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【小説1巻発売中】いたりあ食堂ピコピコ ~レトロゲーに転移した俺は、平和に料理を作りたい~  作者: 明桜ちけ
第三章 どんな夢を信じても

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080 食料と下水道

 鉄板の上に並べられた、真っ白な七つのカルツォーネ。

 具材を入れすぎて、いつもよりぷっくりとした半月型になってしまった。

 それをオーブンを入れ、タイマーをかける。


「あとは焼きあがるまでに、サラダとマチュの盛り付けだな」


 調理台の上をアルコール消毒して、冷蔵庫からサラダとマチュドニアの入ったボウルを取り出す。

 マチュドニアはリキュールの香りも楽しむ、大人のフルーツポンチ――なのだが、研究中に食べる用なので、今回はアルコールを飛ばした白ワインで作ってある。

 これはこれで酸味と旨味が凝縮されていて、仕事の後に食べると美味しいんだよな。


「休日なのに、そんな凝ったもの作って……」

「いやぁ、小分けのカップ見てたら可愛くて、つい」


 呆れ顔のトルトに返事をしながら、俺は盛り付け用のプラスチックカップを並べていく。

 珍しくサラダや果物の注文が入ったので、通販スキル『100円ショップ』でプラスチック容器を買ったのだが――縦長のサラダカップや製菓用の可愛い形のカップを見かけたら、可愛くて色々買ってしまったのだ。

 そして料理もまた、器に合わせて進化するもの。

 予定していたよりも色んな種類のフルーツを使ったり、型で花形に抜いたり――いつもより手間をかけてしまった。

 整然と並べられた透明な容器に盛り付けると、鮮やかさが際立って更に美味しそう。


「うんうん、こうやってたくさん盛り付けると、オシャレでお店みたいだなぁ!」

「いや、ピコピコはお店でしょうが!」


≪カランカラーン≫


 トルトのツッコミが入ったところで、ドアベルが鳴りアーネストが店に入ってきた。

 いつもの風呂帰りの服装ではなく、魔法使いらしいローブ姿をしている。


「おはよう、アーネスト」

「ん……おはよう。準備はできてるの?」

「ああ、サラダと果物はできてるよ。カウンターに並べていくから、カバンにしまってくれ」


 俺はサラダとマチュドニアのカップに蓋をして、どんどんカウンターの台に並べていく。

 アーネストも言われた通りに、自身のマジックバックへとカップを収納する。


≪ピピピッ ピピピッ ピピピッ≫


「お、カルツォーネも焼きあがったぞ!」


 

 鍋敷き代わりの分厚い布巾を調理台に並べ、その上にオーブンから取り出した鉄板を置く。

 ぷっくりとしていた生地はさらに膨らみ、焼き色も相まって満月のような焼き上がりなのはご愛敬。

 サービス満点なカルツォーネを一つずつオイルペーパーで包み、カウンターの台に並べる。


「はいはい。料理をしまったら、ちゃんとお会計してよね」

「わかってる」

「これで終わりだな……じゃあ、俺はちょっと出かける準備してくる!」


 調理台を拭き上げ鉄板を食洗器にかけ、バックヤードへ向かう。

 まずは扉で戻ってくる場所に、ゴミ袋を広げてセットする。


「この辺は、もう捨ててもいいかな」


 下水道で汚れたり臭いが付いても、最悪捨てても良いボロい服と靴に着替えた。

 そして100円のショルダーバックを肩からかけ、念の為防水パックに詰めたスマホを入れる。


「最近は、こんなものまで100円で売ってるんだな。作りもわりとしっかりしててスゴい……」


 俺とトルトの二人分用意したのは、雨カッパと靴カバー。

 道中はならず者と鉢合わせる危険性もあるらしく、トルトには護衛として同行をお願いした。

 アーネストはというと、壁画の説明はするが身の安全まで責任持たないとのこと。

 なんとも彼らしい言い分だ。


「準備はこんなものか……二人とも、お待たせ!」


 店の入り口に向かうと、絶妙に距離をとって待っているトルトとアーネスト。

 この二人、本当にそりが合わないんだな。


「それじゃ行こうか。まずは地下への入口、魔導学園の南門へ向かおう」

「はぁ~……下水道かぁ……」

「付き合わせて悪いな、トルト」

「まぁ、店長さんが行くって言うならダンジョン研究のためでもあるし」


 しょぼしょぼとした表情のトルトを連れ立って、俺たちは魔導学園へと向かった。

 店から割と近い学園の南門に着くと、アーネストは門の脇にある植え込みに入って行く。

 植え込みの裏の石畳の地面には、不自然に置かれた大きな木の板。

 アーネストが板をどかすと、地下へ続く階段が現れた。


「こんなところから、降りれるんだな」

「地下は入り組んでるから、はぐれないでくれよ。探すのが手間だ」

「わかった」


 用意しておいたカッパと靴カバーをササッと身に着け、アーネストに続いて地下へと降りる。

 地下は照明も無く真っ暗で、アーネストはカバンからランタンを取り出した。

 俺もスマホを取り出し、ライトモードにして後に続く。


「うぅ……こんなところ通って研究に行くなんて信じられないよ……」

「…………」


 真っ暗な地下を、二つのライトを頼りに進む。

 すぐ横を流れていく汚水に、通路を反響して響く不気味な音。

 実際に下水道を歩くというのは、かなりキツイ。

 下水の臭さはすぐに鼻がマヒして気にならなくなったが、重苦しい湿気が体力を削っていく。

 暗闇を三十分ほど歩き続けた頃には、だいぶ体がしんどくなっていた。


「けっこう距離があるんだな」

「……壁画は城の近くにあるんだ。さすがに、城から地下に入れなくてね」

「なるほど」


 そういえば壁画のある広間は、城の裏庭の地下入口からが一番近かったな。

 確か主人公が王国編に進んだ場合にのみ、通れるルートだった気がする。

 ぼんやりゲームの記憶と辿っていると、前を歩いていたアーネストが立ち止まった。


「ここだ。少し待っててくれ」


 アーネストの視線の先には、少しかがまないと通れなさそうな小さな横穴が続いている。

 横穴の前に立ち止まったアーネストは、カバンの中から二本の金属棒を取り出す。

 そして穴に向かって、三回打ち鳴らした。

 かなり大きな金属音が響き渡り、後ろに立つ俺ですら耳がキンキンする。

 同じく不快だったのか、アーネストに食って掛かるトルト。


「な、なにやってるのさ!? アーネスト」

「……ネズミが巣くってるから、音で追っ払ってるんだ」

「もー!! サイアクッ!!」


 トルトの叫びと共に、俺たちは壁画のある広間に入っていった。

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◇◆◇書籍情報◇◆◇


いたりあ食堂ピコピコ ~レトロゲーに転移した俺は、平和に料理を作りたい~1
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