都市 プロローグ5 村
男たちは檻から幼女を出して、入る時と同様俺の方は見向きもせずに、幼女を連れて
歩き出した。
「少し待ってくれ」
俺は男たちを呼び止めた。
男たちは俺の方を振り向かずに皆同時に足を止めた。
「俺はいつ出してもらえるんだ?」
俺はそう訊ねた。
男たち数名は無言で互いの目を合わせながら、何らかの確認をとると、その内の一人が俺の方を振り返らずにこう言った。
「明朝にもう一度向かう」
それだけ言うと、彼らは歩調を合わせてまた早足で小屋の外へと出ていってしまった。
幼女もそのあとにつづいたが、外に出る前に俺の方を一度振り返り、小さい声でこう言った。
「多分明日には必ず出してもらえると思いますよ」
「だといいがな」
俺はそう言った。
そして、とうとう小屋には誰もいなくなった。
弱ったセミの鳴き声がジリジリと響き渡っているだけだった。
そうなると俺は今、自分が置かれた状況に不思議と苛立ちを覚えた。
檻の前に突っ立っていた無言の監視役はとうに消えていなくなったし、男たち数名と共にあの不可思議な幼女も去って行ったので、一人で行動を起こすには好都合だろうと思った。
それなのに、何故だか気持ちが落ち着きなかった。
そして今、まさに空の色も少しずつ黒く変わろうとしていた。
空が完全に黒くなったら俺もここを出ようと思った。
空は予想よりも早く真っ黒になった。
俺はゆっくりと腰を上げると、先ほどと同じように、靴を脱いで、足を勢いよく鍵のかかった鉄格子にぶつけてみた。
すると始めにカン、とけたたましい音がして、それからカーーンと数秒間くらい余音が鳴り響いた。
鉄格子をみてみると、確かに格子が少し変形していたのだが、檻自体が壊れてしまうには至らなかったので、大層面食らった。
それは自分が思っていたよりもずっと頑丈な鉄格子だったのだ。
この調子で鉄格子を壊そうとすれば、自分の力で外に出るのに、あと一日くらい余計にかかってしまいそうだった。
俺はとりあえず脱いでいた靴を履いて、壁によりかかりながら欠伸をした。
結局、俺は穴を掘ることにした。
檻の床は、土でできていたので思いのほか簡単に掘れそうな気がしたからだ。
鉄格子が頑丈だったのは大きな誤算だったが、こうして虫の音色を聞きながら黙々と穴を掘るのも悪くない気がした。
穴を掘っていくうちに、特に目的もなく穴を掘っていた幼女の気持ちも少しだけ理解できた。
穴を掘って三十分程立つと、一人分が入れる穴を五十センチ近く深い所まで掘り進めることができた。
結局深さ一メートルくらいまでに到達したが、これ以上"深く"掘ってみることはやめようと思った。
単純に体力が消耗してきた、というのもあるが、これ以上深く掘る理由が見いだせなかったからだ。
そして俺は誰もいなくなった隣の檻に向けて、"横に"掘り進めることにした。
十分ほどで彼女が懸命に掘ってきたであろう穴と合流できたので、自ら穴に潜って、隣の檻に移った。
誰もいなくなったこの檻が無防備に開けられていた事は知っていたので、そのまま小屋の外に出ることができた。
小屋の外には案の定誰もいなかった。
完全に黒くなった空の中、俺はこれからどこに向かうか、落ち着いて考えてみることにした。




