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『少女世界攻略記録』  作者: けゆの民
『少女世界攻略記録』<終章>
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845◇望みを願う機械の大惑星:奇跡



イシュタム・コヨルシャウキという存在。

気のせいじゃなければ、殺してからのほうが名前の登場回数増えてるんじゃないか?ってくらい私達全員に関わってくる害悪の名前。


私は観察と観測の話あたりだし、ラスティは科学文明の到達点のひとつ同士。

アリスは間接的であるものの、政争をしたことがあるらしいし……そして今回。セリアは過去に友達を殺されたとかいう最悪経歴を持っている。


落ち着いて整理すればするほど、この世界に悪影響を与えまくってる“最悪の象徴”ではあるんだけど……


リルトン(・・・・)の言っていた『賭博の神王(マクイロコチトル)』の話を組み合わせると納得出来る部分が出来てしまうのも事実。



リルトンの語りを流用するのならば、こう。


──『希釈本厄』イシュタム・コヨルシャウキと『凛魁賭博(りんかいとばく)』マクイロコチトル。


異常存在(エネステラ)としての完成度を比較するならば、比べるべくもなく『希釈本厄』の圧勝よ。

物事を俯瞰的に、そして喜劇的に操作するその心根から始まった、それを裏付けるように所持している異常技能の数々。

通常の異常存在(エネステラ)とは違い、時が流れるにつれ強大になっていく異常存在にとっての異常。数多の同胞を殺し、吸収していく発展寄与。


対して、『凛魁賭博』はといえばその真逆。

自分の世界を保持して、その内側での法則固定をしてくる論外。私としては『希釈本厄』よりも好みではあるけれど、『希釈本厄』よりも殺したい相手。


そんなリルトンの評価。

好きなのに殺したいとかいうヤンデレ発言はこの際置いておいて、重要なのはこの続き。


──『臨魁賭博』曰く、『希釈本厄』は文明裁定機(ラストホープ)後継機(サクセサー)でもあり試作機(プロトタイプ)でもある……花奈(あなた)ならわかるでしょう?あの機人の相棒さん?


そう言われた、ってことが重要。

前々からラスティとイシュタムが何らかの関連性を持っていることは知っていた。科学文明時代の魔法最先端と、魔法と科学の融合最先端。

でもそれが、後継機だとか試作機だとかって話までは聞いていない。


そしてさっき言った『繋がった』、というのはラスティがセリアの過去を暴けって言った理由。

どうせ、って言うのもあれだけど……セリアの過去を聞けば、イシュタムの最悪話が掘り出されるんでしょうね。


だからそこから、後継機兼試作機でもあるラスティの異常性を認識して、彼我の距離をきちんと測り直して欲しい──とかそこら辺でしょう。


何も変わってない。話が進展してない、って言ってもいい。

ラスティは未だに変わって……変われていない。


「じゃあ、クリア報酬だけもらうわよ。それで……『観察』と『裁定』が似た物だとして。だからラスティが離れる必要はあって?」


クエストなんて後からクリアして、帳尻を合わせればいい。そっちのほうが過程も結果も幸せになるんなら、因果の関係程度逆転してあげようじゃない。

こっちには幸運にも『観測』って反則技があるんだしね。


「…………私がいる限り」


「ラスティがいる限り、影響を受けて『観測』がなくならない?そんなことない。それに──観察だの裁定だの、たかが人類の能力如きで影響を及ぼせる、なんて思いあがるな?」


私の使っている『観測』は、本来宇宙の……世界を確定させる為に用いている特大の錨みたいなもの。失われれば“確定性”という概念すら消滅しかねない世界規模の重要機能。

まあ秘神が持ってるから投げ飛ばしたり売り飛ばしたりしたところで、その最悪は発生しないけれど──それぐらいの規模感だっていうのは変わらない。


それを数千年積み上げた人類の最高傑作如きで影響させよう、だなんて烏滸がましいにも程がある。


私は実情とは異なることを雄弁に、確信を持って語っていく。

実際は怪しい。『観察』っていう類似能力が周囲に存在していることにかこつけて復活(・・)とかしてくる可能性もあるけれど……そんなの、どうとでも出来る。

伊達に十六年『観測』を持ちながら生きてないからね。


というか、最近セリアが何か『観測』関連の技能を使えるようになってるんだかなってないんだか、って段階なんだから……排除するならラスティじゃなくて、真っ先にセリアのほうでしょう。


そうしたら晴れて私とアリスだけに──オマケ枠としてリルトンもいるのかもしれないけれど──なる。

そんな状態で『観測』を何とか出来る気がしない。絶対ろくなことにならない。私とアリスがメインで色々構築したら、確実に大惨事になる。


セリアとラスティ、二人とも揃ってないとお話が終わらないどころか始まりすらしないのよ。


「残念ながら途中下車及び、こんな理由での関係性値の減少なんて認めません。謎の気遣いをするくらいなら、最初から言ってください」


少しだけセリアの口調を添加して、ラスティに抗議をする。


「……無理ですね。あーあ、無理そうです。折角花奈(マスター)のためを思って引き下がってあげようと思いましたが……ラスティリアとして。改めて相棒の座(・・・・)に挑戦したくなってきました」


