44 汚冥界:回廊
■システィーナの視点
コックリと別れて!
大聖堂の祭壇裏の通路を駆けると、暗闇の先に赤黒い光が。外だ!
そこは大聖堂と城壁に似た居住区の間の、狭い狭い空間で! まだ清らな雨が続いている!
周囲を見渡すと、デモンもガーゴイルもグールもいない!
「よし、魔物はいない! 進みましょう!」
クラウディーアさんはそういうと先頭に立って糸を追う。糸は建屋と建屋の隙間を通って、先へ続いている。霧雨が降り注ぐ天を見上げると、建屋と建屋のわずかな隙間から覗く赤黒い上空からは、ガーゴイルと思われる無数の叫び声が木霊していて! 姿はまだ見えないからまだ聖地までは到達していないはず! と突然、視界が開けて!
「ああっここは!」 アルシャーネさんが息を飲んだ。
建屋の隙間から出ると、あまりにも現世とは異なるけれど、あの場所に辿りついたの!
回廊に!
「これが回廊か! なんたる不気味さ!」
そう、クラウディーアさんがいう通りあまりに不気味で!
現世の回廊は美しい庭園を屋根付きの回廊が囲っていて、歩くたびに回廊の柱がリズミカルに流れていく作りだけれど……この回廊は本当に不気味で!
まずは庭園! 黒く歪んだ植物がモヤモヤと揺れ動いているの! この植物は何!? 海草!? 何で動いてるの!?
そして回廊! 回廊の柱も大聖堂の柱同様、亡者が叫んでいるような不気味なオウトツや歪みがあって……!
「サマラ……ここを通ったの……」 私は茫然とつぶやいた。
「はい、そうですね」 アルシャーネさんが私のつぶやきに返答した。そして私を見る。ああ、どうやら私たちは同じことを思ったみたい。「現世に連れ帰って、現世の本当の回廊を見せたいです」
「はい! 連れ戻しましょう!」
私たちは決意を新たに糸を追おうとしたその時、清らかな霧雨が止んだ。ああっ止んでしまった! すると突然異変が!
ビュッ!!
「きゃあっっ!!」
アルシャーネさんの腕に、黒いモノが巻き付いた! 何これ!? はわぁっ庭園でモヤモヤ揺れていた海草だ!
「嫌っ!」
「きゃあ! アルシャーネさん!」
危ない! アルシャーネさんが引っ張られる! ズリズリと庭園の方に! 私がアルシャーネさんの体にしがみつくと! ひゃあっ回廊の細い柱の間から、次々と海草が! 私の足にも、うわぁヌメヌメするっ!
「ひゃあっ! 気持ち悪いっっ! あつっ! あちちっ!?」
「痛っ! 肌がっ! 痛いですっ!」
うわぁっ! 熱い! ジュウウッと煙が! こ、これっヤバイ! 痛みとともに同時に力が!? 抜けてく!?
「「す、吸い取られてるっ!?」」
「このっ! 聖魔法、真空波!」
一人回避していたクラウディーアさんが手刀を振り上げるとズバンッと一気に薙ぎ払った! 海草がべロッとはがれて。よかった! でもイタタッ、ああ肌が赤くなって! これこのままだったら溶かされて吸収されてたんじゃ!? と、黒い海草が次々に襲い掛かってきた!
ビュビュビュビュビュッッッ!!!
「「きゃああっ!」」 私とアルシャーネさんは必死に避ける! でも何枚か巻き付いて!「「痛いっ痛いっっ!!」」
クラウディーアさんは盾で回避しながらメイスを持ち替えた! え!? 敵にぶつける鈍器(菱形の部分)を持ち手側に、柄の部分を上に向けた!?
「聖棍技、空裂の太刀!」
「「ひゃあっ!」」
柄の部分から透明な剣のようなものが! クラウディーアさんはその剣を振るってズバズバッと黒い海草を切り刻んでいく! ああ、聖魔法と武器の融合技は、武器によって効果が変わるのね!? コックリの真空波と剣の融合技と全然違う!
「最後っ! 聖魔法、雷火玉!」
クラウディーアさんは左手で盾を持ちながら大きく振りかぶると庭園に向かって手を突き出した! するとそこから稲妻がほとばしる球体がフォッと出て! 柱をすり抜けると庭園の黒い海草のど真ん中へ! 次の瞬間、バチバチッと音がなると一気に燃え上がった!
「やった! さすがクラウディーアさん!」
「ふおおっしかし煙が!」
「ああっこれはまた目立ってしまいますね!」
ああ、凄い燃え上がって! 黒煙が! それに臭い!
早く立ち去ろうと走りかけたその時、大聖堂の方からダンッ! ダンッ! という炸裂音が! ああっコックリの波動砲の聖魔法だ! コックリがデモンと戦ってる! よし、一刻も早くサマラの魂を保護しないと!
クラウディーアさんが再び戦棍の柄を持ちながら「さあ、行きましょう!」
「「はい!」」
コックリがいないと不安だけれど、クラウディーアさんがいれば大丈夫だ! そういえばコックリはふもとの町で「貴女は私よりも強いが弱点がある」って言ってたけれど! 大丈夫よね!
私は回廊を駆けながら前を走る戦士に声をかけた。「クラウディーアさん!」
「はっ!」
「コックリが言っていた貴女の弱点って、ないですよね!?」
「!」 クラウディーアさんは走りながらもどう答えたら良いものか考えているようで。「弱点のない人間はいません!」
「「え! じゃあ」」
あるの!? 弱点が!? コックリより強いのに!?
とその時、私たちは廃墟のような居住区の入口に当たった!
ああっ居住区への侵入口は汚泥のような壁にポッカリと口を開けて! まるで魔物の口のようだ!
糸は魔物の口の中へと続いている! ああっ何て不気味なの!? これは一人じゃ無理だっ! 怖くて入れないよ!? でもサマラは!
「サマラは、こんなところに一人で入っていったの?」
とても信じられない。入らざるを得なかったの? だとするとなんて可哀そうなの。早く助け出してあげたい! とアルシャーネさんが私とクラウディーアさんの手をつかんだ。
「皆で抱きしめてあげましょうね」
「「はいっ!!」」
私たちは決意を固めた。




