるから駄目よ』とは伝えておいたの」
「でもあの打突、怖かったよ」
確かにあの鋭い一撃には鬼気迫るものを感じた、普段はケラケラ笑って過ごす普段のジェイリーとは違っていたのだから。この様に相反する二面性を持つ彼女の本当の表情はどちらなんだろうか?
「私、ジョリーに怖いって言われたら嫌だー、好きって言ってぇー」
そう言ってジョルジェとじゃれ合うジェイリーを見てミノンも参加して飛び込んでいった。
「私も混ぜてー、飛びつくー!」
「ミノっちやめてー!」
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