第18話 ふふ、最高!みんな地獄よ!
《《仮出所》》
「それで、数日前に、やっと仮出所よ!クソォ、ようやくこの地獄から出られたわ!仮出所よ、仮出所!と思ったぜ。AK女子学園のあのクソみたいな日々が終わった。七ヶ月で出られたの、最短級だぜ。ぶりっ子して反省のフリ、担当官に「もう悪いことしません」って涙目で言ったら、審査通ったわよ。ふふ、私の演技力、完璧でしょ?あのデブボスやヤセにレズ強要されて弄ばれた屈辱、毎晩カワイコチャンをいじめて支配した興奮……全部、胸にしまって、出てきたの!」
悟は力なく椅子に沈み込んでいた。「演技で……反省を演じて、出てきたのか……」呟くように言う。言葉には怒りもなかった。ただ、深い疲弊だけが滲んでいた。
「門を出て、一人で家に帰った。心臓がバクバクしたわ。自由の空気、美味しすぎじゃん!院内じゃスマホを取り上げられて、プライバシーゼロ。身体検査の全裸回転、クスコの痛み、尻開かされての視線……思い出すだけで殺意湧く。あの担当官ども、女同士なのに私の貧乳嘲笑った視線、絶対許さない!出所したら、みんな黒く染めてやるわよ!
北千住のマンションのこの部屋にに戻ったわ。ママのナイトクラブの稼ぎで買った高級マンションよ。ママはシングルマザーで、銀座のクラブのママやってる。美人でスタイル抜群、客のオジサンたちを転がして大儲け。私のロリ体とは正反対。悔しいけど、ママの血を引いてるんだから、可愛い顔は認めてやるわ」
真理子が口を開いた。「お母さんは知っているの?あなたが少年院から出てきたことを」
恭子は一瞬だけ口ごもった。「……知ってるわよ。でも、興味ないんだよ、あの人は。自分の店と客のことしか頭にない」
真理子と悟の間に、短い沈黙が落ちた。悟が小さく目を閉じる。
「部屋に戻って、まずスマホの電源オン!溜まってた通知、LINE。悟からの連絡は無視したわ。読みもしなかった。よくもまあ、飽きもせずに半年も私に電話したり、SMSしたりしたもんだわ……フフフ、私が忘れられなかったのかしらね?」
悟は苦く笑った。「……読んでいなかったのか」感情のない、静かな声だった。真理子は悟をちらりと見て、「あなた、半年間連絡し続けていたの?」と尋ねた。
「……ああ」
真理子は何も言わなかった。ただ小さくため息をつき、視線を恭子に戻した。
「それで、ダークウェブの掲示板を見た……復讐の炎が燃え上がったわ。美久たち、あの暴行の恨み、絶対返してやる!順子の良い子への裏切りも、紗栄子の笑顔も……クソォ、許せない!院内で味わった屈辱をやつらに全部倍返ししてやる!と思った」
「スマホで女子少年院の真弓に連絡した。院内で知った可愛い子。純粋で、巻き込みやすいわ。『恭子ちゃん、出所したの?会いたい!』って即返事。ふふ、来なさい、真弓。あなたを黒く染めて、私の玩具にしてあげる、なんてさ」
「出所した日に……もう、次の子を、狙っていたのか」悟の顔が引き攣った。
「悟、この子が出所してから今日まで、一度でも立ち止まった瞬間があったかしら。ない。全部、憎しみと欲望だけで動いている。黒い想念はその土台の上に乗ったのよ。だから、根が深かったの」真理子は冷たく、しかし静かに言った。
《《呪い代行の掲示板を見た》》
「この家でベッドに転がって天井見上げたら、涙が出そうになった。自由よ、自由!あのAK女子学園の屈辱、身体検査の全裸回転、クスコの痛み、レズ強要の夜……全部、胸にしまったわ。美久たちを許さない!クソッタレども、絶対に黒く染めてやる!と誓った。
