72 現世:大聖堂3
■システィーナの視点
壁の大穴に突如できた光る蜘蛛の巣!!
稲妻でできた光る蜘蛛の巣!!
獲物を求めバチバチと稲妻の先端がうねり!
そこにバアルとバルログが!!
ギャリリッッギャリッ!!
ゴアアッ! アッアッアッ!
中心には! コックリと! ルシェリア!
頑張ってぇっ!
彼が時間を稼いでいる間に! 早く祭壇へ!
ああっでも大聖堂内はデモンやグールの死骸で!
障害物があって! 真っすぐ走れない!
「ああっサマラの魂がっ!」 アルシャが! 胸の繭を励ます!「頑張って! 頑張って!」
「フオオッ! すぐそばにバアルがいるからか!?」
バアルは魂の捕食者! その存在だけでも命とりに!
今回のミサを逃したらっ! もう後がっ!
じゃあっ! あんなに近くにいるコックリは!?
「コックリ!?」
「はっやくっ!」 バリバリッ!「迅雷のっ陣がっ! 続くうちにっ!」
迅雷の陣は! 足止めにしかならない!
足止めして、次の攻撃につなげる技っ!
あれだけ近いと!
あれだけ数が多いと!
次の攻撃ができないっ!
どうするのっ!?
ルシェリアも! 迅雷の陣の維持でっ! 手一杯!
どうするのっ!?
”はやくっ! はやくっ!”
「「はあっ! はあっ! あとっ! 少しっ!」」
私たちは魔獣の死骸を跳びっ!
大聖堂をかけっ!
ついにっ祭壇にっ!
「はぁはぁっ! コッ……クリ! ルシェ……リア!」
私たちはついにっ! 祭壇の前っ!
現世にいるサマラのっ肉体が横たわる場所へっ!
サマラを囲んでっ!
サマラからっ清廉な気っ!
「よっしっ! よくっ! 走ったっ!」
コックリが! 大きな背をっ向けたままっ!
向けたままっ!
とんでもないことを!
「聞けっ! 俺とっルシェリアを残しっ! 現世へ戻れっ!」
「「っっ!?」」
っっ!?
っっ!?
一瞬! 一瞬っ!
何を言ってるのか! 私っ!
何を言ってるのかっっ!?
「っっはああ!?」
はっ!? はっ!?
はああっ!? はああっ!?
「な、なにいってっっ!? っっ!?」
わたっ! いみっ! はあっ!?
はあっ!?
はあっ!?
「時間がっ! ないっ!」
”お行きなさい!”
「なっなっ!!」 わたっ! ことっばっ! つまっ! 「な! バッ! いっ!?」
なにっバカなこっ! いわないでっっ!!
「何をおっしゃるのです!?」
「バカな! 神殿騎士殿!? ルシェリアッ!? 正気か!?」
アルシャとクラウが! わたしのかわりに!
「正気だっ! 別のっ方法で! 俺たちは戻るっ!」 バリバリッ!
「「別のっっ!?」」
うそ! そんなほうほ! あるわけなっ!
「それはっ! 現世の怨念が満ちる場所からですか!?」
「そんなっ! 無謀な!! どこにあるかも分からないのに!?」
そのとき!
バルログッ! じょうはんしっ! いなずまからっ!
ゴアッ! アッアッアッ!
「勝手にぃっ!」 コックリ! みぎて! くろいけんっ!「出んなぁっっ!!」
ドバンッ! くびを! からだを! ふきとばしっ!
「詳しくっ! 言えんっ! 行けっ!」
「うそつきっ! うそつきっ!」 うそつきっ!
「信じろ! 俺をっっ!!」
「しんじないっ!! しんじないぃっっ!!」
わたっ! ぜっきょ!
わたし、コックリのもとに! かけよろうと!
「来っるな!」 バリバリッ!
「フオッ待てっ!」 クラウが! うでっ!
「はなしてぇっ!!」 いやあぁぁっっ!!
「来るなっ! サマラの魂がっ! もう持たないっ!」 バリバリッ!
"先に戻りなさい! 私たちを信じて!"
「ならっ! わたしも! のこる!」 わたしものこるっ!!
「駄目だ!」 バリバリッ!「戻れる確率が減る!」
「「確率!?」」
いやっ! いやっ! ぜったいっいやっ!
あんなこといって!
ここで! さいごを……しっぬ、かくごを!
いやっ!! いやああっっ!!
「いやあああっ!! はなしてぇっ!」
「フオオッ! ダメだっ!」 クラウ! はがいじめっ!
はなしてぇっ!
かれのそばにいかせてぇっ!
ほかのほうほうがあるなら!
わたしもそれでかえるっ!
「はなしてぇっ! はなしてぇっっ!!」 うでをっひきはがしっ!
かけだしっそのときっ!
「俺がぁあっ! 死ぬ場所はああああっ!」 バリバリバリッ!
「!!」 びくっ!
コックリ! ひときわっ! おおきなっ!
「ここじゃぁあっ! ないっっ!!」 バリバリバリッ!
「!!」
かれは! せなかをむけたままっ!
さらなるいなずまが!
「俺の死ぬっ場所はああっ!」 ババババリバリッ!
