第16話 悪役令嬢の評判を利用したい人
エレナがその噂を初めて知ったのは、朝食の席だった。
焼きたてのパンへ蜂蜜を落としていたところで、ミナが新聞を一部だけではなく三部も抱えて食堂へ入ってきたのである。
「お嬢様」
「その顔を見る限り、楽しい朝刊ではなさそうね」
「私は今日は新聞を燃やしてもよろしいのではないかと思っております」
「駄目よ。屋敷の中で燃やしたら煙が出るでしょう」
「問題はそこですか?」
ミナは不満そうに言いながら、三紙をテーブルへ並べた。
どれも王都でそれなりに読まれている新聞だったが、第一面の記事は違う。それなのに社交欄や市況欄の端に、よく似た内容の記事が載っていた。
エレナは最初の一紙を手に取った。
見出しは、ずいぶん刺激的だった。
――婚約破棄された元王太子妃候補、隣国第二王子のもとへ。
そこまでは、まあいい。
正しくは王太子妃候補ではなく元婚約者だが、新聞というものは短い言葉を好む。
問題は、その下だった。
――王家の内情を知り尽くした「悪役令嬢」が、レーヴェルト王国外交使節団へ正式加入。王宮在職時代に得た外交情報を利用し、五か国通商制度の再編へ関与しているとの情報もある。
エレナはパンを置いた。
「在職時代という表現も変ね。私は正式な官吏ではなかったのに」
「そこへ引っかかりますか?」
「ほかにも引っかかっているわよ」
二紙目。
――捨てられた令嬢の復讐か。祖国の通商情報を隣国へ?
三紙目はさらに酷かった。
――地下文書庫の鍵を握っていた女が、今度は外国王子の右腕に。
「……右腕」
エレナが思わず呟く。
「そこですか?」
「いつの間にそこまで昇進したのかと思って」
「笑っている場合ではございません」
「笑ってはいないわ」
実際、腹の底は少し冷えていた。
単なる恋愛絡みの悪口なら、放っておいてもよい。
婚約を破棄された女が別の王子へ近づいた、という話は、社交界が最も喜びそうな形だ。エレナが何を言おうと、好きな者は勝手に脚色する。
だが記事には、気になる記述が混じっていた。
五か国通商制度。
共通商人資格。
保証制度の見直し。
正式公表されていない段階の内容まで、曖昧ながら触れられている。
「ミナ。この新聞、発行日は全部今日よね?」
「はい」
「昨日の夕方までは?」
「少なくとも屋敷には、そのような噂は届いておりませんでした」
「三紙ほぼ同時……」
偶然かもしれない。
大使館が一部の商人や港湾関係者へ制度案の概要を見せたのだから、そこから話が広がること自体はおかしくない。
しかし、記事の中には一つ、明確な嘘がある。
エレナが王宮の内部記録をレーヴェルトへ持ち込んだ、という部分だ。
それはしていない。
むしろ契約段階から利益相反を避け、祖国とレーヴェルトの直接対立案件には関与しないと決めている。
「この三紙、似た言い回しがあるわね」
ミナも覗き込んだ。
「『王家の内情を知り尽くした』というところですか?」
「それも。でも、ここ」
エレナは指で文章を示した。
三紙とも、多少表現を変えながら同じ筋書きを使っている。
王宮で秘密文書を扱っていたエレナが、婚約破棄を恨み、隣国へ情報を持ち出し、その知識を利用して通商交渉へ影響を与えている。
事実と嘘が、非常に上手に混ぜられている。
全部が嘘なら否定しやすい。
だが、エレナが第三文書庫の鍵を持っていたことは事実。
レーヴェルトで働き始めたことも事実。
五か国協議へ関与していることも事実。
その間を、証拠のない「復讐」でつないでいる。
「上手ね」
「感心なさらないでください」
「感心しているのではなく、嫌なやり方だと言っているの」
エレナは三紙を重ねた。
昔から知っている。
一番信じられやすい嘘は、全部を作り話にしない。