ダークウェブの掲示板開いたの。オーちゃんねるの闇スレ、呪い代行・呪術代行……ふふ、あったわよ!『復讐したい相手を呪います』『病気、事故、死……何でも』なんて書き込みが溢れていた。読んでるだけで、体が熱くなった。美久の顔、紗栄子の笑い声、楓や節子、佳子の蹴り……あの工場で味わった痛み……全部、返してやる!。
クソォ、悔しい!私が負けたなんて、認めないわよ!あいつら、陽の当たる場所でキラキラ生きてるくせに、私を地獄に落とした。私のロリ体、チビで貧乳のこの体を嘲笑って……許せない!呪いよ、呪い!病気で苦しめ、事故で死ね、大切なものを失え……全部、黒く染めてやるわ!」
《《真弓》》
「出所して保護司やコンビニとの面接が終わってすぐ、連絡したわ。あの子、可愛いんだよ。純粋で、巻き込みやすいタイプ。院内で思い浮かべてたのよ。ラブホに連れて行ったわ。クソ、可愛いわね。あの大きな瞳、柔らかい肌……レズの私が、興奮しちゃうわよ。抱きしめて、キスして……真弓、最初は驚いてたけど、すぐに従った。純粋だから、抵抗なんてしないのよ」
悟は眉をひそめた。「保護司との面接が終わってすぐ……その日のうちに?」
「『恭子ちゃん、好き……』って囁く真弓。ふふ、私の舌が絡むと、体が震えて……可愛いわ。服を脱がせて、体を弄ってやった。真弓の胸は恭子の貧乳よりずっと豊かで、羨ましいけど……それがいいのよ。お前を私の玩具にして、支配する悦び!院内でボスになってカワイコチャンいじめた時みたいに、真弓をトロトロに溶かしてやったわ」
悟は口を開きかけて、また閉じた。何を言っても届かない、という諦めに似た感覚が、じわりと胸に広がっていた。
「院内で覚えた支配の快楽を、出所した日に再現した。この子、更生プログラムを受けながら、ずっと次の獲物のことを考えていたのね」真理子が低く言った。
「クスリ、勧めたのよ。『これ、気持ちいいよ。一緒にやろう』って。真弓は最初は躊躇してたけど、私のキスで拒めなくなって……ヤク中よ。依存させて、オジサンたちに売春させる。金になるわよ!真弓の体は男たちに人気になるだろうし、私の取り分が増える。ふふ、復讐資金よ。美久たちを呪うための金!」
「真弓という子は……今、どこにいるんだ」悟の顔から表情が消えた。静かな、しかし底の冷たい声だった。
「少年院で学んだことを、出所初日から忠実に実行した。何一つ変わっていない。いいえ、むしろ洗練されている。恐ろしい子ね」真理子は腕を組み、恭子を見下ろした。
「真弓を黒く染めてる時、興奮したわ。純粋だった目が、クスリで虚ろになって、私にしがみついてくる。『恭子ちゃん、もっと……』って。レズの私が、真弓を私のものにした悦び!チビで貧乳の私でも、真弓みたいな可愛い子を支配できるんだから!」
悟は両手を膝の上で固く握り締めた。「恭子……キミは、その子の目が虚ろになっていくのを見て、嬉しかったのか……」声が震えていた。怒りではなく、哀しみで。
真理子は何も言わなかった。ただ静かに目を閉じて、また開いた。「悟、この子の話の中で、真弓という子は最初から最後まで『玩具』よ。人間として見ていない。……これ以上聞くのが辛いなら、席を外してもいいわよ」
「でも、心の奥で、まだ黒いものが渦巻いたわ。美久たちへの恨み……許さない。みんな黒く染めてやる」
悟は席を外さなかった。ただ、恭子から目を逸らすように、俯いたまま動かなかった。
《《九鬼綾子》》
