↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

都市 プロローグ2 村

そこは確かに小屋だった。機能としては囚人達を収容しておく牢屋と

なんら変わりのないものだったが、それは牢屋と呼ぶには、あまりにも簡易的に過ぎたし

家畜を飼育する檻と表現する方がまだ適切だった。

俺は中年の男の怒りに触れ、その取り巻きともいえる若者五人に連れられ、檻に入れられた。

若者の内の四人は俺を檻に入れると、祈祷をするべく広場の方へと去ってしまった。

小屋に残された一人の男は俺の監視役なのだと予想できた。

「いつになったら出してくれるんだ」

俺は監視役の男にそうたずねた。

「まだ話す気力があるとな。この無礼者め」

「俺もこんな所で道草食えるほど、のんびり生きちゃいないのでね。なるべくなら一時間くらいで出してもらえると助かるのだが」

「それを決めるのはお前じゃない」

男はやや呆れたような口調でそう言った。

「お前か」

「違うな」

「それなら偉い人に早く出すよう伝えてくれ」

「命があるだけでも感謝しろ。第一、巫女様に無礼を働いたものは皆死ぬことになっているのだ。

今日は特別な日だから許されたのだ。よりにもよって祈祷を冒涜するなどと」

男はそうブツブツと言った。

「巫女様ねえ。あの幼女がそんなに偉いのか?」

「聞かなかったことにしてやる。次言ったら首が飛ぶからな」

実際、巫女とはいっても白装束に赤い袴を纏っているだけで、十代そこらの少女と何ら変わりはない。

壇上で話すだけのことはあって、年齢の割にはしっかりしていたし、手際の良さを備えていたのは確かだが、結局のところ、あの年齢では物事の道理や分別もまだついてはいないだろう。

「巫女様はいかにして、こうにも崇拝されるに至ったのでしょうか」

「お前に教える義理はない」

「つれない奴だ」

このような堅物と豚小屋のような場所で過ごすのは、退屈極まりない事だ。

それでもわけのわからぬ祈祷をさせられるよりは、幾分とましなのかもしれない。


それから暫く沈黙が続いた。正確には俺が何かを尋ねるたびに、男は無言を貫いた。

「お前、暇じゃないか?」

檻の向う側にずっと立っている堅物な男に、俺はそう問いかけた。

「……」

「暇なんだろ」

「悪いか」

「だったら俺の話に付き合え」

「無駄話はしないよう、言われている」

「まったく律義な奴だな。俺以外誰もみていないというのに。ここで宴を開いたってバレやしないぞ」

「そういうの。よくないと思います」

瞬間、ここにいるはずのない人間の声を間近で聞いた。

俺は条件反射的に、すかさずポケットから刃物をとろうとしたが、今それを持っていないことに気付いた。

その声の主は、間違いなく気配を完全に隠していた。

俺は職業柄、他の人間に比べて、ずば抜けて人の気配を読むことに慣れていた。

だからここに俺たち二人以外の人間がいるという時点で、気味の悪い事であり、実戦なら死んでいた可能性もある。

何故なら俺が平常状態において感知できない人間と言うのは、俺より何枚も格上の殺し屋の類に違いないからだ。

しかし、最も驚くべきなのはその声の主が、その声から考えてみて幼女を思わせたことだ。

少なくとも、俺が最近目にしたどの女よりも若い女だろう。

あの巫女よりも若いはずだ。

俺が思考を巡らせている矢先、俺の隣のまだ誰も入っていないはずであろう檻の地面と同化した、藁でできた大きな敷物が動いた。

そして垣間見えた穴から幼女がひょっこりと顔を出した。

幼女であったのはまさに俺の予想通りだった。

「見てないからってズルはよくないですよ」

幼女は俺に向けてそう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。