九割の事実の間に、一割だけ都合のよい意味づけを挟む。
そうすると、人は自分で残りを補ってくれる。
そして何より。
エレナ・ヴァルハイトは悪役令嬢である。
その下地が、すでに十年分ある。
「悪女なら、それくらいするだろうと思わせたいのね」
口にした言葉が、自分で思ったより冷たかった。
◇
レーヴェルト大使館へ着くと、すでに新聞の件は共有されていた。
いつもの会議室に入るなり、ハインツ大使が机へ四紙目を置いた。
「こちらは昼前に出る予定だった号外の見本です」
「もう一紙増えたのですか」
「ええ。もっと刺激的になっております」
エレナが読もうとすると、ルシアンが先に紙を裏返した。
「読まなくていい」
「確認しなければ対応できないでしょう」
「内容は把握している」
「なら私にも見せてください」
「気分のいいものではない」
「殿下」
「何だ」
「私の記事です」
しばらく目が合う。
ルシアンが折れた。
「……分かった」
紙を戻す。
そこには、エレナが王宮の地下文書庫から通商交渉記録の写しを持ち出し、レーヴェルトへ提供した疑いがある、と書かれていた。
さすがに、エレナの表情も変わった。
「これは明確な虚偽ですね」
「ああ」
クララが硬い声で答えた。
「法的には名誉毀損だけでなく、国家機密の不正取得を示唆しています。放置できる内容ではありません」
「情報源は?」
エレナが尋ねる。
ティアナが複数の紙を出した。
「新聞社へ問い合わせましたが、情報提供者は明かせないと。ただ、最初に出回ったのは新聞ではないようです」
「では?」
「昨夜から、王都の酒場や商人宿で小さな刷り物が配られていたそうです」
一枚の粗い印刷物が卓上へ置かれる。
値段の安い紙。
発行者名なし。
文章は短い。
しかし筋書きは、朝刊とほぼ同じだった。
「これを新聞記者が拾った?」
「おそらく」
「誰が配ったかは?」
「まだ分かっていません」
エレナは最後まで読んだ。
途中で、目が止まった。
「……ここ」
「何だ?」
ルシアンが横から見る。
「『外国商人に共通資格を与え、各国の保証人制度を廃止する計画』と書かれています」
「それが?」
ヨハンが首を傾げた。
「保証人制度を見直す話は、現場へ示した概要にも入っています」
「廃止する、とは書いていません」
エレナが答える。
室内の空気が変わる。
「私たちの案は、共通保証制度と既存制度を一時並存させるものでした。段階的移行を検討している。いきなり廃止する案ではありません」
「つまり、誰かが意図的に強い言葉へ変えた?」
メリアが言う。
「その可能性があります」
「しかし商人へ説明したとき、口頭で誤解された可能性もあるでしょう」
ゲオルグの指摘に、エレナは頷いた。
「あります。だからまだ内部漏洩とは言えません」
決めつけない。
怪しいものを、証拠より先に犯人へしない。
自分で決めた原則だ。
「もう一つあります」
クララが別の紙を指した。
「こちらには、『エレナ嬢は通商制度案作成の報酬として、レーヴェルト王国から上級官僚三人分に相当する金銭を受け取っている』と」
「……三人分?」
エレナは思わずルシアンを見た。
「そこまで払っていない」
「知っています」
「なぜ私を見る」
「少し確認したくなりました」
「増額してもいいが」
「今はそういう話ではありません」
ハインツが額を押さえている。
「殿下、真面目にお願いいたします」
「私は真面目だ」
「だから困るのです」
少しだけ空気が緩んだが、エレナはすぐ刷り物へ戻った。
「給与額自体は契約関係者が知っていますね」
「限られています」
クララが答える。
「大使、殿下、私、会計担当、それから契約書を作成した書記官です」
「王宮側は?」
「あなたが別国から雇用されることは把握していますが、正確な額までは伝えていません」
