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「女子少年院後の恭子R」女子少年院を出所したロリ体型のレズビアン恭子、私は絶対に負けない!更生?ふざけんな!  作者: ⚓フランク ✥ ロイド⚓


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第19話 真理子の懸念

《《憑依》》


 一通り恭子の話を聞き終えた真理子は、しばらく床の黒い塊を見つめていた。それはもう親指の先ほどの大きさになっていた。恭子が語るたびに毒が抜けていったのだ。しかし真理子の表情は晴れない。


 真理子はゆっくりと悟の方へ向き直った。


「悟、整理するわ。私が九鬼綾子から恭子に取り憑いた悪の想念は除霊された。それはいい。でも、問題はここから先よ」

「問題?」


「恭子は、美久、順子、楓、節子、紗栄子、佳子を綾子に『アイツよ』と見せに行かなければならない。それが綾子との約束でしょう。だけど、現在の恭子が綾子に会うと……綾子は恭子に会った瞬間に『想念が抜かれている』と気づくでしょうね。同時に『誰がやった?』と察知する。悪の想念が除霊されてしまったことが、すぐに露見するわ」


 悟は眉をひそめた。「それは……まずいな」


「まずいどころじゃないわよ。綾子が怒り狂って恭子に想念を再び吹き込むか、あるいは恭子を廃棄するかもしれない。悟、どうするの?どうしたいの?」


 悟は迷わず答えた。「ぼくは恭子を救いたいんだ」


 真理子は軽く目を細めた。「理念としては結構なことだわ。左派のイデオロギーみたいにね。理念はある、けど具体策がないわね」

「じゃあ、真理子は具体策があるのか?」


 真理子はしばらく黙った。視線が宙に漂い、何かを考えている。


「このまま放置すればいいじゃない?ズベ公一人が破滅するだけよ」

「真理子!」悟がと声を荒げると、真理子は静かに首を振った。


「……いや、そうじゃないわね。私が言いたいのはそういうことじゃない。いずれ、九鬼綾子は、恭子がいなくても、他の人間に取り憑くでしょうね。恭子一人を見捨てても、綾子は止まらない」

「だから、キミはなにができるんだ?」


 真理子はため息をついた。珍しく、迷っているような間があった。

「そうよねえ……私は試したことがないけど、曾祖母から教わった術はあるわ。私の想念、生霊みたいなものを恭子に取り憑かせるの。それで、私が恭子をコントロールして、九鬼綾子に会うというのはどうかしら?」

「キミはそんなことができるのか?」

「やってみないとわからないけど、まったくの可能性ゼロじゃないわ」


 二人の会話を聞いていた恭子は、何のことかほとんど理解できていなかった。自分の身体の話をしているらしいことだけはわかる。ぼんやりとした表情で、真理子と悟を交互に見ていた。


 真理子が恭子に向き直り、静かに言った。


「恭子、あなたは綾子にもう一度会わなければならない。でも、あなたの中の黒い想念は私が抜いた。綾子はすぐ気づく。だから私があなたに憑依して、綾子の前では『まだ想念が残っている恭子』を演じる。あなたはただの器になりなさい」

「……器?」


 恭子の声が揺れた。真理子は答えなかった。


 悟が立ち上がった。「真理子、それは危険じゃないのか?恭子の身体に……」


「綾子が六人に手を出す前に、私が直接あの女の正体を見極める必要がある。これが最善よ」真理子は冷たく言い切った。「悟、止めないで」


 悟は口を開きかけて、閉じた。


 真理子は静かに立ち上がると、恭子の前に進んだ。そして、ゆっくりと膝を折り、恭子の目の前に跪くようにしてにじり寄った。


「え……真理子、何を……」


 恭子が身じろぎするより先に、真理子の左腕が恭子の背中に回り、そのまま自分の方へ引き寄せた。恭子の身体が弓なりに反る。真理子は恭子にのしかかるようにして、右手で恭子の顎を掴み、仰向かせた。


「ちょ、ちょっと……!」


 真理子が恭子の口をわずかに開けさせた。そして、ゆっくりと自分の口を恭子の口の真上に持っていく。悟の目には、真理子の唇の端から、紫色をした粘りの強い唾液が糸を引いているのが見えた。


