43 汚冥界:大聖堂
⬛システィーナの視点
汚泥と溶岩で作られたような大聖堂に入ったら……!
はわっ、真っ暗で……怖いっ! ああ何て不気味なの!
うぷっ! 何だか腐敗臭がこもってて……き、気持ち悪い! ああコックリの顔色が灰色で吐きそうっ! 大丈夫なの!?
心配していると、目が慣れてきて内部が見渡せるようになった。
ああ現世では縦に長い窓が壁にずらっと並んでいるんだけれど、ここは亀裂のような細い線が並んでいて……赤黒い光が、亀裂から差し込んで……ああ、不気味!
「汚冥界の大聖堂は……酷いもんだな」 コックリが吐き捨てる。
うん、本当それ。その酷い様に目を見張るのは、まずは柱。
目の前には現世の大聖堂のように、巨大な柱が二列並んで奥へと続いているんだけれど……
その柱の歪み方、オウトツのでき方は……まるで亡者の断末魔。
まるで亡者が断末魔を叫んでいるように、デコボコ歪み、穴が開き、熔けたように、滴ったまま固まった感じの柱で……!
さらに床も、まるで樹の根が複雑に絡まっているような、うねる海の波がそのまま固まったような……ああ、歩きづらい!
あとは長椅子。木の根のようなうねりが盛り上がって、長椅子のように並んで……うう不気味。
私は光の精霊を大聖堂の中へと飛ばした。するとその時!
シャアアアアアアァァァッ!!
「ひゃあっ!」
骨と筋の亡者が! 長椅子の陰から飛び出してきた! 亡者なのに動きが早いっ!
でもクラウディーアさんが一歩前に出て! 「チェストッ!」
ドゴッ! と戦棍が亡者の顔に吸い込まれ、頭部が粉砕消滅! ひゃあっ、頭部を無くした体が後ろに吹き飛ぶ!
「なんだコイツは! 他の亡者と違う!? 動きが早い!?」 クラウディーアさんは戦棍を肩に乗せた。
「これはグールです」
グール! グールは腐肉喰らいと言われていて、亡者ではなく生命体みたい! 負の生命体!?
「クソッ、汚冥界とはいえ、現世と重なる大聖堂には亡者は来られないと思っていたが。デモンやケルベロス、グールやガーゴイルは入れるのか!?」
「や、やっぱり汚冥界に安全なところって……」
そう、汚冥界に安全なところはないみたい! とその時、外からゴロゴロと音がして……雨の音が!
「ミサが始まった! 今のうちにサマラの糸を追いまっ! 何っ!?」
「あっ! ああっ!」 私はコックリの二の腕をバシバシたたいた! 「コ、コックリ! 見て!」
「「あっ!?」」
視線の先! 大聖堂の祭壇がある正面部分! ああ! たった今、突然光りだして! 淡く光りだして! 数十メートル先だけど、分かる! ハッキリ見える!
「「サマラ!」」
そう! サマラが! 横たわった状態で、祭壇の前に浮かび上がってる! まさかあれが!? サマラの魂!?
とその時! 柱の陰や長椅子の陰から、黒い何かが動いた!
シャアアアアアアァァァッ!! キイヤアアアァァッッ!!
グールだ! 数体のグールがまだ潜んでいて! ひゃあっ! サマラに向かって走り出した!?
「ふおおっ! マ、マズイ!」 クラウディーアさんが駆け出した!
「きゃああっ! サマラ!」
「あっ! 待っ!」
私たちも慌てて走り出した! ママ、マズイマズイ! グールにサマラの魂を傷つけられたら! どうなるの!?
薄暗闇の中、光るサマラに向かって邪悪そうな黒い人影が殺到する! ひゃあ、私たちも走り出したけれど! と、とても間に合わない! その時コックリが後ろの方で!
「待った! あれは……!」
その時! グール数体が、光を纏ったサマラに飛びかかった!
シャアアアアアアァァァッ!!ウギヤアアアアアアアアアアッッ!!