多分その台詞、相棒より恋人のほうが似合ってるぞという突っ込みは脳内にしまっておく。

一応ラスティ的には格好つけてるっぽいから……


「勝手に相棒の座から降りるのやめてくれる?……いや、ならこうしたらお互い納得出来るか」


思考を回す。妥協点が最良になる結末を分析結果が読み取る。


「必然的な相棒関係。作為的な相棒関係の座からは降りて貰おうか。挑戦(・・)してもらうのは、純然たる奇跡の巡り合いによる相棒関係」


確かにラスティリアという存在は、『異世界転移人』がすんなりと魔術文明に馴染めるように。違和感を持たないようにするための楔だったのかもしれない。むしろ、事実としてはそれ以上の存在だということは予測出来る。


感情を搭載した機械──それも大量のロマンを抱えたラストホープが存在することで、『異世界転移人(わたし)』の視点からすれば、ここはゲーム世界になる。

まるで、自分が主人公となったVRデスゲームのような感覚を抱ける。

しかも、相棒(ラストホープ)は馬鹿強いっていうんだから、安心安全設計。安全圏からゲーム世界を楽しむことが出来る。

そして、想像力という天世(あまのとき)の人に許された特権を用いれば──想像力が魔法の根源である以上──即時的に強くなる。


そして一定段階まで行けば、『AI』を倒させて『神』を殺させて……うんうん、納得が行く。そういう設計の物語を作ろうとしていた、ってプロットは理解できた。

その上で万が一誘導役(ラストホープ)が上手く行かなかった時の代替手段まで用意してた、ってのが最近知った事象から推測出来る事実。


その場合、イシュタムあたりが代役を勤めたんだろうね。ラストホープとは違って、常に敵である誘導役。“勇者冒険物語の序盤で出てくる故郷の街を焼き払った因縁の敵”みたいな立ち回り存在として。


天整統がどこまで仕組んでいたのかはさておき、ラストホープが機能不全に陥った時の予備プランぐらいまでは考えてそう。仮に考えてなかったにしても、魔術文明に至るまでの道すがらで、それが計画(プラン)になっているはず。


妥当な落とし所としては、天整統は『ラストホープの予備プランをエネロジスティクスがつくるように誘導した』とかかな。


故に、ラスティとの相棒関係は何十にも仕組まれた必然の糸の上だった。定められた運命だった。予定説的出逢いだった。


改めてそこまでを納得して──今この瞬間、全てを棄却する。


「『観測』というのは実験分析機構である。既知の巡り合わせでは予測可能故に、実験するに値しないと考える」


実際にそんなことを考えているのかは知らない。

でも、『観測』という未知を記録する装置からしたらわかりきったものより、わかりきってないものを記録することに能力を使うべきものだろうということは容易にわかる。

それ故の発言。十六年の間付き添った片瀬花奈の『観測』分析。


「私の……片瀬花奈の意見としては、決められた運命ほどつまらないものはない。古代から決まっている路線なら、今を生きる我々が新しく引き直して行きたいよね!」


石橋を叩いて平凡な道を歩くくらいなら、爆弾で川も橋もまとめて吹っ飛ばした方が楽しいに決まってるでしょ!

後先のことなんて、その“後先”になってから考えればいい。その時になってから分析しても間に合ってしまうのが──私の持ってる観測(道具)の能力なんだから。


「つまり、必然じゃなくて偶然と言い張れる関係性を構築しようぜ、ってこと!」


普通なら真逆なんだろうね。いつ如何なる時も、何度世界が巡り巡っても変わらない確定運命を追い求めるんだろうけど……生憎とここは特異点(シンギュラリティ)なもんでね。

必然ごときじゃあ満足出来ない最高の環境に置かれてるのよ!


「計算尽くめの確定未来よりも自由自在。予測可能な宇宙よりも波瀾万丈。なるほど?ラストホープとしては論外甚だしいですが……ラスティリアとしては、好みも好み。論の外で結構!それでこそ花奈(・・)です!と返答しましょう!」


普段の調子を取り戻してきたラスティが流れるように言葉を紡いでいく。

こういうところもちょっとイシュタムの関連あるのかな?と今なら思ってしまう。


「ふっふっふっ……お互いの望みが叶いますよ!叶い叶って願いを望み見ることすら難しくなるほどの大成功です!この返答、この瞬間っ、この未来は──それはもう、完璧なまでに見えてなかったに違いません!」


「安寧から抜け出す。平和的確約未来をぶち壊してまわる大彗星!やっぱり、花奈は沈黙の惑星(わたし)にとっての希望の彗星(あいぼう)ですよ!」


「くふっ、ふふふっ!たかが早生まれしかアドバンテージのない遺物達に一泡も二泡も吹かせてやりましょうよ!目指せシャボン玉満開花畑ですよ!」


あれ?ちょっと?


ラスティのテンションが明らかにおかしいことになっているのを、肌で感じる。

これどこまで行くんだろうという純粋な疑問だけが、私の口から停止信号(コドン)を奪い去る。


「雨雲を操作し、大地を沈めるも隆起させるも自由だって思いあがった大馬鹿共を見返してやりますよ!私に自由意思を──遊ぶ余地を残したあいつらの負けです!大敗ですよ」


さてはラスティ、製作者一同のこと嫌いだな?

しかもかなり嫌いでしょ。割と笑顔で死に追いやれる程度には。


AIからは……もとい機械からは絶対見られないはずの暗い(かんじょう)を灯している瞳を見ながら、そんなことを考える。


「散々弄びやがったかわりの天罰!因果応報です!陰謀も予定説も知ったこっちゃありません!私は偶然(きせき)で巡り合った相棒と生きてやりますからね!」


誰に宣言してるの……?


「ですよね、花奈!ふふふっ、その為に挑戦で勝ち取ってやりますよ!」


あ、私かぁ……


 

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