第50話 2人の結婚式
オーレルム領の騒動が片付いてから暫くの時間が過ぎた。
結局揉めに揉めた王位継承問題は、第4王子のウィリアムが国王となる方向で決着がついた。
まだ11歳になったばかりのウィリアムでは若すぎるので、ギリアム宰相が摂政として補佐に就く事が決まっている。
自国の領地に訪れた危機とは言え、王子が立て続けに勝手な行動を起こした点がオズワルドの足を引っ張った。
救援に向かう行動自体は褒められた行為である。しかし同時にオーレルム領を優遇するのではないか、と感じた貴族達から疑問の声が上がった。
本来ならそこまで疑われる筋合いはないが、如何せん兄達の行いが悪過ぎた。元々王位に興味が無かったオズワルドは潔く身を引く。
結果あと4年間は王妃エメラダが国王の代わりを務め、その間はオズワルドがオーレルム領から補佐を務める形に落ち着いた。
必要とあれば護衛も兼ねたエストリアと共に、王都へ向かう方向で一応は落ち着いている。
ウィリアムはそんな兄を見て苦笑していたが、最終的には15歳になった時点で若き国王となる方向で合意した。
「漸くだな、エストリア」
「はい」
「やっとこの日がやって来た」
今2人は、オーレルム領の結婚式場で入場待ちをしている。純白のタキシードを着たオズワルドと、真っ白なウェディングドレスを着たエストリアが笑い合っている。
エストリアの背後にはルーカスとカイルの子供、幼い甥と姪がそれぞれリングボーイとベールガールとして待機している。
オーレルム領の結婚式は基本的にはごく普通の手順で行われるが、参列者が非常に多いのが特徴的である。
出来るだけ沢山の人々で祝うのがオーレルム領の結婚式だ。
特に領民から人気の高いエストリアの結婚式ともなれば、参列の権利を賭けた抽選は物凄い倍率となった。
招待状を賭けた争いにまで発展したと言う噂まであるぐらいだ。
「さあ、行こうか」
「皆が待っていますものね」
案内に従い2人が会場入りすると、割れんばかりの歓声と拍手が2人を出迎えた。身内も含めて300人程の人々が会場内に集まっている。
その参列者は様々であり、農村部の老人や要塞都市アルマーの街娘まで色んな立場の人々が祝う為にやって来た。
大変な出来事があったばかりでも、簡単にはへこたれないのがオーレルム領の人々だ。
むしろこの結婚式で盛り上がり、魔物の襲撃なんて過去にしてしまおうと考えている程に強かだった。
会場の外にも沢山の人々が、新郎新婦の姿を一目見ようと駆けつけている。そんな大層盛り上がっている中で、2人の結婚式は進められていく。
「新郎は誓いの言葉を」
「俺は貴女と、この地で生涯を共にする事を誓う」
司祭の前でオズワルドは跪き、エストリアの左手を取る。そして誓いの言葉を述べた後に、結婚指輪を嵌めた薬指のすぐ近くに口付けをする。
レアル王国では嫁入りする側、もしくは婿入りする側が誓いを立てるのが一般的な方式だ。嫁ぐ相手の領地に骨を埋める覚悟を見せる意味がある。
この誓いを破るのは非常に無礼な行為であり、離縁を告げらてもいないのに背いた者は再婚するのが難しい。
神の前で誓った約束をまた破る可能性があると判断される為だ。もちろんオズワルドにそんな心配はないが、自ら不貞に走ったアランの方はかなり苦しい立場にある。
結局レティシアからは婚約破棄をされてしまった。そんな兄とは違い幸せな結婚式を迎えたオズワルドは、熱烈な好意を隠しもせずにエストリアに向けている。
「新たな夫婦となった2人に祝福を!」
司祭の宣言と共に花びらが宙を舞う。会場に居た全員が大きな拍手を2人に送る。
これで結婚式自体は終了となるが、まだ会場の外にお披露目をしに行かねばならない。
そこまでやって本当の終わりと言える。エストリアをエスコートするオズワルドが会場から退出して行き、2人で仲良く会場の出口へと向かう。
入場した時とは違い、2人の薬指には夫婦の証が嵌められている。今まさに神の御前で夫婦として認められた事で、2人は本当の意味で家族となった。
本日をもってオズワルドは、正式にオーレルム家の一員となったのだ。幸せ一杯の2人は、会場を出て待っていた領民達の前に姿を見せる。
「皆、今日はありがとう!」
「皆さん、ありがとうございます!」
「「「わああああああああ!!」」」
領主一族の新たな門出を祝う人々が、各々祝う為に持参した花を空に向かって投げる。
式場の正面玄関前では、大量の花が宙を舞っていた。要塞都市アルマーに住む人々、そして領内から集まって来た人々が口々にお礼の言葉を投げ掛けている。
一通り顔見せが済んだ所へ、白馬が引く純白の馬車が2人の前にやって来る。
この馬車に乗って都市内をぐるりと一周をして、新郎新婦のお披露目は終了となる。
オズワルドが先に乗り込み、エストリアを引き寄せる様にして抱き留める。
そうして2人を乗せた馬車は、ゆっくりと走り始める。お披露目が目的なので、馬車が進む速度は非常に緩やかだ。
馬車の中で2人は隣り合って座り、その手を繋いでいた。そしてオズワルドは、エストリアを見つめながら口を開く。
「遅くなってしまったが、これで俺達は夫婦だ」
「はい! これからも宜しくお願いします!」
紆余曲折はあったものの、ついに正式に夫婦となったエストリアとオズワルド。
2人を乗せた純白の馬車は、ゆっくりと街の中を進んでいく。若い2人の幸福を街中にお裾分けしながら、晴れやかな青空の下を周って行った。