「「ええっ!!?」」
飛びかかったグールが! 突然断末魔の叫びを上げて燃え出した! ええ!? 青白い炎が乱舞して! 大聖堂の中程で立ち尽くす女性三人を、コックリが後ろから追いかけてきた。
「やはりそうか。このサマラは、今現世にいるサマラの肉体だ」
「ええ? 現世にいるサマラの肉体!?」
「それ、さっき汚冥界上空にいたサマラ!?」
「そうです」
私たちはサマラを囲んだ。
「何で分かったの?」
「ミサが始まった瞬間、大聖堂の奥に続いていた糸が消えたからね」
「え? 糸が!?」ずっと糸を持っていたアルシャーネさんも気がつかなかったようで「あ、本当です!」
「どういうこと!?」
「うむ」コックリは私の質問に答えずサマラに触れた。でも体は通過して。「ふむ、やはり」
「やはり?」
「このサマラは現世側の入り口である肉体の方だ。触れると聖地の聖霊の力が伝わるようだ」
「「聖地の!?」」
私たちもサマラに触れた。スカッと手がすり抜けるけれど、触れると清廉なミシェリアの力が満ち溢れて!
「本当だ!」
「でも何故ここに!? さっきは上空に」
「つまり、ズレがなくなってきているんです」
「「ズレが!?」」
「恐らくアルシャーネ司祭の温かな霊によって、サマラのダメージや負担が軽くなってきたのでは?」
「私の!」
「うん、そうだよ! きっとそう!」
肉体と魂は糸で繋がっているから、アルシャーネさんの温かな霊力で回復してきてるんだ! ああ、さっきよりも太い糸が! サマラの肉体から新たな糸が出て、大聖堂の祭壇の奥にある通路に伸びてる!
「そしてミサが行われている最中に、サマラの魂をこの肉体に重ねれば、彼女の扉は閉じるハズです!」
「「!!」」
やった! 光明が見えてきたっ! と思ったその時!
ドゴンッ!! オオオオオオオオッッ!!
「「!!」」
大聖堂を揺るがすような地響きの後! 唸り声が!! 大聖堂の入口を見ると! 入口前にある広場に巨大なゴリラのようなシルエットが! はわぁっ、つつ、ついにここまで来た!?
「クソッ!」 コックリは吐き捨てると「ここから二手に分かれるっ! 三人は糸を辿れっ!」
「「ええ!?」」
私は叫んだ! 「なっなんで!? 嫌っ!」
「嫌じゃないっ! このままだと奴らはどこまでも追ってくる! 我らの後を追ってサマラの元まで!」
「そ、そんな! じゃあ私も!」
「司祭を守ってやれ!」
その時、入口に巨大な手が! ああっ、触れたところがピキピキと凍り始めて! ええ!?
「ブルーデモンか!? 氷属性のようだ! さあっ、行ってくれ!」
「行きましょうっ! システィーナさん!」
「で、でもっ!」 わ、私、コックリを援護したい!
「光の精霊だけくれ! 俺を信じろ!」
「~~~~っっ!!」 嫌っ! 嫌っっ!
「シスッ!」
コックリは私の後頭部に手を回して! グイッと引き寄せて! 突然私の唇をっっ!!
「~~~~~~っっっ!!!」 は、激しっっ!! ~~~~~っっ!!
「「っっ!!」」 アルシャーネさんとクラウディーアさんも唖然として!
「~~~~~~っっっ!!!」 ほえぇぇぇっっ!
「ぷはっ! ごちそうさんっ! これで百人力だ! さあっ!」
「ほぁぁ……ふおぉぉ」 ヘロヘロになる私……
「い、行きましょう、システィーナさん!」
「そうです! ここは神殿騎士殿に任せて、一刻も早くサマラの魂を保護して戻りましょう!」
「そう、その方が俺も助かる! 早く現世へ戻ろう!」
「は、はひっ!」私は訳が分からないまま、皆の説得に頷いてしまったの! 「わ、分かったぁ! い、一刻も早く連れ帰る、から、無事で待っててっ!」
「ああ!!」
私はアルシャーネさんとクラウディーアさんに抱えられるように、祭壇裏の通路へ向かって駆け出した!
6/1目指して頑張ります