「では三人分というのは推測か誇張でしょう」
エレナの実際の報酬は高い。
だが、こんな表現をするほどではない。
「問題は金額そのものより、印象です」
エレナは紙を置いた。
「『高額な報酬と引き換えに祖国の情報を売った女』という形へしたい」
「誰が得をする?」
ルシアンが尋ねる。
誰もすぐには答えなかった。
「候補は多いです」
ヨハンが言う。
「通商制度改革に反対する商会。ヴァルツの保証人組合。国内でレーヴェルトとの接近を嫌う勢力。単純に公爵令嬢を嫌う貴族もいるでしょう」
「王太子殿下との婚約破棄を面白がっているだけの者もおります」
ティアナも続ける。
エレナは少し考えた。
「目的を分けましょう」
「どういう意味だ?」
ルシアンが尋ねる。
「私を傷つけたい人と、私を仕事から外したい人は同じとは限いません」
言い間違いに気づき、エレナは言い直した。
「同じとは限りません。単なる悪口なら、恋愛だけを面白おかしく書けば十分です。でも今回の噂には、わざわざ通商協議の話が入っている」
「なら狙いは協議への参加資格?」
「少なくとも、その可能性を考えたほうがいいと思います」
ゲオルグが腕を組んだ。
「各国代表から『国家機密を漏らした疑いのある人物を会議に参加させるのか』と問われれば、確かに面倒ですね」
「疑いだけで外せば?」
エレナが尋ねる。
「今後も同じ方法が使えます」
「そういうことです」
自分の評判が悪い。
その事実そのものは、今さら驚かない。
だが、それを外交上の道具として利用されるのは別問題だった。
「まず大使館として、事実のみ公表する」
ハインツが言った。
「ヴァルハイト公爵令嬢が王宮機密を当方へ提供した事実はない。契約上も利益相反案件から除外されている。それだけでよろしいですかな」
「私への称賛は不要です」
エレナが答えた。
「『有能だから雇った』『信用している』なども、今は書かないほうがいいと思います」
ルシアンの眉が動く。
「なぜだ」
「擁護すればするほど、『外国王子が肩入れしている』という記事が増えます」
「事実なら言ってもいいだろう」
「殿下」
「何だ」
「今は我慢してください」
「納得がいかない」
「外交官でしょう」
「外交官でも腹は立つ」
珍しく感情が表へ出ていた。
エレナは少し驚き、それから困った。
自分のことで他人が本気で怒ることに、まだ慣れない。
「ありがとうございます」
「礼を言われると余計に腹が立つな」
「なぜです?」
「君が妙に他人事だからだ」
「私のことですが」
「ならもう少し怒れ」
エレナは刷り物を見下ろした。
「怒っていますよ」
「そう見えない」
「ではどうすれば?」
「新聞を破くとか」
「証拠物を破損しないでください」
クララが即座に止めた。
ルシアンは黙る。
エレナは思わず笑ってしまった。
「殿下のほうが怒っているではありませんか」
「そうだな」
「私は……」
言葉を選ぶ。
「慣れているだけです」
それを口にした瞬間、今度は誰も笑わなかった。
エレナ自身も、少し後悔した。
悪評に慣れている。
そう言えてしまう程度には、十年間言われ続けてきた。
「だからこそ、利用しやすいのでしょうね」
静かに続ける。
「『エレナ・ヴァルハイトなら国を売るかもしれない』と思う人が、すでにいる。最初から信じてもらう必要がないのです。昔の評判へ一つ新しい罪を載せるだけでいい」
ティアナが悔しそうに唇を噛んだ。
「酷いです」
「でも、使う側からすれば効率的です」
「そんな分析をなさらなくても」
「しなければ対処できません」
エレナは顔を上げた。
「私個人の名誉だけなら、ある程度は放っておけます。でも通商協議を止める道具にされるなら、仕事です」