「!!」
「お前のっ!! 胸のっっ中だぁっっ!!」 ババババリバリッ!
「!!」
わたっ! のっ! むねっ!
「数十年後っ! 老衰でっっ!」 バリバリバリッ!
「っ!?」
「シスのっ! 優しさにっ! 包まれながらっ!」 バリバリバリッ!
「!!」
「シスのっ! 柔らかさにっ! 安らぎながらっ!」 バリバリバリッ!
「っ!」
「シスのっ! 温もりにっ! 満たされながらっ!」 バリバリバリッ!
「!!」
「シスのっ! 匂いにっ! 癒されながらっ!」 バリバリバリッ!
「!!」
「シスのっ! 泣きながらっ! 頬笑む顔を見上げてっ!」 バリバリバリッ!
「っ!!」
「シスのっ! 温かい涙をっ! 頬にっ受けてっっ!」 バリバリバリッ!
「っ!!」
「シスのっ! 柔らかい頬にっ! 手を添えてっ!」 バリバリバリッ!
かれは! てきにむいたままっ!
わたしに! せをむけたままっ!
「眠るようにっ!」 バリバリバリッ!
「ぅっ!!」
「安らかにっ!」 バリバリバリッ!
「ぅうっ!!」
「シスだけを感じながらっ!」 バリバリバリッ!
「ふぅうっ!!」
「シスだけを想いながらっ!」 バリバリバリッ!
「ふううっ!!」
「生きて生きてっ! 生きぬいた俺がっ!」 バリバリバリッ!
「ふうううっ!!」
「最期にっ!! 魂と心と体を委ねる女性がぁっ!」 バリバリバリッ!
「っっっい!!」
「俺のっ! 最愛のパートナーのっ!」
「ぅぁっっっい!!」
「システィーナだあああぁっっ!!」バリバリバリバリッ!
「ぅああっ! はいいぃっっっ!!!」
わたしっ! わたしっ!! さけんだっ!!
ただただっ! さけんだっっ!!
「だからっ! だから、ここじゃっないっっ!!」
「はいっっっ!!」
ここじゃないっ!
彼はここじゃないっ!
私の胸のなかでっっ!!!
魂も心も体も私にゆだねてっっ!!!
「俺を信じっっ!!」
「はいっっっ!!」
「俺をっっ待てっっ!!」
「はいぃっっっ!!!」
彼の大きな背中がっ!
力強い背中がっっ!!
絶対っ! 嘘じゃないとっっ!!
「システィーナさんっ!!」
アルシャーネさんが!
サマラの透き通る体の上に!
サマラをくるんだ白い繭を持って!
「さあ皆で白い繭を!」
「「はいっ!!」」
私は泣きながら、白い繭を持って!
クラウと三人で、白い繭を持って!
「先に戻ってるっ!! 食事を作って! 絶対待ってる!」
「頼むっっ!!」
私たちは白い繭をサマラの体に重ねてっっ!!
「繭を解きます!!」
「「はいっ!!」」
白い繭がっ!
解けた瞬間っっ!!
パキイイイイインンン……ッ!
「「きゃああっっ!!」」
突然の耳鳴り!
激しい耳鳴り!
私たちは耳を抑えて!
身を屈め!
「ああっっ!」「ここはっ!?」「フオォッ!?」
目を開くと!
周囲は! 闇!
闇の中にいる!
コックリッ!! どこ!? コックリッ!!
でも!
次の瞬間っっ!!
ゴゥッ!!
「きゃっっ!!」「はぁっっ!」「フオッ!!」
突然! 清廉で霊妙な気が!
私たちを包むっっ!
「「あっっ!!」」
気がつくと!
目の前に仄かな明かりに照らされたサマラ!
簡素なベッドに寝かされたサマラ!
「ここはっっ!」「ああっっ!」「フオォッ!」
蝋燭の燃える独特の匂い……!
悲しみ、憂いを帯びたミサの詩……!
蝋燭を持ちながら長椅子に腰掛ける修道僧たち……!
主のいない、美しい大聖堂の祭壇……!
「「ア、アルシャーネッ!?」」「「ああっ! クラウディーア!!」」
慌てふためく大修道院長たちっ!
「大修道院長!」 アルシャが! 周囲を見て!「ここは! 大聖堂!」
「フオオッ! 戻って来た!」
その時、修道僧たちが!
「「ああっ! 聖女様!」」「「ああっ!」」「「戻って来られた!!」」
修道僧たちが次々に立ち上がり!
私たちの元へ駆け寄る!!
ダメッ!!
「ダメッ!! ダメェッ! ミサを続けてぇっ!」 私は叫んだ!「ミサを続けてぇっ!!」
「「えっ!? ええっっ!?」」 皆、その場で固まり!
「そ、そうです! ミサを続けて! 続けてください!」 アルシャが叫ぶ!
「ど、どうしたのです!?」
「ミサを続けてぇっっ!!」
「「ミサを! 続けてください!!」」
混乱の中、再び始まるミサッ!
コックリ! 無事でいて!
お願いっ! 無事でいて!
厳かなミサの音の中……
祭壇に横たわる少女が……
「うぅ…………ん」
目を覚ました……
次回、最終回です! いやー長かった!




