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41 汚冥界:修道院周辺部

 

 ■システィーナの視点



 赤黒い不浄な汚冥界の空の下に、圧倒的な唸り声が響く!


      オオオオオオオオオオォォォッッッ!!


 世界を揺るがすような恐ろしい歓喜の唸り声!

 九十九折りの階段を駆け上りながら、アルシャーネさんが泣きながら謝る!


「ゴメンなさい! ゴメンなさい!」

「後です! アルシャーネさん!」

「そう! 今は走ってください!」


 ああアルシャーネさんが涙を……コックリと二人で励まして、九十九折りの階段を上る!

 クラウディーアさんはまだちょっと苦しそうで! 私は肩を貸しながら上ってる! 回復魔法はかけて傷を負った場所は治ったハズだけれど、魔物が体内に入ったショックやおぞましさは! そう簡単には回復できないみたいで!

 と、私は視界の片隅に! 大陸の方を見ると……!! は、はわあああああっ!!

 ぼ、膨大な数の! 膨大な数の……! 羽を持つ何かが……!! あわわわ、大小様々な何かが飛び立って……!! はわわわっっ!! ここ、怖い!怖い!!


「見るなっ! 大丈夫だっ! 現世の岩山は聖地の中の聖地! ミサがあるたびに聖地の力が増す! 生半には近づけないハズだ!」

「は、はい! はいっ!」


 私はそう頷くしかなかった! そう信じたい! そう信じたい!


 と、私たちの上から!バサッバサッと羽ばたき音が!!


      ギャアアアアアッッ!!

      ガアアアアアアアッッ!!


 ひゃあ!? 不浄な空を見上げると、背に羽を持つ何かが! あれは!


「ガーゴイル!」


 筋張った人型の体にコウモリの羽をはやしたガーゴイルが五体! この近くに隠れていたんだ! 大陸の方で飛んでいたのはこのガーゴイル!?


 と、三体のガーゴイルが急降下してきた! うち二体は左上空から揃って、一体は右上空から! きゃあっ私は光の精霊の一つを光弾に変えた!


「シス、右の一体を頼む! 聖魔法、真空波!」


 コックリが左手で手刀を作り横凪に払う! 次の瞬間! 二体で揃って襲ってきたガーゴイルの羽が! 根本から! 目に見えない何かにズバンッと切り取られる!


      ギャアアアアアッッ!!


 羽をなくした二体のガーゴイルはトゲの樹に墜落して! 私は右側の一体に、光弾に変えた精霊を射た!


      ギャアアアッッ!!


 光弾はガーゴイルの目の辺りに当たって! たぶん目の奥を貫いた! そのガーゴイルも墜落する!


「ナイスだシス!」


 は、はい! 残りの二体は警戒するように飛び回って!

 と、ふもとに目をやると、はわああっ!

 四方八方から! 汚泥の廃墟の屋根を跳び越えるように! ケルベロスが! はわわわあ、さらに肌が青黒い感じの! 毛のないゴリラみたいな獣が! 筋肉の塊みたいな類人猿みたいな獣が! バシュッ! バシュッ! っと跳び超えながら! こっちに向かってる!


「なな、何あれ!?」

「考えるなっ! 俺の方が強い!」


 は、はい! 信じる! コックリの方が強い!

 でも一体あれは!? 五メートルくらいある!? 汚冥界って邪悪な魂が堕ちる世界だと聞いたけれど! 邪悪な生命も存在する世界なのかも!?


「よし! 九十九折の階段を抜ける!」


 ああ! 階段が修道院の城壁の中に続いている! トンネル状で上っていく! はわわ、でも城壁内は真っ暗で! こ、怖い!


「クソッ! トンネル内にも蠢いてる!」

「ええ!?」


 トンネル内に光の精霊を飛ばすと! はわわ、光の精霊が照らし出した朧気な光の中に! 壁や天井からおびただしい数の手が伸びて……! まるで影絵! 影絵の手が光の精霊を掴もうとしてる! ひゃあ!


「ど、どうするの!?」

「こうだ! 聖魔法、聖輝光!」


 コックリは胸の前で手を合わせると、聖なる光が! 大きい! ええ!? そのまま両手を前に突き出すと光の球がトンネル内に! わあ、聖なる光がトンネルで弾ける!


 サンッ!


 という涼やかな音がなると、入り口付近上下左右の影絵の手が霧散していく! コックリは二発目を打つ! トンネル中程の影絵が消滅して! 三発目を打つと奥の方まで! 奥は右方向に曲がってるからそこまで綺麗に!


「よし!」


 トンネル内に入ろうとした時、ふもとの方からバキバキバキッ! という音が! ひゃあ、何!? 見ると、はわわっ! 九十九折の階段を突っ切るように、ケルベロスと類人猿のような魔物が! トゲの樹などお構いなしに、それぞれが他方向からまっすぐ登ってくる! ひゃあ、トゲの樹が粉微塵に吹っ飛んで!


「何て突進力! ヤバイ!」


 コックリは肩に担いでいた剣を鞘にしまう! ええ何で!? と思ったとき、トンネルの入り口で! 腰を落として!


「聖剣技! 空断の太刀!」


 コックリは一気に抜刀! 目にも止まらぬ抜刀! 早! 気づいたときには剣が右に引き抜かれて! 次の瞬間!


 ギンッ!!


 と鈍い音が! ひゃあ、斜め後ろから見たら、剣の軌跡の空間が断層のようになって! 何か見え方が変! コックリはまた鞘に剣を納めると皆とともにトンネルに入って、数メートル進んだところで今度は縦一文字にギンッ!! と抜刀した!


 これは真空波の聖魔法と剣を融合した、空間を断裂する聖剣技で! 知らずにここを通ると、空間の断絶に巻き込まれて切断されるんだって!


「効果時間はだいたい十分だ! いくつか作る! 先に進んでくれ!」

「はい!」


 私はクラウディーアさんに肩を貸しながらトンネル内を進む。やはり現世と同じで、トンネル内も階段になっていて。ここを上っていくと大聖堂の建屋を中心にグルッと回る巨大な円を描きながら上る階段になって、修道院に到着する。


「ふぅっふぅっ」


 階段を駆け上がって来たから私はもう足がパンパンで。ああ、アルシャーネさんも肩で息を。クラウディーアさんは青ざめた表情で……私たち、大丈夫かな!? ううん! 大丈夫! 大丈夫なハズだ!


 トンネル階段は右に曲がって……と、その先にはトンネルの出口が見えるけれども、ああっ、また影絵の手が! 天井や壁、床からウネウネと! 私はアルシャーネさんを見た。


「アルシャーネさん! お願いします!」

「え!?」

「聖輝光を!」

 アルシャーネさんは頭を振った。「わ、私! 出来ません!」

「なぜ!?」

「わ、私がこの状況を作ってしまって……! 私の失敗で!」

「じゃあなおさらです!」

「え!?」

「このまま失敗したまま終わらせたら、本当の失敗です! 後で挽回すれば、一時的な仮の失敗です!」

「!!」

「さあ!」

「は、はい!」


 アルシャーネさんは頬の涙を拭くと胸の前で合掌した。黄金色の光が輝く!


「聖輝光!」


 両手を前に突き出すと、光の球が! トンネル内に!


 サンッ!!


 一気に全ての影絵の手が消滅する!


「さすが! アルシャーネさん!」

「はい!」


 アルシャーネさんは決意に満ちた目で頷いた! と、下からコックリが上がってきた!


「よし! 進みましょう!」


 その時、下から獣の叫び声が! き、来た! 早く上に行かなければ!




短く区切ると早く書けそうです

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