ルシアンがじっとエレナを見る。
「仕事なら怒れるのか」
「……そういう言い方をすると、かなり嫌な人に聞こえますね、私」
「今さら気づいたか」
「殿下」
「冗談だ」
ほんの少しだけ、重かった空気が戻った。
◇
昼過ぎ、事態は思わぬ方向から動いた。
王宮から正式な声明が出たのである。
知らせを持ってきたのは、大使館付きの連絡官だった。
「王太子殿下ご本人の名義です」
「アレクシス殿下が?」
エレナは紙を受け取った。
文面は短かった。
エレナ・ヴァルハイトが王太子婚約者であった期間、王家に関係する複数の実務へ関与していたことは事実。
しかし婚約解消後、王宮の秘密資料を持ち出した事実はなく、第三文書庫の鍵も解任時に返却済み。
レーヴェルト王国へ国家機密を提供したとの情報について、王宮はそのような事実を確認していない。
そして最後に、こう記されていた。
――婚約解消の経緯と、国家機密の取り扱いに関する事実は別問題である。根拠のない情報によって一個人へ国家への背信を負わせることは、王家として認めない。
エレナはそこを二度読んだ。
「珍しいですね」
ルシアンが隣から言った。
「何がです?」
「君が同じ文章を二度読むのは」
「読み間違えていないかと思って」
「元婚約者が君を擁護するとは思わなかった?」
「擁護というより……」
エレナは少し考えた。
「事実を訂正した、のでしょうね」
それが一番正確だった。
アレクシスは「エレナは立派な女性だ」と言っているわけではない。
自分の婚約破棄を撤回してもいない。
ただ、していないことをしたことにはしない、と公に言った。
以前なら、そこにもっと感情を読み取ろうとしたかもしれない。
自分をまだ想っているのでは。
後悔しているのでは。
戻ってほしいのでは。
今は、そうしなかった。
「殿下が事実を事実としてお話しになったのなら、それで十分です」
「嬉しくないのか?」
ルシアンが尋ねる。
「嬉しいですよ」
「なら素直にそう言えばいい」
「でも、それ以上ではありません」
「それは誰に言い訳している?」
「え?」
「私か、自分か」
エレナは少しだけ眉を寄せた。
「時々、殿下は余計なところへ踏み込みますね」
「知人だからな」
またその言葉を使う。
エレナは反論しようとしたが、やめた。
「……少し嬉しいです」
正直に言った。
「十年間、私が悪いことになっても王家は訂正しませんでした。それが役目でしたから。でも今回、初めて『それは違う』と言われた」
「それなら嬉しくて当然だろう」
「ええ」
「それで戻りたい?」
問い方は淡々としていた。
エレナも、考えるまでもなかった。
「いいえ」
「なら問題ない」
「随分簡単ですね」
「感情が残っていることと、選択を変えることは別だからな」
エレナはしばらく黙った。
この人は時々、エレナ自身がまだうまく言葉にできていないことを、妙に簡単に言う。
「殿下」
「何だ」
「今日は百点に近いかもしれません」
「急にどうした」
「先日の採点の話です」
「七十点から上がったのか」
「ただし今の一言だけです」
「一日全体では?」
「まだ途中です」
「厳しいな」
「試用期間ですので」
ルシアンは笑った。
◇
王宮の声明が出たことで、新聞社の動きは変わった。
夕刊では「国家機密流出」の表現を撤回する社も現れた。
一方、恋愛絡みの噂はまったく消えない。
むしろ「王太子が元婚約者を庇った」「外国王子との三角関係」など、別の方向へ元気に育ち始めている。
エレナは夕方、それを見て新聞を畳んだ。
「この方々は、仕事を恋愛に変えなければ死ぬ病気なのかしら」
ティアナが吹き出した。
「読者が喜ぶのでしょう」
「通商制度改革より?」
「比べるまでもないかと」
「少し悲しいわね」
