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第31話 王都でのお披露目

 波乱に満ちた婚約式ではあったものの、無事オズワルドを守り切る事が出来たエストリア。

 国王への挨拶も済んで後は領地に戻るだけと思いきや、まだエストリアには参加せねばならない催しがあった。

 それは王都で暮らす人々へのお披露目である。


 第3王子とは言え、オズワルドが王族の一員である事に変わりはない。婚約が決まった以上は、王都で大々的に知らしめねばならない。

 という訳でエストリアは、花嫁衣裳に近い白基調の派手なドレスを着せられて馬車に乗っている。

 隣には再び王族の正装になったオズワルドが座っている。


 婚約のお披露目という事で、今2人が乗っている馬車は特別なもの。

 式典様に装飾が施された純白の馬車で、2人乗りになっている。乗車している人物が良く見える様に、屋根は最初から付いていない。

 バルーシュと呼ばれる馬車を、式典用に改良した王族専用馬車の1つである。


「あの方がオズワルド様の?」


「なんとお美しい」


「あんなに綺麗な人って居るんだなぁ」


 王都に暮らす人々がエストリアを目にするのは初めてだ。今まで知られていなかった、辺境伯家のご令嬢。

 その美しさはレアル王国でもトップクラスであり、お披露目の為に王城のメイド達が全力を出し最高の仕上がりとなっている。

 あまりの完成度の高さに、再びオズワルドが我を失いかけた程である。もう花嫁の姿としても十分通用する領域にある。


 普段髪飾りを使わないエストリアだが、今回は首元まである紅い髪を上げている。そこにはオズワルドが送った金色の髪飾りが留められていた。

 そのお陰でより大人びた印象を与え、普段以上に凛々しさが増している。メイド達が施した化粧も完璧で、派手過ぎない程度にエストリアの魅力を押し上げていた。


「オーレルム家のご令嬢って、熊みたいな女性だった筈じゃ?」


「噂なんてそんなもんだろ。あれが熊に見えるかよ」


「オレは旅商人に聞いた事あるぞ。凄い美人だって」


 王都の人々はエストリアの美しさに驚いている。ギルバートが流した噂は国内でも有名だったので、実際のエストリアの姿はやはり衝撃的な様子だ。

 ただ貴族達と違うのは、平民達の間では旅商人との付き合いがある事だ。市井では真実もある程度出回っていたので、それ程驚いていない者もある程度居る。


 真逆の噂が広まっていたのも有り、どちらが真実であったのかこれで示された形だ。

 ざわめく人々は様々なリアクションを見せているが、概ね印象は良好らしい。

 元々エストリアは心優しい女性であるし、その雰囲気は普段から出ている。


 性格は顔に出ると言われる事もあるが、エストリアは正に人の良さそうな顔をしている。

 彼女に対して、初対面から変な印象を抱く者は中々いない。


「王都の者達もエストリアを歓迎してくれている様だ」


「大丈夫ですか? 変ではないでしょうか?」


「変なわけあるか。他の男には見せたくない程に美しい」


 優しくエストリアの頬に触れるオズワルドの手は優しい。しかし向けられた視線には相当な熱量がある。

 好意を隠そうともしないオズワルドの言動に、思わずエストリアは赤面してしまう。

 そんな2人の様子を見ていた女性達から、黄色い歓声が吹き上がる。


 この一連の流れだけで、オズワルドの方が相当に惚れこんでいる事は十分国民達には伝わった。

 今まで一度も婚約者を持たなかった第3王子が、こうして婚約者を連れて戻って来た。

 それも少し年上の辺境伯家のご令嬢との婚約だ。熱烈に愛情を向ける年下王子の姿は、王都でも多くの女性達を喜ばせた。

 これにより暫くの間、年下の男性が年上の女性に愛を囁く物語が王都で流行する事になる。


「あ、あの、ありがとう、ございます」


「貴女はこんなにも綺麗なんだ、自信を持って良い」


「戦闘なら自信はあるのですが……」


 生憎と女性らしい生き方とは遠い人生を歩んで来たエストリアだ。綺麗だとか美人だとか、自分では良く分かっていない。

 オズワルドに自分が相応しいのかどうか、それについては良く分かっていないままだ。

 ただオズワルドの事は素敵な男性だと思っているし、向けられた好意には真摯に応えたい。


 それにエストリアだって、オズワルドの事を心から好ましいと思っている。

 自分と同じ様な価値観を持っているし、王子なのに畑仕事を手伝う姿を愛おしいと感じている。

 ただ初めての恋愛であり、上手く婚約者をやれているのか自信が持てない。だけど褒めて貰った以上は、こちらも返さねばとエストリアは考える。


「あ、あの! オズワルドも素敵な男性ですよ!」


「…………急に来られると衝撃が凄いな」


「あ、あれ? (わたくし)、何か間違えましたか?」


「そうだな、そういうのは2人きりの時にお願い出来ると助かる」


 こんな公衆の面前で、エストリアを抱き締める訳にはいかない。思わずキスまでしてしまいたい衝動に駆られたオズワルドだったが、何とかギリギリで耐え切った。

 なまじ花嫁の様な格好をしているだけに、エストリアの魅力は跳ね上がっている。


 美しい年上の想い人が、妙に可愛らしい事を言い出したのだ。オズワルドの理性に強烈な一撃を加えるには十分過ぎる。

 何とかリードする側として頑張ってはいるが、オズワルドはまだ18歳である。不意に可愛い姿を見せるエストリアに翻弄されてばかりだ。

 そんな初々しい2人は、ゆっくりと王都を巡っていった。

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