「ダークウェブの掲示板で『呪い代行』のスレが目についたの。レスした。『九鬼綾子』って名前の女から返事来て、渋谷のハチ公で会うことに。心臓バクバクよ。ふふ、これで美久たち、地獄味わうわ!」
悟が顔を上げた。「呪い代行……本気で、そんなものを頼んだのか」
真理子は無言だった。その目だけが、僅かに鋭くなった。
「ハチ公前で待ってたら、ビジネススーツの長身の美人が近づいてきた。170センチくらい、ハイヒールでさらにデカい。トップモデルみたいな顔、完璧なプロポーション……クソ、悔しい!私なんか153センチのチビ貧乳ロリなのに、嫉妬で頭おかしくなりそう。でも、声かけてきた。『鈴木さん?』って。偽名使ったのに本名で呼ばれるの、ゾッとしたわ」
悟が眉をひそめる。「偽名を使ったのに本名で……?」
真理子の目が細くなった。「それが九鬼綾子……。続けなさい、恭子」
「公園に連れてかれて話した。支払い能力確認されて、スマホの口座を見せた。事務所はマンションの2階、科学的な部屋で、水晶球とかないのガッカリしたけど……彼女の目を見て手を握られた瞬間、全部読まれたわ。私の過去、クスリ、売春、少年院……ウソも本当も。『悪い子ね』って笑われて、ゾクゾクした。悔しいのに、魅力的だったわ」
悟が言った。「全部読まれた……それでも、逃げなかったのか」恭子は少し黙ってから、「逃げられなかったのよ」と呟いた。
真理子の表情がわずかに険しくなった。「九鬼綾子……その女、ただの詐欺師じゃないわね。あなたが感じた『魅力』は、こちら側に引き込むための力よ。恭子、あなたは最初から狙われていた」
「呪いの話、病気、事故、大切な人を失わせる……私の深い怨念で強い呪いできるって。で、成功報酬で一人20万、前金7万。安いと思ったわ!お願いした瞬間、抱きしめられて……キスされて、体弄られて……意識飛んだの。綾子の舌が熱くて執拗で……レズの私なのに、体が反応しちゃって、怖いのに気持ちいい!クソ、この女に支配されてる……でも、復讐のためなら、何でもいいわ!」
悟は立ち上がった。「恭子、その女に……意識を失うまで何かされたんだぞ!それがわかるか?キミは利用されたんだ!」
恭子は悟を見上げて、少し目を細めた。「わかってるわよ。でも、美久たちを呪えるなら……」
真理子が悟の腕に手を置いて、静かに制した。「悟、座って。……恭子、続けなさい」その声は穏やかだったが、底に有無を言わせない力があった。
「目覚めたら、頭の中に黒いものが満ちてた。綾子が私を下級巫女にするって、真弓たちも黒く染めて……ふふ、最高!美久たち、みんな地獄よ!綾子の顔は最後に見た時、黒く歪んでたわ……」
恭子の声が、最後だけかすかに揺れた。
部屋に沈黙が落ちた。
悟はゆっくりと座り直し、両手を顔に当てた。「恭子……キミは、全部、自分でそこに向かって歩いていったのか。誰かに止めてもらいたかったんじゃないのか……」声が詰まった。
真理子は床の黒い塊をじっと見つめた。それはもう、さっきより明らかに小さくなっていた。語ることで、少しずつ毒が抜けていっている。しかしその表情は、安堵とはほど遠かった。
「九鬼綾子……その女が、この子に黒い想念を吹き込んだ元凶ね」と真理子は静かに、しかし確信を持った声で言った。「あなたの憎しみと怨念を餌に、あなたを器にした。……恭子、あなたは自分から、その女の罠に飛び込んだのよ」
恭子は何も言わなかった。膝の上で手を握り締め、唇を固く結んでいた。その目には、初めて恐怖に似た色が滲んでいた。