「私は通商制度の記事も読みますよ」
「ありがとう」
「仕事なので」
「そこは嘘でも読者としてと言ってくれてよかったのに」
二人で笑った。
しかし、問題そのものは終わっていない。
クララが調べたところ、最初の匿名刷り物は東市場だけでなく、河岸倉庫街、商人宿、さらに各国使節が利用する宿泊区にも配られていた。
無差別ではない。
五か国通商協議に関係する者が多い場所を選んでいる。
「社交界の悪口ではありませんね」
エレナが地図上の配布地点を見ながら言った。
「少なくとも、配った人間は誰に読ませたいかを考えている」
「さらに一つ」
クララが別の紙を差し出した。
「刷り物を最初に大量に受け取った宿の使用人から証言が取れました。配った男は、商人風の服装だったそうです」
「顔は?」
「覚えていない。ただし、袋に商会印があったと」
エレナは顔を上げた。
「どこの?」
「完全には見えなかったそうですが、円の中に三本線」
ヨハンがすぐ資料棚へ向かった。
数冊の商業名簿を調べ、やがて一頁を開く。
「同じ意匠を使う商会が三つあります」
「三つ?」
「そのうち二つは王都の国内商会。一つは――」
ヨハンの指が止まった。
「ヴァルツ公国の商業組合に加盟しています」
部屋が静かになった。
エレナはすぐに言った。
「まだ決めつけません」
「分かっています」
ヨハンも頷く。
「印を真似した可能性もありますし、荷袋を再利用しただけかもしれない」
「ええ」
しかし、線が一つ増えた。
保証人制度。
外国商人資格。
それによって利益を得ている組合。
そして制度改革からエレナを外したいかもしれない誰か。
「明日、もっと調べましょう」
ルシアンが言った。
「今日はここまでだ」
エレナが反射的に時計を見る。
「まだ契約時間が二十分――」
「その二十分で帰り支度をしろ」
「殿下」
「昨日約束しただろう」
「してはいません。追い出されただけです」
「今日は正式に追い出す」
「横暴ですね」
「高い給料には、定時で帰らせる権利も含まれている」
「初めて聞きました」
それでもエレナは資料を閉じた。
昨日より素直に。
鞄へ書類をしまいながら、朝の新聞を思い出す。
悪役令嬢。
祖国を裏切る女。
金で外国へ情報を売る女。
どれも、昔の悪評へ少し手を加えれば出来上がる。
これまでは、王家を守るために訂正しなかった。
否定すれば、誰が本当に失敗したのか明らかになるからだ。
だが今は違う。
沈黙する理由はない。
それでも、王家の秘密を暴いて自分の潔白を証明するつもりもなかった。
必要なのは復讐ではない。
事実と嘘の境界を、自分の手で引き直すことだ。
「殿下」
部屋を出る前、エレナはルシアンへ声をかけた。
「何だ」
「もし今後、正式な協議の場でこの噂を持ち出されたら、私から説明します」
「私が答えてもいい」
「いいえ」
「なぜ?」
「これは私の評判ですから」
ルシアンが少しだけ黙る。
「私の口で、していないことはしていないと言います。殿下に守っていただくだけでは、以前と形が違うだけで同じになります」
誰かが自分の代わりに背負う。
それをもう繰り返したくない。
「分かった」
ルシアンは短く答えた。
「必要なら横にはいる」
エレナは少し笑った。
「それならお願いします」
「前には出ない」
「はい」
「ただし、相手があまりに腹立たしい場合は保証しない」
「外交官でしょう」
「外交官でも人間だ」
最近、何度か聞いた言葉だった。
けれど今日は少しだけ嬉しく聞こえた。
誰かの悪評を都合よく使う人間がいる。
なら今度は、その悪評の持ち主自身が口を開けばいい。
十年間、王家のために黙っていた悪役令嬢は、もういない。
エレナは自分の鞄を持ち、定刻を少しも越えずに会議室を出た。




