第240話 勇者を張り倒す
「何っ!?」
「隙あり!」
槍を両腕で弾き返す。
「行けっ!聖剣!」
『串刺しタイム。』
殺すなし!
聖剣の分身が襲い掛かり、勇者の両足を貫く。
「いっ!いっでぇぇぇぇ!!ぐぎゃぁあぁ!」
めちゃくちゃ痛そうに両足を抑える。
痛みに慣れていないと見た。普通だけど。
「『連打掌』!!」
抜き手を使わない拳の連撃を放つ。
痛みに目の前が見えなかった勇者に避ける術もない。
当然、俺の拳も当然敵を捉える。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「なぁ!あびぃ!ぶべ!ぶへ!」
勇者へ容赦ないタコ殴り劇の末、その場で倒した。
「おやめ下さい!!」
聖女が魔法ステッキを持ち、俺の前へと立ち塞がる。
『彼女はもしかして。』
ま、その可能性あるな。
過去エピソードに興味は無いが。
「ソイツが何をしたのか、解っていんだな。」
「はい。」
「・・・・それでどうするよ?」
「私が守ります!私の意志で!」
やっぱり。
初めっから魅了されていなかった。
聖女は自分の意志でコイツに従っていた。
ただの恋って訳ではないな。
「魅了は解けたし、それにウチの相棒が封印したからな。
暫くは大丈夫だろ。
あんまりスキルや魔力に過信せず、精進しろって言っておけ。」
俺はその場を振り返らずに去った。
『甘いですね。』
アイツら諸共消滅させるか?
勇者関係、聖女の在り方が解らない以上、下手に消す方が怖いぞ。
もしかしたら、対神たちの切り札で用意されたのかもしれんしな。
『珍しく冴えていますね。
それでもマスター、私、青龍がいれば補えますが。』
それでもだ。カードは多い方が困らない。
ギルドの奴らもだが、着々と力を付けている。
『来るべき日のためですね。』
何が来んのか知らんがね。
ただまあ、強いて言うなら楽したいからかな。
「キャスト!!凄かったぞ。」
パチパチと小さな祝福を祝ってくれるクーリアさん。
「この犬も改めて感心致しました!」
自分を犬とは。
高度プレイは俺にはキツイ。
「ありがとう。2人とも。
勇者を沈めたけど、まだ帝国の脅威が減った訳ではない。
このままできる所まで足止めをしていこう。」
「了解した。」
「かしこまりました。」
2人のお姉さんが居れば大丈夫ではあろう。
結局、これ以降進行は停滞していき、最終的には撤退していった。
意外にも呆気ない結末に拍子抜けした。
帝国の実力者たちも黒狂族には勝てないと判断したのか、戦力を削らない方針へと移行したのだろう。
「聖王国まであと少しか。」
移動自体は時間がかからない。
ナスティラさんのお陰である。
全員をまとめて魔法移動させるなど、化け物の所業ではあるが。
一度、本人が場所を覚えてしまえば後は自由だ。
この日を境に4種族が聖王国へと加入した。
「受け入れ態勢の良さに俺は驚いているわ。」
「それは、元々エラルドたちと打ち合わせをして決めていたでありんしたから。」
「ほんと、俺ただのでくの坊や。」
「クスクス。そんな事ありせんよ。
キャスト様というご主人様がいたから成り立った国ですから。」
何という不敬な事を言うのだろうか?
俺というより、紅髪嫁の仕業なんだがし。
どちらかと言うと、押し付けられているに等しい。
「にしても、キュルキが総監督をしているから経済がしっかりと回ってるね。」
「これはこれは、ありがとうございます。
戦う事が苦手な分、わっちはこちらで活躍しなくてはいけないので。」
「でも、我が家とのやり取り、法国での管理も同時にやってんだろ?」
「そこに関しては部下を数名使ってありんして、それにマートンも動いているでありんすえ。
わっちに掛かる負担も然程のものではありんして。」
頭も良いし、要領も良いときたな。
ウチのアホ共に爪の垢を煎じて呑ませてやりたい。
「キュルキが俺の財布を握ってくれた方が安心だな。」
「それはお嫁に迎入れて下さると?