「な、何だ、あれは……」


 紫の唾液が、一滴、二滴、恭子の開いた口の中へ垂れていく。恭子の目が恐怖で見開かれた。口を閉じようとするが、真理子の右手が顎をしっかりと掴んで離さない。


「飲みなさい」


 真理子の声は低く、有無を言わせなかった。恭子の喉が、小さく動いた。


 直後、恭子の身体が激しく痙攣した。背中を支えていた真理子の左腕に、ぐったりと体重が預けられる。四肢から力が抜けて、恭子は真理子の腕の中で弛緩した。


「恭子!」


 悟が飛びかかるように真理子の手から恭子を引き離し、その身体を抱きかかえた。恭子の頬に触れる。冷たくはない。呼吸もある。


「恭子、聞こえるか?恭子!」


 しばらくの沈黙の後、恭子の身体がぶるっと震えた。ゆっくりと目が開く。


 悟を見上げた恭子の顔に、見たことのない表情が浮かんだ。どこか遠くを見るような、冷静な、落ち着いた目だった。


「悟」恭子の声音だった。しかし、声の奥に別の色がある。「別れた元カノを抱きしめて、なにしてるの?」


 悟は固まった。「……え」


「うまくいったわ。恭子に乗り移れたわ」恭子の口が、そう言った。


 悟はゆっくりと振り返った。部屋の反対側に、真理子の身体がまだそこに立っている。その唇が、かすかに動いた。


「生霊をうつしただけだから、私はこっちの本体にもいるのよ、悟」


 悟は恭子を抱いたまま、真理子の身体を見て、恭子の顔を見て、また真理子の身体を見た。


 どちらにも、真理子がいた。悟の手が、知らずかすかに震えていた。


《《退散》》


 恭子は……いや、真理子の生霊に憑依された恭子の身体は、除霊前の精気のない様子に戻っていた。だらしなく脚を投げ出してソファに座っていたが、急にのっそりと立ち上がると、何も言わずにマンションの奥へと消えていった。


 悟は呆然とその後ろ姿を見送った。「こ、今度はなにが起こっているんだ?真理子?」


 真理子の身体の方が、涼しい顔で答えた。「何って、私たちはこのマンションから退散するのよ。いい加減、夜も更けてきたでしょう?恭子のママが帰ってきて、こんな光景を見たらなんて思うかしら?警察に通報されるかもしれないでしょう?だから、退散よ」


「恭子はどうするんだ?」

「だって、今は私の生霊が憑いている器でしょう?私の生霊が対処するわよ。それに、恭子の話じゃあ、彼女のママは彼女に無関心でしょ?だから、自分の部屋に籠もらせたのよ」

「それで?」

「明日の朝、九鬼綾子に電話させて、会う段取りを取る。それで、恭子は綾子に明日会うの」

「なるほど……ところで、恭子はどうなるんだ?このまま生霊が……」


 真理子はわずかに眉を顰めた。「イヤよ、こんなズベ公の身体に憑依したままなんて。綾子とのことが終われば、生霊は抜くわ。そうしたら、あなたの大事な大事な恭子が戻ってくるわよ。元のズベ公がね」


 悟は何も言えなかった。


《《真理子の誘惑》》


 恭子の北千住のマンションを出た二人は、エントランスを抜けて夜の街に出た。十一月の夜気が頬に冷たい。駅前の灯りが、遠くに滲んで見えた。


「キミはこれからどうするんだ?」と悟は真理子に聞いた。

「どうするって……あなた、明日は平日だけど、恭子が綾子と会う場面を見たくないの?」

「いや……あ~、有給を取るよ」

「そぉ」真理子はくすりと笑った。「じゃあ、今晩は、私と一緒じゃなきゃダメね」


 悟は足を止めた。「真理子と?」


「どこか、シティーホテルを予約して。昔みたいにお泊りしましょう。それで……」真理子は悟の方に顔を向けて、かすかに微笑んだ。「私を抱いてもいいことよ。さっき、恭子と私を抱きしめたみたいに」

「真理子……」

「生霊を放つのはエネルギーがいるのよ。悟からエネルギーを貰わないと、もたないわ」

「キミは元カノだよ……」


 真理子は少し首を傾けて、悟を見上げた。「元カノを抱いちゃいけないという日本国憲法の項目でもあるのかしら?」悟は返す言葉を持たなかった。


 北千住駅近くのシティーホテルにチェックインした。


 エレベーターの中で、真理子は何も言わなかった。ただ、前を向いて立っていた。その横顔が、廊下の蛍光灯の下で、妙に白く見えた。部屋に入ると、真理子はコートを脱いでクローゼットに掛け、振り返った。


「悟」


 低い声だった。それだけで、悟の背筋に何かが走った。


 真理子はゆっくりと悟に近づいた。長い指が悟の胸元のボタンに触れる。外すわけでもなく、ただ指先でそこに触れて、上を見上げた。


「久しぶりね」


 それだけだった。その一言が、悟の理性の最後の一枚を剥がした。悟は真理子の肩を掴み、そのままベッドへ押し倒した。


 真理子は抵抗しなかった。ただ、ゆっくりと目を閉じた。その唇が、かすかに弧を描いていた。


 真理子は悟を翻弄した。


 昔の記憶を使うように、悟の急くところをわざと焦らし、引き戻し、また引き寄せた。悟が覆いかぶさると、真理子は細い腕で悟の首に絡みつき、耳元に唇を寄せた。吐息が悟の耳に触れるだけで、悟の全身が反応した。


「まだ覚えてる?」と真理子が囁いた。


 悟は答えられなかった。答える代わりに、真理子の首筋に顔を埋めた。


 真理子の長い黒髪がシーツに広がっていた。白い肌が、室内のわずかな灯りの下で淡く光っている。悟がその肌に触れるたびに、真理子は静かに目を伏せた。喘ぐわけではない。ただ、眉根がわずかに寄り、唇が薄く開く。その静けさが、悟にはかえって堪らなかった。


 真理子は激しさよりも深さで悟を縛った。声を荒げることなく、乱れることなく、しかし確実に悟を手放さない。悟が求めれば応え、引けば引き寄せ、それでいて主導権は常に真理子の側にあった。


「エネルギーを、ちょうだい」と真理子が低く言った。


 悟はもう、何も考えていなかった。


 長い夜だった。窓の外で、北千住の街の灯りが静かに瞬いていた。

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