それはとても歓迎したいお話ではありんす。」
『何しれっとプロポーズ決めてんですか?』
『まあ、いいじゃねえか。女も増えたんだ。
なら、嫁も増やさないとな。
強き者であればあるほど、女の数も多くねえと。』
復活早々とんでもねえ事言わないで。
後、プロポーズってもっとかっこいい台詞の筈だから。
『マスターの発言は大体プロポーズに関連します。』
的が大き過ぎませんか?
何はともあれ、受け入れ状態が進み、住居地区の確保や働き先の手配を順調に行なっているそうです。
クーリアたちは国の護衛というか、俺の直属部隊となった。
理由は強過ぎなのと、全員言う事を聞かないから。
ルルの方が聞き分け良い。
俺が居なく、不要な時は周辺の護衛と戦闘訓練を行うように指示した。
後はエラルドたちにポイッで。
『後で緑に恨まれんぞ。』
『痛いしっぺ返しが醍醐味らしいです。』
誰がドMやねん!
「キャスト様。アリシア様たちとはご連絡は取られましたか?」
「まだ。どう説明しようか迷ってる。」
ディアが何故か聖王国にいる。
それは別に問題ではないが。
学園に残してきた護衛嫁たちにはどう説明しようか。
「キャスト。また一段と強くなったな。」
「ベルナーレも気迫が凄いというか・・・」
凄くガテン系になってる。
筋肉って言うむきむきでは無いが、何かこう。漢らし過ぎと言うか。
「キャスト様。お久しぶりです。」
「アマギ。久しぶり。」
アマギさんと久々の対面や。
インテリメガネが似合う。バリバリ仕事をこなす人その者だ。
『事実こなしています。』
『女で仕事ができんのは男としては当たり前だからな。』
肉食動物の価値観を押し付けないで。
「どう?聖王国は。」
「受け入れ人数が増加したため、物資、住まい、金銭の問題が発生しますが、同時に働き手が増えたので問題ありません。
それと、生産系にも大きく手を伸ばせそうです。」
俺のために解りやすく解説をしてくれる。
『数字が幾らとか、生産数が何%とか言われてもピンとは来ませんからね。』
『プスプス・・・』
もうショートしている龍がいる。
「アマギとキュルキで上手くやって行けそうだね。」
「問題ありんせん。」
「はい。」
・・・・・・・・あーはいはい。
ご褒美タイムらしい。
「そろそろか。」
ご褒美タイム後は受け入れ態勢を再度確認してから行かないと。
黒さんが暴れる前に。
「キャスト。・・・・雌の匂いがする。」
「クーリアさん・・・・・」
動物かよ。
『優れた能力は時に野生レベルまでに昇華される。』
「ここはキャストの王国だな。皆の笑顔が絶えない良い国だ。」
つい最近まで荒んでいましたよ。
どこかの誰かさんによって全て壊されましたけど。
「王よ。ここは何というか、色々と文化が入り乱れているね。」
「ミカエラの目線からもそう見えるのか。
なら、それは良い事だ。」
「キャスっち!」
「キャスト君。無事だったのね。」
「アミラ。サクラ。」
「当たり前だ。主君はどのような時であろうとこの私が守る。」
アミリアンに関してはいつか耳が生えそう。
ラーシャは龍耳とか丸出しだ。
「ククク。王君。私と今夜は一緒だね。」
ミシェイラに関してはもうインテリキャラ保ててない。
目が野獣そのものだ。
「これ以上は学園に行けなくなってしまう。」
「む。私たちも行くぞ。」
クーリアなら絶対そう言うと思った。
『どう切り抜けます?』
『力業だと死ぬぞ。』
それな。
また途轍もなく大きな壁にぶち当たる。




